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D・M  作者: 詩月凍馬
3/4

食事・疑問

 久々に身に付けたジーンズとTシャツはやはり懐かしい感触がした。

縫製や製糸の技術レベルが違い過ぎる性もあって、極一部の高級品や絹製品を除いてカストゥルの衣服は地球のものに比べ、 ごわついていて余り着心地が良いとは言えない。

まぁ、結局は慣れの問題でもあるのだが、カストゥルに飛ばされた最初の頃はごわついた感触に慣れず、若干の睡眠不足に陥った事もあったのだ。

そんな事を思い出しながら再び冷凍庫の扉を開けると、数種類ある中から『ソバ飯』を見つけて裏面を確認。

どうやら袋ごと温めが可能なヤツらしいので、説明書きに従い袋の裏面にプスプスと幾つかの穴を開けていく。

あぁ、ちなみに使っているのは楊枝だ。

俺は基本的に三食をしっかりと取る代わり、余り間食はしないタイプなのだが、時折趣味に熱中し過ぎると寝食を忘れてのめり込む事もあるので、数個のカップ麺を部屋に常備しておくのが習慣になっていた。

確か受験勉強に励んでいた頃に出来た習慣だったか?

母や祖母等が夜食を持ってきてくれる事も多かったが、余り世話を掛けるのもと思いカップ麺を買って来たのが始まりだった筈だ。

その当時は冷蔵庫や電子レンジ等もこの部屋にはなかったが、『受験勉強するならお茶とかも部屋で飲める方が良いだろう』と祖父が電気ポットをプレゼントしてくれていたので、お湯を注ぐだけで出来るカップ麺は丁度良かったのである。

と、そんな経緯からコンビニで貰える割りばしが幾つか部屋にあった訳だ。

アレなら箸だけじゃなく、楊枝も入ってるからな。

閑話休題。

適当に穴を開け終えたソバ飯のパックを電子レンジにセットして、時間設定のダイヤルを回す。

ブゥン・・と小さい音と共に温めが始まったのを横目に、電気ポットにミネラルウォーターを入れてセット、お湯を沸かす。

これもやはり驚いたのだが、底をついていた筈のカップ麺の買い置きも何故か補充されていたのである。

これも理由が解らないのだが、都合が良いのは確かだ。

やはり汁物があった方が体も温まるからな。

特に俺は戦闘で血を流した事もあってやや低体温気味だ。

栄養を取ると同時に体を温められる汁物は正直有難い。

 冷凍のソバ飯とカップ麺と少々ジャンクに過ぎる組み合わせだが、まぁ良しとするしかない。

 取りあえずは電子レンジと電気ポット、二つの電化製品が仕事を終えてくれるまでに食事が出来る様にしておくとしよう。

 パイプベッドの下から、折り畳み式のテーブルを引きずり出して組み立てる。

五年近くも開けたから埃まみれかなとも思ったが、母か祖母辺りが掃除をしてくれていたのか、予想外に綺麗だったのに驚きながら、あぁ、そう言えばそれはこの部屋全体に言える事かと思い直して苦笑する。

何と言うか、やはり血を流し過ぎていて血の巡りが悪いのだろうか?

普段なら気づける様な事に気づくのが遅すぎる。

そんな事を思いつつ、机の上に置いてあるウェットティッシュを数枚引き出してテーブルの天板を拭くと、サイドデスクの引き出しから袋に入った使い捨ての皿とコップを取りだしてテーブルに並べ・・・とそうこうしている内に電子レンジと電気ポットは仕事を終えてくれたらしい。

久しぶりに聞く「チーン」やら「ピーッ」と言う電子音に懐かしさを覚えつつ、電子レンジから取り出したソバ飯を半分ずつに分けて皿に盛り付け、カップ麺にお湯を注ごうとした段階で眠っていたエルが「う~ん」と声を洩らした。

