お題短編小説 朧月 鎖 闇 銀髪 ヘアピン
一人の少女は美しい銀髪をなびかせ、春の空を見上げる。
暗闇の空の中に浮かぶ朧月はまるで黒い鎖に繋がれた自分のようで。
暗雲に隠れ霞んだ月は自分の人生を表すようで。
そう思ってしまう自分にひどく嫌悪感を覚える。
少女はポケットから黒色のヘアピンを取り出し、朧月にかざす。
その行為に意味はなくて。
あるとしても少女はその意味を知ろうとしない。
少女はただ、真っ直ぐに朧月を見つめている。
自分の人生と似た月を。
ただ真っ直ぐに見つめる。
「逃げない。」
ただ一言。
そう呟いて少女は再び人生という名の道を歩み続ける。
その呟きは自分に言い聞かせるための呟きなのか。
それとも自分ではない誰かへの決意の表明なのか。
答えを知る者は少女しかいない。