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塵は光を灯す:最下位探偵の記録  作者: CANA.
CASE:眠りから覚めて

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4/11

〈files=three〉

「ここです。確かにこの辺りにタイムカプセルを埋めたはずで……」


「先ほどの話を聞く限り、畠中くんは一度ここを掘ったんだよね?」


「はい。でも、見つからなくて……」




校庭に集まった四人の手には、『神門小学校』と印字されたテープが張ってあるスコップが握られていた。


I.S.Oのブライトダストに所属する探偵・瀬戸 希は、誰の、どんな依頼も断らない、探偵と言うよりは便利屋の様な役割を担っている。

そうした事件……小さな困り事ばかりを受けるブライトダストは、起きた事件や事故の解決を請け負うI.S.O.の中では異彩を放つ存在であった。


このタイムカプセル探しも、希は二つ返事で受け入れたのだ。















「―――う〜ん……。かなり深く、広く掘ってみたけど、やっぱり出て来ないね」


「そうだな。希、どうする?もう6時だが……」


「え゙!?早く帰らねぇと母さんに怒られる……!」


「畠中くんもこう言っていることだし、続きは明日にして、今日はもう帰るか」


「そうですね……。あれ?翠さん、遥は?」




空がオレンジから群青へと染まってきた頃、ようやく希は土を掘る手を止めた。

希は掘り起こした土の山をもう一度見つめ、大きく息を吐く。

希の問いに答えるように、彼が見つめた翠の指先を彼は校門へと向けた。



「三十分程前に急用が出来たとか言って、先に帰ったぞ。

明日の事などは希に後でメールを送ると言っていたが……」


「……また、ですか。最近、多いですよね、遥のこういうの」




翠は希の動揺を見ても、何も言わなかった。

ただ、そのエメラルドの瞳には、「今は彼のプライベートに深入りするな」という、静かな制止が込められているように感じられた。


希は、翠のその静かさが苦手だった。

かつて、誰もが異能の無力さを知って静まり返った、あの事件の現場を思い出させるから。

希は握りしめたスコップの冷たさを感じながら、再び土の山へと視線を戻す。




「でも、朝霧さん変でしたよね。

通知音が鳴ったかと思えば、血相変えて飛び出していったから……」


「……」


「まぁ、取り敢えず続きは明日だ。

もう遅いし、畠中くんも、戸締まりなどは我々に任せて先に帰るといい」


「はい。今日はありがとうございました。

すみませんがよろしくお願いします」




耀太は深く頭を下げると、一人、夜の帳が下り始めた校門へと急いだ。

希は、彼の小さな背中が見えなくなるまで見送った後、土に触れていたスコップを地面に丁寧に置く。




「畠中くんが帰ったので、聞きますが」


翠が静かに言った。




「『あの事件の現場』を思い出させたのは、本当に遥の行動だけか? それとも―――」




翠の言葉は、希の「硬くなった土」への執着を知っているからこその問いだった。

希は首を横に優しく振る。




「いいえ。あの時感じた静寂と無力感は、遥のせいだけじゃありません。

この土地が、嘘をついているんです」


「嘘?」

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