〈files=Seven〉
「え、アイ!?こんな夜にってことは……」
光沢のある白いボディには、I.S.O.のロゴが眩しく輝いている。
首元には可愛らしい鈴がつけられていたが、その瞳は最新のAIが搭載された、冷たいセンサーの光を放っていた。
彼女はI.S.O依頼配達部所属のネコ型ロボットのマスコットの内の一匹・アイだ。
「緊急依頼です。ブライトダスト、動けますか」
「俺達のホームに依頼しなければならない様な緊急依頼って事は……。
アイ、他のホームは断ったのかな?」
「肯定。ブライトダストが依頼を断ると、本件は正式に不受理となります」
「わかった。この依頼、ブライトダストが引き受けるよ」
「了承。いつも通りの快諾、感謝します」
ロボットの口調で淡々と希の問いに回答して行く。
アイの首輪にある小さなチップを読み込み、半透明な端末に、事件概要を映し出す。
「特記事項:スレイトケース。項目:捜索。状況:密室で少女が消失。
依頼人:少女の父親。依頼要件:早急な行方不明者捜索」
「またスレイトケース!?うちのホーム、スレイトケース多過ぎだろ……」
スレイトケース、事件として扱うか未確定のケースの事。
規模が小さい、或いは被害がないケースがこれに当てはまる。
大きな事件の前兆としてI.S.Oは受理するが、殆どが大きな事件とは無関係の事件が多い。
「ほう。密室で……か」
「翠さん!」
「まさかこんな夜にアイが来ていたとは……。希、この後どうする?」
ヒョコっと希の後ろから事件概要を覗き込んできたのは、今までお手洗いに行っていた翠である。
翠の言葉に、遥と希はガタリと、ゲーミングチェアから立ち上がった。
「もちろん、事件現場へ向かいます。アイ、案内してくれる?」
「了承。速やかに移動します」