見れば、漸く目を覚ましたのか上半身を起こしたまま眠たげに眼を擦っている。

19歳になったにしては幼く見える仕草に苦笑しつつ、「起きたか」と声を掛けた。

と、それからが大変だった。

「九印だ、九印が生きてる!」から始まり、「あれ? 私確か死んだ筈なのに」だとか、「ここはどこ? 何でこんなトコにいるの?」等等・・。

何とか落ち着かせた頃には既に十分近くが過ぎていて、カップ麺にお湯を注いでなくて良かったと心底思った。

婚約者とカップ麺を秤にかけるなよ、と言われそうだがこのカップ麺は限りある少ない食料の内の一つなのだ。

無駄には出来ないし、かと言って伸びに伸びて麺の原型を留めていない様な代物を食べるのも気が進まない。

漸く落ち着いたエルにコップに注いだミネラルウォーターを渡しながら、現時点で解っている事を説明する。

まぁ、ここが地球に居た頃の俺の部屋だって事には驚いていたが、何となく納得した様子も見せていたのでカップ麺が出来るまでの時間つぶしを兼ねて尋ねてみると

「あ、うん。さっきまで私が寝ていたベッドがあるでしょ? 何となく九印に抱き付いているみたいで安心したの。知らない部屋なのになんでかなぁって思ってたんだけど、九印のベッドだって言うなら納得かなって。多分、九印の匂いがしたから無意識に安心しちゃったんだよ、私」

 等と恥ずかしい答えが返って来た。

 あぁ、うん。

 この辺り、エルは少しずれてるんだよな。

 『導きの巫女』として俺達に会うまで塔に閉じ込められていた弊害か、普通なら口にするのを躊躇う様な恥ずかしい事をサラリと口にすることがある。

 まぁ、通常の倫理観に置いて避けるべき、性への直接的な表現だったり、個々人を侮蔑する様な発言はない。

 その辺りは次期王妃として、確りとした教育がなされている故だろう。

 なので、主に被害にあうのは俺である。

 さっきの様に油断していると赤面必至な発言が飛び出してくるので、俺は思わぬ所で恥ずかしい思いをし、クォークやパーラはニヤニヤと、フェンは暖かい眼差しを俺達に向け、一人不思議そうなエルが小首を傾げると言った光景が時折繰り広げられた訳だ。

 魔王殺しで名高い勇者パーティー御一行と言う事で、噂とイメージが独り歩きしていたらしいが、そんな光景を始めて見た兵士やらレスディアの民達は目を丸く驚いていたものである。

 普通に考えれば18そこらの青少年に過ぎないのは解る筈なのだが・・・『魔王殺しの英雄』としてのイメージはやはり大きいと言う事だろう。

 とまぁ、それは良いとして、だ。

 エルと話をしている内に三分は経った。

 まずは腹ごしらえと行くべきだろう。

 HP残量1、MP残量3と言う状態はハッキリ言ってキツイ。

 取得したスキルの中に『生存術』と『不撓不屈』があるから動けているものの、状態で言えば瀕死なのだから当然だが、戦闘時なら兎も角として日常生活の中では『反骨心』も適応されないので色々とステータスにもマイナス補正がされている筈だ。

 せめてMPがもう少し残っていれば刻印術で回復も出来るのだが・・・。

 エルの方もHP、MP共に殆ど残っていないのは変わらないらしく、魔法による回復は望めない。

 なら、せめて回復を早める為にも確りと栄養を取らねばならない。

 それに、そんな理屈抜きにしても腹が減っているのは事実なのだ。

 ともあれ、初めて見るソバ飯とカップ麺に興味津津なエルに簡単に説明してやりつつ、エルにはプラスチック製のフォークを渡し、俺は割りばしを使って食事を開始する事にした。

 まずはとカップ麺に手を伸ばし、麺を啜る。

 美味い・・・!

