第四章 契約の影
秋が訪れ、学院祭の季節になった。
セレナはクラスの演劇の主演に選ばれる。
演目は『星の契約者』──恋を禁じられた二人の魔法使いの物語。
「……皮肉ね。あたしたちみたい」
彼女は台本をめくりながら、小さく笑った。
「でも最後は契約を破って、二人は一緒に消えるの。馬鹿みたいね」
「……本当に馬鹿だと思うか?」
「……」
僕は彼女と毎晩台本を片手に、演劇の練習をする。
演技の中で僕たちは何度も「好きだ」と言い合い、抱き合った。
「これは演技よ。心を込めてはダメ」
彼女はそう言いながら、僕の目をまっすぐ見つめる。
その瞳には、本物の感情が揺れていた。
ある夜、練習が終わり舞台の闇の中、セレナが僕の袖を引く。
「リオン……もし契約がなかったら……あたしを好きになってくれた?」
僕は答えられなかった。
代わりに彼女の頬に手を触れる。
その瞬間──契約の光が僕たちの周りに走った。
「まずい……!」
「……り、リオン……!」
触れた。
心が。
揺れてしまった。
それによって契約が反応を示す。
破られそうになった瞬間、魔法が警告を発したのだ。
僕は咄嗟に彼女を抱きしめる。
「逃げよう。学院を出てどこか遠くへ。契約の届かない場所へ」
「……でも、記憶がなくなったら……?」
「記憶なら僕がすべてを覚えている。そして──何度でも、あなたに恋をする」
彼女は僕の胸の中で、小さく笑った。
「……バカね。その時はリオン、あなたも記憶を失うんでしょ? それに、そんなの不公平じゃない」




