第3―2 蠢く 闇
俺はただ叫ぶ
届かないと知っても
叫び続ける
叫ぶことでしか伝える術を
俺は知らない
『第3―2 蠢く 闇』
上山警察署前。
「だから、詳しい説明をください!このままじゃ納得する事なんてできない!」
怒鳴っているのは刑事の岩田。もうすぐ五十歳になり、部下の指導まで任されるベテランである。
「ですから、今世間に知られれば大騒ぎになるのは必至です。マスコミの非難も避けられません。」
と冷静に答えるのは喜一の兄である上村 空。
「そんな事を聞いてるんじゃないんです。 このままじゃ、ヤれてった部下の家族に会わせる顔がない!せめて我々や家族の方達ぐらいになら説明してもいいんじゃないすか! 『右席殿』…アンタこの事件、無かったことにしようとしてるんじゃ…」
『右席』それは空がこの警察署でのポジションである。政府から派遣され、大きな権力を持っている。
「……」
空は答えない。
「アンタ本当は全部知ってるんだろ… 昨日もあの後上山桜丘の三年の女子高生を保護したみたいだし…その女子高生だってヤられた部下と同じ症状。アンタ…まさか…」
「それを語る事に意味はありません。我々はこのような事件を未然に防ぎ、市民を守る事に全力を注ぐ。それだけです。」
と言い、車の方に向かう。
「またですか…」
と言って表れたのは岩田と組む刑事…後藤である。
「お前どう思う?」
岩田はタバコに火を着けながら後藤に聞く。
「怪しいですね。なんだかんだで岩田さんの質問を否定しない所も。」
「お前、あの人の動き明日から探れ。」
「マジですか?ヤバいですよ。」
「責任は俺が全部負う。このままじゃ終われねぇ。ここんとこ増えてる犠牲者やアイツらのためにも」
その近くに停めてある車の中からさっきのやり取りを観てる者がいた。
「さっきの車に向かってたヤツだ。あの男が上村 空だ。」
車の後部座席に座り、仲間に説明するのが一護。
「なるほど。あれが上村 空か…」
空をジッと見てるのが優夢。
「どうするの?優夢。」
質問しるのは運転席にいる、まみ。
「今日の夜接触する。味方になれば良し、無理なら力づくだ。」
「だけど、アイツ強いぜ。一人じゃキツいぞ。」
一護は優夢に忠告する。
「それは、一護は弱いからじゃないの?」
口をはさんだのは、後部座席に座るもう一人、惣太郎。
「あぁ!?」
「やめろ。惣太郎も挑発はやめるように、伊藤さんに言われているだろ。」
「優夢も伊藤さんに浸透しすぎじゃない?もっと我をもちなよ。」
「お前は協調性を持て。まみ、花村に連絡してヤツの携帯番号を調べさせてくれ。」
「わかったわ。」
「一護は今日俺と来い。」
「了解っと。」
「?」
まみの顔が濁る。
「どうした?まみ。」
隣の優夢が尋ねる。
「ドールから臨時報告が入ってるわ。でも…これは…」
「どうした?」
「デュアル・シンボルを持つ子のデータだわ。だけど…」
「何!それは本当か?」
優夢が異様な反応をする。
「だけど…何のデータも無し。名前と写真だけ。」
「名前は何て呼ぶんだい?」
惣太郎も興味を示す。
「上村 喜一。」
「!」
驚く一護。
「兄弟かな?」
惣太郎は面白い物を見つけたように顔がニヤついている。
「なるほど…ならば、デュアル・シンボルとゆうのも何となく理解できる。 血縁か。」
優夢は何か考えているようだ。
「どうする?」
再びまみが質問する。
「花村に連絡しろ。上村 空の件と、上村 喜一の場所を特定を頼むようにな。」
「喜一ってヤツ、僕がもらってもいい?」惣太郎はまだニヤついている。
「いいが、念のためまみを連れてけ。接触は今日の夜。二人とも生きたまま捕獲だ。生きていれば状態は問わん。」
我等は女神のために。
闇が今…動きだす。