〈files=eight〉
「じゃあアイ、現場に行くまでにもう少し詳しく事件の事を教えてくれる?
どこで、何があって、誰が失踪したのか。
―――そして、どうして失踪事件がスレイトケースに分類されたのか、ね」
「……回答。失踪した少女の名は月詠 莉瑠羽。
15歳。
本日午後八時頃、NPO法人・かがやくいとの所有物である未成年向けの児童養護施設で目撃されています。
本件がスレイトケースに分類されたのは、前にも二度、月詠 莉瑠羽の〝家出〟が発生していたからです」
髪がなびく夜風の下、希、遥、翠の三人と、アイの一匹は、失踪事件が起こったとされる児童養護施設へと向かっていた。
アイは遥に抱えられながら、淡々と希の質問へ答えていく。
アイの回答を聞いて、希はこの事件への思いをより強めた。
二度家出が発生したからといって、I.S.Oの他のホームに毛嫌いされるスレイトケースに分類されるのは、少し違う気がする、と言うのが希の言い分だ。
莉瑠羽は二度、SOSを外部の人に求めていたのかもしれないのに。
「……まぁ、本部がスレイトケースに分類すれば、事件の大きさに構わず、その事実は消えないもんな。
よかったよ。不受理になる前に俺達のホームに来てくれて」
「……そうだね。それだけが救いだったかも」
「かがやくいと、か……」
「?翠さん、どうかしましたか?」
「いや、何でもない。先を急ごう、緊急の依頼だからな」
そう言って翠は、アイを抱きかかえた遥のさらに前に歩き出した。
そうして、アイに案内されると……。
「ここが、かがやくいと……。何か、懐かしいな」
「そうか。瀬戸は元々、児童養護施設出身だったな」
「まぁ、一歳とか二歳の話しだけどね。
疾患のこともあって、すぐに病院に引き取られたよ」
〝かがやくいと〟と光るネオンは、温かいオレンジ色で包まれていた。
もう子供たちはねているのだろう。
部屋の電気は、ほぼ全て消されている。
案内を終えたアイは、遥の腕から素早く抜け出し、I.S.O本部へとそそくさと帰っていってしまった。
施設の玄関前で立ち止まっていた三人の元に、誰かが駆け寄って来た。
「あの、あなた方は……」
「あ、すみません。俺たちはI.S.O所属の階級85位、ブライトダストの探偵・瀬戸 希です」
「I.S.Oの……!私が依頼した月詠 莉瑠羽の父、月詠慧大です。
お願いします、どうか娘を見つけて下さい!」