 日本人なら誰もが知る、これぞカップ麺とでも言うべきそれは、やはりチープに過ぎる味付けではあったものの五年ぶりと言う事もあって殊更美味く感じる。

 ソバ飯もそうだ。

 飯と中華麺、キャベツ等をソースで絡めつつ炒めただけ、それも冷凍食品とあってよりチープな味付けになっているのだが、此処暫く食べていなかったジャンク食品はやはり美味いものがある。

 エルはとみれば、やはり初めての食べ物と言う事で少し戸惑いもあったようだが、俺の食べっぷりに釣られてソバ飯に手を出すと、驚いた様に目を開いた後早いペースで食べ始めた。

 まぁ、根が庶民育ちの俺と違ってがっついているのではなく、何処か優雅にも見える様子で食事を進めていくのは、やはり王族と言うべきか。

 将来の王妃と言う事で行儀作法はキッチリと叩きこまれたと言っていたし、旅に加わったばかりの頃等は宿や料理屋で出された料理を前に、どうやって食べたら良いのか戸惑っていた位だからある意味で筋金入りだ。

 五年近くの旅暮らしで庶民の料理や、野営なんかでのサバイバル食にももはや慣れたものだが、それでもやはり生来と言うか長きに渡って培ってきたものは変わらないと言う事だろう。

「エル、食べて見てどうだ?」

 そう俺が尋ねると、エルは口の中の物を確りと呑みこみ、態々ポケットから取り出したシルクのハンカチで口元を拭ってから答えてくる。

 この辺りも、身に付けた作法故だろう。

「そうだね。美味しいんだけど・・・ちょっと味が濃いかな? 欲を言うならサラダか何かサッパリしたものが欲しくなるね」

 あぁ、成程。

 それは確かにあるな。

 俺みたいな現代日本の男子高生なんかは、ジャンクフードオンリーな食事でもあまり気にならないものだが、コース料理なんかの方が食べ慣れているエルにとってはそうなるか。

 元々レスディアは香辛料の類の通量が少ない事もあって、基本的に味付けは薄めだって事も理由の一つだろうな。

 そう考えると素材の味がなくなる程にソースを使ったソバ飯は当然として、カップ麺の方も味付けは濃いめだ。

 エルがそう思うのも当然だろう。

「まぁ、確かにな。とは言え、無い以上は諦めるしかないんだがな」

「解ってる。それに、これはこれで美味しいからね」

 そんな事を話しながらも食事を終える。

 やはり腹が満ちると気分の方も落ち着くのか、さっきよりも余裕が生まれてくる。

 二人分のプラスチックカップに新しいカップを嵌めて準備すると、ティーパックではあるが紅茶を入れる事にする。

 この辺りはカストゥル生活の名残だろう。

 あっちには日本茶なんてものがある筈もなく、お茶と言えば紅茶を指しているのだ。

 そんな生活環境で5年近くを過ごした今、食後の紅茶はある意味で習慣になっている訳だ。

 とは言え、所詮はティーパックなので味に期待は出来ない。

 飲めれば良い程度に思うしかないが、下町の安宿なんかではこれ以下の紅茶が出てくる場合もあるので、俺もエルも特に文句はない。

 王族のエルにしても、五年の旅暮らしでこの辺りは慣れたものだ。

 特に野営なんかだと紅茶どうこう以前に火を使えない場合もある。

 それを考えれば余程上等だろうと言える。

「さて、取りあえず一腹出来た訳だが・・・」

「状況が全く解らないんだよね・・。間違いなく死んだ筈の私達が生きてるって時点でまず可笑しいし」

 まぁ、そうなんだよなぁ。

 エルの場合は王城に居た訳だから兎も角として、俺の場合は生きてるって時点であり得ない。

 あのレベルの傷を癒せるのはエル位なものだし、パーラやフェンにも予め俺があそこで死ぬ事は話してある。

 クォークは驚いていたが、ヴォードの奴が俺を邪魔だと思ってる位はとっくに知ってたし、エルに向けた視線に好色な色が浮いていたのも解っていた。

 となれば、どこかで横やりを入れてくるだろう位の予想は付くし、その為に打ってくる手にも予想は付く。

まぁ、とは言えそこは敵も然る者というか、策が見ぬけていたにしろ殆ど魔軍との最前線を直走る俺達と、王都に控えて後方支援に徹する形のヴォードとではやはり手廻しに差が出てくる。昼も夜もない戦いの合間を縫って漸く手を打てた頃には、既にユミリはヴォードの奴に攫われた後だった訳だ。

