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 さて、所は変わりまして、此処にも一人。骨董の泥沼の世界に足を踏み入れた男がございました。

名は田吾作。


 田舎町の生まれではございますが、真面目に働いた結果、纏まった金が入ってきて、幾らばかりかの余裕が産まれました。すると、少しばかり贅沢をしてみたくなるというもの。そこで、予てより興味のあった骨董品に手を出してみようと、こう考えたのでございます。


 早速、町の骨董屋にやって来た田吾作どん。古めかしいボロ屋の様な外観を見つめながら、


田吾作:「うん、アンティーク」


 なんて、一人呟き悦に浸りながら店内へと入っていきました。


店主:「いらっしゃいませ」


 正直、店の外観は期待薄でございましたが、なんとなく品の良い感じの接客に身が引き締まる思いの田吾作どん。背筋をいつも以上にピンと張りながら、店内を一通り見回しました。


 すると、とても良い感じの陶器が目に留まりました。どれどれ、と覗き込みながら、


田吾作:「これは中々、形が素晴らしいですな」


 と、思わず一言漏らしますと、


店主:「お客様、流石に御目が高い。此方はヨーロッパから取り寄せました12~13世紀の品でございます」


 と、店主も何だか嬉しそう。


 成程、随分と昔の品であるのに綺麗な形で残っていますし、確かに悪い物ではない様です。まぁ、聞いただけでお金が無くなる訳ではあるまいし、物は試しと価格を尋ねてみる事に致しました。すると、店主が「此処だけの話」とばかりに、こそりと小声で耳打ちを致しましたる所、


田吾作:「50万円ですか!?」


 思わず目が飛び出る程の値段。骨董趣味の方々に致しましては、百万超えではないなら大した値段ではないと思うかもしれませんが、田吾作どんはズブの素人でございます。流石に百円では買えないとは思いますが、一桁の枚数の福沢諭吉なら相当良い物が買えるというもの。


店主:「お客様、こちらは大変希少な為この価格となっております」


 店主はニコニコと笑顔を絶やしませんが、そもそも田吾作どんは花を飾る花瓶を探しに来たのでございました。しかし、これはどうやら水差しの様で少し用途が違います。それに色が気に入らない。緑がかった青色で、まるで沼の様な色彩。これでは納得が出来る筈もございません。


田吾作:「これの色違いはございますかね?」


店主:「お客様、こちらは一点のみとなっておりますので、残念ながらこの御色しかございません」


 色が変えられないならば、やはり違う物をと思ってしまいます。田吾作どんは店内を見て回りましたが、元々広い店ではございませんので、あっと言う間に一通りの散策は終わりを告げてしまいました。


 元の水差しの前に戻ると他の物と比べたからか、やけに良く見えるではございませんか。とにかく形が良い。シュッとシャープな流線型の様に見えながらも縁はくるりと丸まって、まるで花でも咲いているようでございます。店内を見回しても小物ばかりで花瓶の代わりになる物は見当たらず、この水差しが一番手頃な大きさでございました。


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