第3―1 アクシュ
我々は他人と触れ合う
我々は他人と笑う
我々は他人と哀しむ
触れ、感じる事で
心は産まれる。
『第3―1 アクシュ』
夏休みが明け、今日から新しい学校生活の始まり。
ところが、喜一はすんごい疲れていた。
昨日はすごい事になったような…
喜一は昨日の事でいろいろ考えたが、結局解らないまま今日になってしまった。
兄貴に相談するってのもなんか違うな…
痛いヤツなんて思われるのも嫌だしな…
喜一の兄である空は一足早く家を出た。
喜一もそろそろ出る予定だ。
新しい学校の名前は上山桜丘高等学校。
なんでも春になると桜の景色が素晴らしいちょっとした丘の上にある学校らしい。
春かぁ…遠いなぁ…
桜が咲く頃は三年生。大学受験だってある。
憂鬱だ。
「おっ、ヤバいなそろそろ出ないと。」
家に鍵をしめ、いざいかん。
昨日闘った場所の近くを通る。あれは夢なんかじゃない事はわかっている。
逆にそれしかわかっていない。
まぁ、考えて解んないんだからしょうがないし。
なんて気楽に考えようとする。
それより重要なのは新しい学校で楽しく暮らせるとゆう事である。
先ずは第一印象…やってやる…
「クスクス」
笑い声で目を覚ます喜一。周りには何人かの女子と男子がいる。
すると、一人の女子が話かけてくる。
「喜一君ずっと寝てたけど、学校終わったよ。 先生が後で職員室に来いってさ。それにしても、顔に寝てた跡がついてるよ。」
「あっ!へっ?」
急いで今の状況を理解しようとする。
たしか、 朝気合いを入れ、学校の職員室に入り始業式が終わるまで教室で待機と先生に言われ、その教室でそのまま寝てしまったのだ。
「わっ!あ、あの!」
当然慌てる。
ん?この娘、俺の名前をしってる?
「何で俺の名前知ってんの?」
「あー…喜一君がどうしても起きないから先生が先に自己紹介しちゃたの…てゆうか、どんだけ寝てたの?
ビックリしたよ。教室に戻ったら知らない男子が寝てるんだもん。」
「えっ?アハハハハハ… えと…とりあえず起こしてくれてありがとう。えーと…」
「あっ!神山 奈々ね。よろしく」
「よろしく。神山さ…」
と喜一の言葉が大きな怒声で途切れる。
「奈々!!」
教室のドアを思い切り開け、飛び込んでくる一人の男子。
「修平!!?」
修平と呼ばれた男子は奈々の近づくと、土下座する。
「すまーーーん!!」
奈々は少し困った顔をしてる。
何かあったのかこの二人?
何も知らない喜一は状況を理解出来ない。
土下座をしている男子に近く奈々。すると男子が急に頭をあげる。近づきすぎた奈々のスカートが男子の頭でめくり上がる…
「これは、これは…今日も可愛らしい下着デスね…ごめんなさい…」
「何しとんじゃわりゃゃゃゃゃゃゃ!!!!!」
修平と呼ばれた男子は頭を思い切り蹴られ、マンガのように教室を舞う。くるくると舞う…
転校初日から軽いトラウマもの目の前で見せつけられる。
床に叩きつけられ、気絶する修平。それに追い討ちをかけるかの如く修平をガンガン踏みつける奈々。
喜一の中でこの娘だけには逆らわない事を静かに誓う。
すると、教室に何人かの女子が入ってきた。
そして、教室の光景を見る。
女子達は奈々に近づき
「さすがは、奈々…
自分でケリをつけるとは!」
下に気絶し転がる修平の事など気にもせず奈々を称賛する女子達…
「えっ?あの…これは…」
奈々は対応に困ってるようだ
「気にする事ないよ修平なんか。皆!今日は奈々が修平にケリをつけた記念として、どっか食べにいこ!」
と言って奈々を連れて教室を後にする女子達。途中で修平に
「もう奈々に近づかないでね!」
と毒づいたりする。
明らかに修平が奈々になんか酷い事をした事を予測させる状況である。
しばらく動けずにいると、気絶していた修平が起きる
修平はなんか深く考えるポーズをとったかと思うと、突然
「シマシマパンツなんて二次元にしか存在していないかと思っていたが…うむ…ありだな…」
となんだかバカな話をしている。どうやら無事のようだ。
「どう思う転校生、上村 喜一。」
突然修平に話を振られる喜一。
「えっ?なにが?」
狼狽える喜一。
「何がではない。シマパンの存在についてだ。」
当然だろと言わんばかりの顔でこちらを見る修平。
「いや、えと…」
教室にはまだ何人かの生徒が残っている。
