〈files=two〉
「ここが神門小学校……。思ってたよりも大きい学校だね」
「依頼人はこの先で待っているようだ。急ごう」
周囲のビル群とは一線を画した、歴史を感じさせる石造りの校舎。
生徒たちの笑い声や、部活の掛け声がホログラムの広告音に混ざり、どこか浮世離れした印象を与える場所だった。
希は、異能を持たない自分でも感じるほどの強い違和感を、校門をくぐった瞬間から感じていた。
違和感を感じながらも希は依頼人の待つ先へと足を動かし、隣を歩く幼馴染を一瞥する。
相変わらず桜の香りが微かに漂う遥は、その長い紅髪を揺らしながら、必要以上に周囲を警戒しているようだった。
彼のエメラルドの瞳には、昨晩の「あそこ」で行われた過度な支配による疲労の色が濃く、希はつい先ほど翠に言われた「事情聴取」という言葉を頭の中で反芻した。
「……あのさ、何でそんなに俺のこと見てくるんだよ!」
「え……!?いや、だって遥―――」
「あ、ブライトダストの皆さん!五年三組の畠中 耀太です。
今日はよろしくお願いします!」
希と遥が言い合いをしていれば、影から小さな男の子が現れる。
流行りのスポーツブランドの服を身にまとったその子は、小学生ながらも丁寧な挨拶をして来た。
希は後れを取らず、黒いI.S.Oの名刺を差し出す。
そこには、所属チーム「ブライトダスト」と名前「瀬戸 希」、そして年齢がシンプルに記されていた。
「今回は、四年前にこの学校の何処かに埋めたタイムカプセルを探してほしい、と言う依頼だったな?
我々に依頼する前にも君は探したのかい?」
「……。!そうです……!授業終わりの放課後、埋めたと認識していた場所を大きなスコップで掘って探したんですけど、見つからなくて……」
遥とはまた別の意味で浮世離れした美貌を持つ翠。
低い声と言うギャップも持ちつつ、外見は異常に若く、一見しただけでは女にも見えるという。
そんな彼に問いかけられた耀太は、一瞬ぽっと顔を赤らめたが、質問の回答をスラリと述べた。
先ずはそのタイムカプセルが埋まってるとされる校庭に行こう、と遥と翠が一歩踏み出そうとしたその時、しゃがんで硬くなった土が覆う地面に触れている希の姿が翠の視界に入る。
翠は彼に声をかけた。
「どうした、希」
「あ、いや……。取り敢えず、校庭へ行きましょうか」
「あぁ、そうだな」




