第1―1 帰還
昼の12時ちょっとたった頃
上山駅東口
迎えの車も、人もいない…
「熱い…」
時期的には夏休み終わり頃。まだ夏の暑さは、この上山市を包んで離さない
迎えはない…
「ったく。兄貴に連絡したのにな…留守電にだけど…」
転校手続きなど、その他諸々を兄貴にしてもらったので、俺が来ることぐらいあの人は知ってるはずだ…今日来ることも伝えてる…
留守電にだけど…
「はぁ〜。来ないってことは、留守電聴いてないか、仕事が忙しいのか?
てゆうか、何の仕事してるか、知らねぇし…」
一瞬ニートの兄貴を想像したが、あの人に限ってそれはないと首を振る
めんどいが、行くしかない。来ないのだから…
「はぁ〜。」
ため息がでる。
この上山市は中心街は都会っぽく、周辺はひどく寂れている街だ。
喜一の実家は、周辺地帯にある…といっても、静かで良いところだし、自然に囲まれ、中心街にも遠くない
昔から大好きな場所だった…
進むにつれて、見覚えのある景色が広がる… 皆で遊んだ場所… 10年前なのに鮮明に蘇る… 歩いてきて良かったと思う
あの頃は幸せだった…
オバサンの家でも、楽しかったと言えば楽しかったが、あそこは孤独を余計に感じるから、嫌いだった…
11年前の大地震で両親は行方不明になり、妹は死んだ…兄貴はなんか…冷たくなった
家の前に着くと、懐かしい上村とゆう名札を見つけた…
家にはカギがかかっていた
どうやら兄貴は居ないらしい…少しホッとしてる自分がいた
合い鍵は昔の場所のままだった…
妹の優が、気に入ったカッパの人形の皿の下にあった
家に入ると記憶のとおりで、少し涙が出た…
玄関で深呼吸をして
「ただいま…」
そう呟いた…
家に帰ってきたと、久しぶりに感じた