夜明けから夜まで 第七十二話
わたしは、それに頷き応える。
「授業を受けたくて来たわけでは、ないの」
無感動であったアナスタシアの瞳に、輝きが灯った。
「どういうことかしら」
わたしは、どう話せばいいのかを考え少し戸惑う。
けれど結局わたしはあるがままを、話すことにした。
わたしは、少し深呼吸をすると話をきりだす。
「前に、わたしの魔法について話したことがあったけれど、おぼえている?」
アナスタシアは、頷くと鼻で笑った。
僅かに掻き立てられた彼女の興味は、一瞬にして失われたようだ。
わたしはそんなことにはお構い無く、話をはじめる。
夢で見た物語を語り出すと、思ったより伝えにくいことに気がついた。
けれどわたしは、シックスフィンガーがキエフの砦に現れ砦のならず者たちと戦うところから夢に見たとおりあるがままに話していく。
空から海に落ちていった銀色の塔、起き上がり襲いかかってくる死体たち、そんな話をしながらあまりの荒唐無稽さに自分でも苦笑しそうになった。
アナスタシアはきっと聞き流して終わるのだろうと思いながら、話を進める。
けれど、アナスタシアの反応は全く予想外であった。
はじめのうちは醒めた目でわたしを見ながら薄笑いをして聞いていたのだが、戸惑うような目付きなる。
やがて、真面目にわたしを疑っているような険悪な表情になってきた。
わたしはそんなことに気をまわす余裕もなく、夢の最後となる部分、世界が終わることと助け手を探さねばならないところまで語り尽くす。
アナスタシアは、とても長いため息をつく。
そして、理解できないようなことを、口にする。
「一体どこで誰に、その話を聞いたの?」
わたしは、きょとんとした顔でアナスタシアを見る。
アナスタシアは、もう一度長いため息をつくとわたしに小型の情報端末をさしだした。
わたしは手のひらに収まるサイズの情報端末を受け取り、そこに表示されたニュースを読む。
わたしは驚愕し、息をのんだ。
そこには、こんなニュースが書かれている。
黒海の西岸近くに隕石が落ち、地震と津波がおこったということ。
そして、現地では隕石の落ちたあたりに銀色の塔を思わせる建造物が出現したことや、死んだひとびとが蘇って歩き回っている等混乱した情報が流れているらしいこと。
ニュースは、そんな突拍子もない内容だ。
わたしは、ニュースが配信された時間を確認する。
それは10分ほど前、わたしがアナスタシアに話をはじめるほんの1分ほど前のことだと思う。
「これの話を聞くなんて、無理よ」
わたしは蒼ざめた顔で、アナスタシアに言った。




