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追放令嬢の賄い飯が美味すぎて魔王陛下が厨房に住みつきました  作者: 渚月(なづき)


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第一話 最後の賄い飯

包丁を置いた。

五年間握り続けた、私の右手だけが覚えている重さ。


宮廷料理局の厨房を出るとき、振り返らなかった。

振り返れば、きっと足が止まる。


罪状は「王太子の食事に毒を盛った」。

身に覚えはない。

けれど、公爵令嬢の涙と、料理局長の証言と、王太子の沈黙が、私の言葉より重かった。


(……毒なんて、盛っていない。)


私が作ったのは、王太子が「生まれて初めて美味しい」と言ってくれた、あのスープだ。

あの日から、局長の目が変わったことを覚えている。


追放先は、国境の向こう。

人間の領域を越えた、魔族の土地。


荷物は着替えと、母の形見の包丁が一本。

それだけで充分だった。

料理人に必要なものは、腕と舌と、目の前の素材だけ。


国境の橋を渡り終えたとき、風の匂いが変わった。

火山灰と、夜の花と、見知らぬ香辛料の香り。


行く宛てはない。

けれど、腹は減る。

自分のためでもいい。何か作ろう。


道端で摘んだ薬草と、干し肉の端切れ。

小さな焚き火で、簡素なスープを煮た。


湯気が立ちのぼる。


それを——じっと見ている、赤い瞳があった。


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