真実はわからない
こちら、塾に向かう女子高校生17歳です。匿名希望です。皆様お見知り置きを。
今私が何をしているかと言うと、人を尾けています。はっきり言って尾行しています。
私が尾行している相手は、私が好きな美しい黒髪を目の上まで伸ばし、私が好きな後ろ毛も少し長めに保ち、私が好きな細身の身体を180センチ以上の長さまで伸ばすことのできた美しき男子高校生です。
顔は長くありません。
何でもかんでも長いのが好きなわけではないのです。
顔の内容はと言えば、私が好きな切れ長の目にすっと高い鼻に上品な唇をお持ちのスーパービューティースキンボーイ。
あ、キレナガだって、また長かったわ。
因みに彼は私と同じ塾に通っております。
他言無用です。
事の始まりは、私が塾へ行く前に本屋さんへ寄ったことから始まります。
その本屋さんは、3階建ての超大型ブックストアで、偶然知り合いに会うことなんてほとんどあり得ません。
しかし、彼もその本屋さんの同じフロアの同じ棚に用があったようです。お目当ての本棚に着くと、美しい足を片方だけ曲げて、首を傾げ、考えるように彼は本棚を見ています。これは運命的と考えて良いでしょうか。
その本棚は農芸の本棚でした。
私は、以前からお家で野菜を育ててみたいと考えていたので、この本棚に度々足を運んでいました。
今日きた理由も、塾の先生に相談したところ、オススメの本を紹介してくれたので、その本を探しにきたのです。
しかし、まさか17歳の男子高校生の彼が。かく言う私も女子高校生ですが。彼は、決してその肌を日に晒すような真似はしないのでは無いかと思っていたので、私は度肝を抜かれました。農作業など…するのでしょうか。
しかも、何と私が買おうと思っていた、一冊しか店内に無いその本を彼はレジへ持って行ったのです。私はその瞬間手の内にあった棚番号の書いた地図のレシートをくしゃりと握りしめました。
そして、特に尾行しようと思ったわけでは無かったのですが、彼を追って塾へ向かうこととなったわけです。そう、決して故意に尾行しているわけでは無いのです。わかってください。
塾へ着けば彼もわかってくれるでしょう。
そう考えていた時、数歩先を歩いていた彼がピタリと止まってこちらを振り返りました。
カツカツとこちらに近寄って来た彼。
「これ、欲しかったんでしょ。あげる。」
彼はそのまま、あと3メートル先の塾の入り口へ消えて行きました。
私はそれからどのように塾の席に着いたのかは覚えていませんが、その本の内側に彼のLINEのIDが書かれたメモが挟まっていました。
果たして、本当に気になっていたのは?