夜から夜明けまで 第三十九話
「陽が暮れて、暫くしてからのことだ。ふたりのおとこが、この砦に来た」
デリダは、皮肉な笑みを浮かべたまま先をうながす。
「おれの兵がそいつらに、七人殺された」
「ほう」
デリダの口許から皮肉な笑みは消えなかったが、少し興味を持ったようだ。
黒く大きな瞳は、強い光を放つ。
「失態だな。そいつらは、何者だ」
「知らん。ただ、アルケミアの魔道師と名のっていたが」
デリダの表情が、困惑したように曇る。
ミハイルは、舌打ちした。
「やつらが誰だろうが、どうでもいい。これからおれが、殺すのだからな」
ミシェル・デリダが、片方の眉だけをあげる。
ミハイルは、強い口調で宣言した。
「これから予備部隊も含めた全ての兵を、召集する。いいな」
デリダは、無表情になり首を振った。
「やめておけ」
ミハイルは、目を剥く。
ミシェル・デリダとはずっと共に戦場で戦ってきた中だが、ミハイルの決めたことに異を唱えたのは、はじめてである。
「おい」
ミハイルは、怒気を孕んだ声で言った。
「あんたはデリダだから知らんのかもしれんが、おれたちの稼業はなめられた終わりだ。落とし前はつける」
デリダは、無表情のまま静かに言った。
「そいつらは、アルケミアの魔道師を名乗ったのだろう?」
「それが」
デリダは、手をあげてミハイルを遮る。
ミハイルは、デリダの瞳に畏怖のような色を認め、口を閉ざす。
ミシェル・デリダは、全てのものを嘲笑するようなおとこであるというのに、今は畏れを見せている。
「おまえは、ブルガリーア・エグザイルだから知らないのかもしれないが」
ミハイルはその言葉に反応し、デリダを睨み付けたがデリダは無表情のまま言葉を重ねる。
「オーラ首都水晶宮の西方にある荒野、そこに何があるかくらいは知ってるだろう」
ミハイルは、戸惑った目でデリダを見る。
デリダはそれを無視して、言葉を続けた。
「その荒野には機動甲冑一万体が、放置され朽ち果てている。その機動甲冑を操っていたのは一万のオーラ兵だが、そいつらは魔道の力で生命力を根こそぎ奪われこの次元界から消滅させられた」
ミハイルは、少し苛立った顔になるがデリダは無視して話を続ける。
「それをたったひとりでやったのが、アルケミアの魔道師だよ」