そしてそれが解っていても俺達に出来る事等多くはない。

まぁ、精々が俺やエルの影響か、見張り役の連中が意外に騎士してた御蔭でユミリは凌辱されたり乱暴されたり、って事が無かったのが幸いだって位だろうな。

エルに聞いた話じゃ、ヴォードがユミリに手を出そうとする度に偶然を装って邪魔してくれてたらしいからな。

一応宰相の立場にあるヴォードとしては戦線に変化ありなんて言われれば、呑気に部屋に引っ込んで女抱いてる訳にも行かず、執務室に向かうより他にない。

そして戦線の変化なんてものはそれこそ昼夜問わず、回数の上限なんてものもない。

ヴォードの奴にしてみればさぞや面白くなかっただろうよ。

さぁ、これから気に食わない連中が大事にしてる女を甚振ってやろうとして舐めずりをしてれば、これからって所で毎回邪魔が入る訳だ。

しかも戦線の変化って事はそのまま俺達が原因だからな。

戦地と王都の距離を挟みながらも俺達に邪魔をされるってのは、無駄にプライドの高いヴォードにとっては業腹ものだったろう・・・って、思考がそれてるな。

兎に角、戦地に居た俺にあの状況下で生き延びる可能性はない訳だ。

エルに関しては王城に居た訳だから自殺を図った所で生かされる可能性もあるにはあるが、『間違い無く死んだ筈』って言ってるんだ。

その可能性は徹底的に排除して、確実に死ねる状況を作ってたんだろう。

この俺だけじゃなくエルまで死ぬってのは散々話し合ったもの、どうあってもエルの決意を覆す事が出来なかったからな。

流石に

『九印は私に好きでもない男・・・それも最愛の人を殺した男に抱かれろ、妻になれって言うの? そんなの我慢できる訳無いじゃない。それ位ならさっさと自分の胸を貫いて死ぬわ』

 等と言われては何も言えないし、

『それにね、良い機会でもあるの。ここで私が死ねば『導きの巫女』の血統は途絶える・・。もう私は私の母様達の様に塔に閉じ込められて、国が決めた男に嫁ぐまで孤独に過ごす娘が出なくて済む。私は最愛の男以外に体を捧げずに済むし、結果として巫女の血統が途絶えるからあの伝統も断ち切れる』

 そう言って笑われてはもはや処置なしだ。

 俺にしても自分が死ぬ事を大前提に策を練ってる手前、エルにやめろと言えないしな。

 ・・・って、いかんな、また思考がそれてる。

 兎も角、俺にしろエルにしろ、アッチでは確実に死んだのは確かだ。

 ユミリをクォークに受け渡す前、エルは俺の亡骸を確認してるらしいからそれは確実だ。

 にも関わらず、その俺が生きて此処に居る。

 まず、それが可笑しい。

 そしてエルが一緒にいるってのも不思議な点ではあるな。

 愛情云々は置いておいて、実際の所エルはこの部屋を知らない上、そもそもがカストゥルの人間だ。

 俺の場合なら向こうで死んだから、こっちに戻されたって考え方も出来ないではないが、その場合だとエルには当て嵌まらない。

 そもそも地球にしろカストゥルにしろ、死は死でしかないのだから向こうで死ねばこちらに戻る等あり得ないと言って良いだろう。

 それに俺の亡骸を確認したとエルが言っている以上、肉体毎転移したって可能性は低いだろうしな。

 そして転移先が子の部屋ってのはまぁ、兎も角としてこの部屋の周りが気になる。

 地球に居た頃の俺の家――祠堂家はごく一般的な木造二階建ての住宅であり、小規模な庭もあったものの、両隣りとは隣接していたと記憶している。

 俺の部屋はそんな祠堂家、玄関から見た二階の右角にあり入って正面と左の壁がガラス戸になっている。

 当然、そんな作りになっている訳だから俺の部屋の窓からは隣接する家が確りと見えていたし、片方の窓は隣家が何時まで経っても切ろうとしない庭木の枝が窓に触りそうになっていた筈だ。

