第1話:銀河炊き込み飯と、涙の通信記録
「――こちら、貨物船ラビリンス号。搭載エンジン、反応炉系統トラブル。修理班が到着するまで、約36時間……」
宇宙空間の片隅で立ち往生した老朽船。その船内に、ひとりのコックが立っていた。
エプロン姿で腕を組む、銀髪の男。
「また食事支援依頼か。よし、今度は“地球式・炊き込みご飯”でいこうかね」
彼の名はマキ・オオツキ。
宇宙の孤独な船に食を届ける、**銀河食配達人**である。
AIの“チカ”が無機質に伝える。
「船内、搭乗員は1名。年齢は10歳未満の少女。両親は冷凍睡眠中。精神安定度、低下傾向」
「そうか……じゃあ、“安心する匂い”のやつがいいな」
マキは小型キッチンに立ち、真空保存された具材を丁寧に調理し始めた。
ドローンが湯気を漂わせながら、艦内を漂う。
少女は、涙ぐみながらその香りに顔を上げた。
「……これ、おかあさんの匂いがする……」
ドローンが届けたのは、宇宙炊き込みご飯。
ひとくち食べた瞬間、少女の瞳が輝きを取り戻す。
「ありがとう、おじさん!」
「おじさん言うな、コックと呼べ、宇宙一だぞ」
マキは苦笑しながら、調理ログをAIに記録させた。
今日もまた、誰かの宇宙で、ひと皿が心を繋ぐ――
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本日の宇宙レシピ:地球式・宇宙炊き込みご飯(簡易版)
材料(1人分)
・真空米(またはパック米)…1パック
・冷凍きのこ、にんじん、油揚げ(微塵)…適量
・出汁醤油…大さじ1
・宇宙塩…ひとつまみ(地球塩でOK)
・水…100ml
作り方
1. パウチ袋にすべての材料を入れる。
2. 真空調理器(もしくは鍋)で低温で15分温める。
3. ご飯にしっかり味が染みたら完成。
マキの一言アドバイス
「“香り”は心のエンジン。温かい匂いがあれば、宇宙だって怖くない」