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夜明けから夜まで 第百三話

百鬼は、無造作に屋外テラスから中に入る扉へ歩みより、腰から拳銃を抜いた。

単発式の大口径拳銃を、扉の鍵に向けて撃つ。

屋上テラスを吹き抜ける風の声を貫いて、轟音が響いた。

百鬼は、屋上テラスから中へと踏み込む。

わたしは、百鬼の後に続いてビルの中へと入った。

意外にも、そこに待ち受けているはずの兵士はおらず、薄暗い廊下に人の気配は無い。

「なんだか、無防備な感じね」

百鬼は、口の端しを少し歪めて答える。

「このニューヨーク・プリズンは入り込めたとしても、脱出することは不可能だ。放射能に汚染された陸路を歩いて脱出することは、できないからな。ここを警備する兵士は、百階以上にしかいない。そこから下を警備する意味が、殆どないんだ」

なるほどと、わたしは思う。

ここから脱出するには、最上階付近でヘリコプターに拾い上げてもらうしかない。

だとすれば、下の階を守る意味はないはずだ。

百鬼は、廊下を歩きだす。

「ねえ、どこに行くの」

わたしの問いに、百鬼は振り向かずに答えた。

「フォン・ヴェックのおんなは、最上階の102階にいるはずだ。そこへ行く、エレベータに乗る」

わたしは、息をのむ。

「そんなことをしたら、待ち受けている警備兵の前にのこのこと出て行くことになるんじゃないの?」

「当たり前だ」

百鬼は、馬鹿にしたように鼻をならして答える。

「正面強行突破しか、ないだろう。策を弄する時間が、あるとでも言うのか?」

わたしは、肩を竦める。

「そうだけど、陽が空にある間のわたしの能力は、それほどひととは変わらないよ。通常の拳銃弾を数十発浴びれば、死ぬと思う」

百鬼は、薄く笑った。

「嬢ちゃん、あんたに何も期待しちゃあいない。心配するな、守ってやる」

家畜に守られるという屈辱に、わたしは少し頬を染めたが百鬼は気にした様子もなく言葉を重ねる。

「それに、このフロアで武器を手に入れるつもりだ」

わたしは、驚いて百鬼を見るが、百鬼はわたしの相手をする気はないらしく廊下を進んでいく。

ひとつの扉を、無造作に開いた。

暗いその部屋には、ひとつの木箱が置かれている。

大きなその木箱は棺桶のようにも、見えた。

百鬼は刀に仕込まれていた小柄を取り出すと、木箱の上蓋に差し込んで開く。

その闇が湛えられた箱の中を、わたしは覗き込む。

そこにあったのは、少年の死体であった。

「一体何よ、これ」

驚愕に包まれたわたしを、冷たい目で見ながら百鬼が言った。

「ボルシェビキが造った戦闘用アンドロイド、N2シリーズだ」


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