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異世界落胤セラ ~ポセイドンに捨てられた俺は、救うたびに誰かを溺れさせる~  作者: マーたん


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第四十一話:

長き戦いの果てに、英雄たちは束の間の眠りにつく。


だが、眠りの中に現れたのは平穏ではなかった。


教室。

制服。

給食。

恋文。

そして、くだらなくも騒がしい日々。


それは夢だったのか。

幻だったのか。

あるいは、誰かに見せられた“もしもの世界”だったのか。


セラ は目覚める。

鳥羽姫 は怒りながらも現実へ立ち返る。

そして、全てを嘲笑う クロガミ は、再び門を開く。


ここから先は、ただの戦乱ではない。


世界の裏側。

物語の仕組み。

生きる意味と、演じる意味。


彼らは今、剣では斬れぬ敵へ踏み込もうとしていた。


――開幕。

第四十一章:物語の外側


「――目覚めたか、この女ったらし。」


耳元で響いた声と同時に、鈍い痛みが額を走った。


セラはうめき声を漏らし、ゆっくりと目を開けた。


視界に飛び込んできたのは、見慣れた天井ではない。

木組みの梁。白い布で飾られた柱。香の煙がゆらゆらと漂う広間。


そして、その真正面に腕を組み、仁王立ちしている女。


鳥羽姫


その拳にはまだ赤みが残っていた。


「……痛い」


セラは額を押さえながら起き上がる。


「当然です。夢の中でまで女を増やしていたのですから」


「待て」


「何の話だ」


鳥羽姫の目が細くなる。


「月城沙耶、でしたか」


「先輩、でしたか」


「給食のプリン、でしたか」


「図書室の恋文、でしたか」


セラの顔色が変わった。


「……全部見ていたのか?」


「見せられていたのです!」


鳥羽姫は顔を赤くしながら怒鳴った。


「何なのです、あの世界は!」


「学園? 教室? 制服? パン屋?」


「意味が分かりません!」


セラは頭を抱えた。


脳裏に浮かぶ。


三神凌牙。

騒がしい神谷。

事件簿。

チャックの叫び声。

黒板に現れる文字。


あれは確かに現実だったように思える。


だが今、ここにいる自分は――


セラ


翼を持ち、戦火の世界に立つ者だ。


「……夢、だったのか?」


その声は、自分でも驚くほど弱かった。


鳥羽姫は少し黙り、やがてため息をついた。


「夢にしては、妙に腹が立ちます」


「現実にしては、妙にくだらない」


「ゆえに、どちらでもありません」


「は?」


「あなたらしい、ということです」


セラは何も言えなかった。


その時、障子の向こうから足音が響く。


「失礼いたします!」


飛び込んできたのは、焔牙 だった。


「大変です!」


「白都の外壁に、黒い門が現れました!」


「門?」


鳥羽姫とセラが同時に立ち上がる。


焔牙は息を切らしながら続けた。


「しかも門には、奇妙な文字が……!」


「“本編へ戻る扉”と!」


セラの顔が引きつる。


「……あいつか」


鳥羽姫が額を押さえた。


「まだ終わっていないのですか……」


城壁の外。


空を裂くように立つ巨大な黒門。

その上に、足を組んで座る影が一つ。


白帽子。

口ひげ。

エプロン姿。


黒神田昴


彼は手を振りながら笑った。


「毎度ー!」


「夢やと思った?」


帽子を取る。


ひげを外す。


エプロンを投げ捨てる。


現れたのは、闇そのもののような男。


クロガミ


「残念やけど、ここからが本番やで」


風が止んだ。


空が黒く染まり始める。


セラは翼を広げ、剣へ手をかけた。


「……なら聞かせろ」


「俺たちは何なんだ」


クロガミは口角を吊り上げた。


「物語の中の住人が、そんなこと気にしたらあかん」


「せやけど――」


その目が細く光る。


「今日はちょっとだけ、外側を見せたるわ」


鳥羽姫が槍を構える。


焔牙が炎を纏う。


白都の鐘が鳴り響いた。


そして世界は、再び大きく軋み始める。


物語の外側で、誰かが笑っていた。

























































登場人物


―第四十一章:物語の外側―


セラ


本編の主人公。物語の外側から目覚め、本来の戦場と世界の歪みに直面する存在。学園世界での記憶を「夢」として揺さぶられながらも、自身の使命へと戻りつつある。


鳥羽姫


気高く苛烈な姫。学園世界では月城沙耶として存在していたが、本来の姿に戻りセラを現実へ引き戻す役割を担う。怒りと誇りを併せ持つ戦士。


焔牙


セラに仕える若き戦士。冥炎を操り、白都防衛の最前線を担う。黒門出現の報を伝え、物語の異変をいち早く察知した。


クロガミ


学園世界・本編双方に干渉する存在。関西弁の黒神田昴としても現れるが、本質は世界構造そのものを弄ぶ観測者。今回も「本編へ戻る扉」を開いた張本人。


黒神田昴


クロガミの仮の姿。パン屋のおっちゃんとして振る舞いながら、物語の切り替え役として登場する偽装人格。


チャック


スピンオフ・後書き枠に現れる小型魔物。今回も本編世界に無理やり介入しようとするが、危険を察知して撤退する。



人物関係


セラ × 鳥羽姫


現実世界で再会した本来の主従関係。学園世界での曖昧な記憶を経て、再び戦場へと戻る二人。


セラ × クロガミ


物語そのものを操作する存在と、その中で抗う者の関係。世界の構造を巡る対立軸。


焔牙 × 鳥羽姫 × セラ


白都を守る戦力三者。クロガミによって歪められた世界の異変に立ち向かう中心戦力。


クロガミ × 黒神田昴


同一存在の二面性。管理者としての本質と、干渉用の仮人格。


チャック × クロガミ


創造主と派生存在の関係。スピンオフ世界から本編への侵入を試みるも、制約により撤退。



この章の位置づけ


第四十一章は、スピンオフ学園世界から本編世界への完全な回帰点であり、

同時に「物語そのものの構造」を示唆する転換章。


セラ が「夢」と「現実」の境界を越え、

物語を支配する クロガミ との対峙へと進む起点となる。

夜の白都。


戦支度で慌ただしい城の片隅、誰もいない廊下に小さな影が現れた。


ぴょこん。


チャック


「こんちわー!」


「……あ、声小さめでいこ」


周囲を見回し、ひそひそ声になる。


「ついに本編や……」


「場違い感すごいな……」


遠くから兵士たちの怒号。

鐘の音。

剣を研ぐ音。


チャックは震えた。


「学園のプリン事件とは空気ちゃうぞ……」



そこへ背後から低い声。


「何者だ」


振り向くと、焔牙 が立っていた。


チャック、絶叫しかけて口を押さえる。


「しーっ!」


「後書き枠です!」


焔牙は眉をひそめる。


「意味が分からん」


「こっちもです!」



さらに奥から 鳥羽姫 の声。


「誰と話しているのですか?」


チャックは青ざめた。


「姫来たぁぁ……!」


その瞬間、天井裏へ逃げ込む。


焔牙は呆然。


「……小動物か?」



梁の上からチャックの声だけが響く。


「皆さん!」


「本編でも出っまっか? の答えは――」


「ギリ出れましたぁぁ!」


少し間が空く。


「でも長居したら消されるんで帰ります!」


遠くで、クロガミ の笑い声がした。


チャックは震えながら叫ぶ。


「次回も生きてたら会おなー!」


ぴゅーっと闇へ消えていった。


白都の兵士たちは誰一人気づかなかった。

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