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星よりきたりしもの  作者: ヒルナギ


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夜から夜明けまで 第五十六話

その時、幻想的で美しい光景が広がったとも言える。

無数の蒼い輝きが、薄暗い広間全体に浮かびあがった。

蒼ざめた宇宙が、その場所に降りてきたようである。

凍てついた星の輝きを持つ無数の光は、魔道によって造られたものであるとブラッドローズには判った。

次元口と、呼ばれるものである。

魔道としては、初歩的なものであると言ってもいいだろう。

けれど、その威力は致命的なものである。

その妖しい夢に現れるような蒼ざめた輝きの向こうには、間違い無く暗い銃口があるはずだ。

そして銃の引き金には、死体たちが指をかけているに違いない。

発射された銃弾は異なる次元の空間を越え、この広間に広がる蒼い輝きから放たれる。

広間全体が、蒼い輝きで包囲されているので、間違い無くブラッドローズたちは銃弾の餌食となるだろう。

部屋に転がるおんな子供の死体は、瞳をブラッドローズたちに向けている。

その瞳は、彼女たちの位置情報を把握して銃を持つ死体、おそらくおとこたちの死体へと送っているのだ。

ミハイルたち兵は、立て続けに雷管銃を撃って死体の目を潰していくが入り込んでくる死体のほうが多い。

アナスタシアは闇の中で真っ直ぐに立つと、天に向かって弓を掲げる。

凛とした眼差しを前に向け、高らかに叫ぶ。

「アーシュラ、女神アーシュラ、我に創世の和音を与えたまえ」

蒼い輝きは、さらに力を増す。

弓は耳には聞こえぬ音を放ち始め、水のように広間へと満ちていく。

その圧力は、ブラッドローズの黒い肌をちりちりと焼き焦がしていくようだ。

アナスタシアは、戦士の瞳から光を放ちもう一度叫ぶ。

「我に音を!」

全てのことは一瞬の内、同時に起こった。

蒼い輝きから、音もなく銃弾が放たれる。

旋風が巻き起こり、広間全体を包む。

ブラッドローズたち、そして砦の兵たちは空気のドームの中に包まれる。

兵は、雷管銃と連射砲を撃つことを一時止めた。

真っ白な風の音が耳を押し潰し、重たい静寂が広間に降りてくる。

物理的な固まりとなった風は、蒼い輝きから放たれた銃弾の進路を変えた。

銃弾は空気のドームには入り込めず、ぞの表面を滑ってゆく。

そして、回転して外側に向かって放たれる。

無数の銃弾が、空気のドームの外へと撒き散らされた。

広間に残っていた死体たちは、無数の銃弾を受け身体を真紅の柱に変える。

血に血が重ねられ、肉片に肉片が沈んでゆく。

巻き起こった旋風が天井へと消えたあと、蒼い輝きは消え失せ瞳を放つ死体も血の中へ沈んでいた。

薄闇の中に、軽くなった静寂が訪れる。

アナスタシアは、膝をついた。

口元を押さえた手の隙間から、呻き声と赤い血がもれる。

闇の中で花弁が落ちるように、アナスタシアの足元へ血が零れた。

「アナスタシア!」

ブラッドローズは、叫びアナスタシアに駆け寄る。

アナスタシアは、明らかに力を使い過ぎていた。

おそらく通常であれば十年はかけて蓄積する音を、一夜にも満たぬ時間で放っている。

それは、アナスタシアの身体を蝕む行為であった。


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