 にも関わらず、それらの一切見えない所か、空や地面すらない無色の空間が広がっているだけなのだから、どうにも解らない。

 これはドアを開けた先にも言える事で、本来ならそう広くないとはいえ廊下が広がり、隣にある妹の部屋とその先にある両親の寝室をつないでいる筈だのだが、こちらにも無色の空間が広がっているだけで廊下や階段等の一切が存在せず、そして出る事も出来ない。

 言ってしまえば、この世界に存在しているのがこの部屋だけだ、とでも言う様な感じである。

 まぁ、考えるだに可笑しな状況ではあるが。

 空腹が紛れたお陰か、色々考えられる様にはなって来ているが、状況に関しては全くと言って良い程進展がないってのが厳しい所だ。

 深々と溜息を吐きたい気分ではあるが、恐らく俺以上に混乱してるだろうエルの前でそれはちょっと出来そうにない。

 俺にだって、男としての意地ってもんがあるしね。

 とは言え、どうしたものか・・・。

「ん?」

 ふと、気付いた。

 パソコン、起動してないか?

 何となくそう思い、立ち上がって確かめれば――

「やっぱ、起動してるな、これ・・」

 モニターこそ電源が落ちているものの、筐体は起動中を示す電源マークが付いており、微かではあるが冷却ファンの駆動音もしている。

 どうやら静音型である事と、一気に状況が変わった事で気付けなかったらしい。

 そこまで切羽詰まっていたのかと苦笑しながら、椅子に腰かけてモニターを起動すれば、こちらもすぐに起動した。

 どうやら、電源を落してあったのではなく、スリープモードにでもなっていた様だ。

 その証拠に起動時に付きものの表示ではなく、何かのプログラムらしきものが映し出されている。

「え~っと・・迷宮創造・型式・救世主式(ダンジョンメイカー・タイプ・メシアス)? 何だこれ?」

 ふむ、意味が解らない。

 あれか?

 これはPCインストールタイプのゲームか何かか?

 ダンジョン作って敵を滅ぼせってタイプの。

 今度こそ、深い溜息が口を吐いて出た。

 だってあれだろう。

 もしかしたら何かの手がかりでも、と期待してみればどこのメーカーかも解らないゲームと来た。

 この状況でこれを見て『よっしゃ、来たコレ!』とでものたまう奴が居たとすれば、間違い無く頭か心の病院行きだ。

 速攻で、しかも、隔離する勢いで迅速に。

 そんな事を思っていると

「迷宮製造・型式・救世主式の起動を確認しました。創造主(マスター)の名称を入力してください」

 等と言う合成音声でのガイダンスが流れた。

 うん、何と言うか無駄に凝った作りになってるな、これは。

 しかも、音声チャット様のマイクにも電源が入ってるって事は、音声入力って事か?

 疑問に思いながらもマイクを引き寄せ、入力を試みる。

「祠堂九印」

「入力を確認・・・設定中・・創造主名・祠堂九印で確定します。確定であればYES、再入力の場合はNOと発声して下さい」

「YES」

 ここまでのやり取りの後、モニターには設定中の文字が現れ、筐体からカリカリと言う作業音が響き始める。

「クイン、これって何なのかな?」

 一連のやり取りを不思議に思ったエルが、俺の後ろからモニターを覗き込みながらそう尋ねるが、俺にだって解らない。

 どう答えていいか迷っていると、作業中の文字が消え、モニターに手の形をしたイラストが現れ、再び合成音が響く。

「創造主確定の作業に移ります。モニター上のイラストの上に手を合わせ、魔力を流して下さい」

 オイオイ・・。

 魔力を流せってどういう事だ?

 しかもモニターに手を合わせた所で、どうやって入力できるってんだよ?

 そう思いながら見ていると、合成音は再度急かすかの様に同じガイダンスを繰り返す。

「・・・はぁ、解ったよ。やれば良いんだろ、やれば」

 半ば自棄になった気分でモニター上のイラストに右手を合わせ、極僅かな魔力を右手に循環させる。

 すると――

「うおっ!?」

「きゃっ!?」

 モニターから眩いばかりの光が溢れだし、俺とエルを包み込んだ。


こちらの作品は、恐らく不定期になると思います。

また、ご感想、ご指摘などはご遠慮なく書き込み頂けると幸いです

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