あの騒動で一切狼狽えないクラスメートを見て正直びびる喜一だが、一応これから仲良くなる仲なので、下手に答えられない。
答次第で早速株が下がるかもしれないからだ。
「むっ?お前もしかして…」
ぐっと喜一に近づく修平。
狼狽える喜一。
「奈々に惚れたのか?」
「へっ?」
驚く喜一
「そうだろう。そうだろう。奈々は可愛いからな…」
「いや、待て待て。なんでそうなるんだよ! 可笑しいだろ!」
「ハハハハ!そうかだがな奈々は俺が先約済みだ…俺と奈々の恋に邪魔は許さないぞ…転校生、上村 喜一!」
「いや、話聞けよ!てゆうか、アンタも散々な結果だったじゃねーか!」
「あの…」
「フハハハハ!まだ道はあるさ…この俺の愛がある限り!」
「あの…」
「それってストーカーと対して変わらねーよ!もっと現実受け止めて生きろよ!」
「アハハハハハ!俺はちょっぴり愛の表現の仕方が変で、陰湿で諦めが悪いだけだ」
「あの…ちょっと…」
「それをストーカーって世間は呼ぶんだよ!てゆうかお前さっきの状況から考えるに確実にストーカーじゃねーか!」
「話を…聞いて…」
「ストーカーではない! そこに愛があるのだから」
「ちょっと…」
「誰かー…コイツに通訳できる人くれ…てゆうか話聞けよ!」
「あの!」
二人のコントは一人の女子によって止められる。
「おう?」
喜一は転校初日なので、まったくこの娘を知らない。
「何だ…桃花じゃないか…何か用か?今シマパンの有無の是非について転校生、上村 喜一と熱く語っている所だ…」
「するか!全然話の内容ちげーし!女子の前でシマパンとか堂々と語るな!」
「シマパンですか…? 確かに今時シマパンなんて…なんて思われがちですが、私としては可愛いと思いますし、時々私も穿きますよ。」
「何!?そうだったのか…なら今桃花はシマパンを穿いて…」
「聞くなー!女子にそんな事聞くなよ!てゆうか、桃花さんだったけ?アンタも何当然の如くパンツ談義しとるんですか!」
「へっ? あっ!そうでした。修平君に話があるんですけど…」
「告白なら断る!」
「どんだけ、ポジティブな思考してんだよ…」
喜一はなんだか疲れてきた…
「違くて、奈々ちゃんの話です。修平君、何かしたんですか?奈々ちゃんはともかく、他の娘たちがすごい怒ってるようですけど…」
「むっ? 特に何もしていない。強いて言えば、奈々の顔を見て、幸せな未来を想像してただけだが…」
「さっきパンツ見たじゃねーか」
と喜一が訂正する。
「そうですか…ちょっと奈々ちゃん探してきますね。なんか変な誤解があるみたいだし…」
と言って教室を後にする桃花。
「えっ?パンツを見た事はスルーなんだ…」
喜一は驚く。
「そう言えば、先生がお前の事を探していたぞ。転校生、上村 喜一。職員室に急げ」
その言葉を聞いて職員室に行かなければならない事を思い出す喜一。
慌てて教室を出る。
「職員室の場所解るのかー?」
後ろから修平の声が聞こえる。
「ああ!サンキュー」
心配してくれた事に礼を言う。
変なヤツ…
そう思いながら職員室へ走る喜一。
でも…嫌なヤツじゃなさそうだな…
職員室でいろいろ話を聞き、職員室を後にしる喜一。
下駄箱で近くのベンチにふと目をやると、先程の修平とかゆう男子が座っている。
太陽に照らされ、深く考え込む姿は男の喜一にもかっこよく見えた。
しかし…と喜一と考える。
コイツは変態だし、さっきの桃花とかいう娘はいかにも綺麗で清楚なイメージなのに、パンツの話するし、
奈々とはいう娘も可愛らしいイメージなのに、あんなに凶暴だし…人は見かけじゃないか…案外合ってるかもしれないな…
そんな事を考えていると修平がこちらに気付いたようでこちらに近づいてくる。
「よっ!転校生。」
「もう、喜一でいいよ。俺も修平って呼んでいいか?」
「断る理由がないな…」
「あっ!私は桃花でいいですよ。喜一君。」
後ろから声がする。
驚いて後ろを見ると桃花が立っていた。
「いつの間に…」
「ん?今来たんですよ。」
きょとんとして答える桃花。
「とゆうか、まだ残っていたのか…桃花。」
「うん。探してたら遅くなちゃって…あの修平君…」
「ん?」
「『アクシュ』してくれませんか?」
『アクシュ』?って握手?へっ?どゆこと?
二人を交互に見ながら、キョトンする喜一。
この街に来てから不思議な事ばかりだった…