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異世界小説の歴史  作者: Ryuon
第一章
4/6

異世界転移/異世界転生 ランキング隔離

数々の代表作が生まれ、作家たちがそれぞれで試行錯誤を重ねることで多種多様な異世界小説が誕生していく中、ある出来事がおきました。


それは、2016年5月24日に小説家になろうで実施されたジャンルの再編成とランキングの仕様変更です。

特にランキングの仕様変更が大事なので以下に当時の発表内容を載せておきます。


挿絵(By みてみん)


要約すると、作品に現実世界から異世界への移動が要素として含まれている場合、異世界転移と異世界転生のキーワードをつけることを義務とし、異世界転移/異世界転生 専用のランキング用意してジャンル別のランキングからは排除するよ、ということです。


この仕様変更により、ランキングの画面はこんな感じに変わりました。


挿絵(By みてみん)


挿絵(By みてみん)


ちなみに、これまで何気なく異世界転移と異世界転生という言葉を使っていましたが、正式に呼ばれるようになったのはこの施策が実施された時からです。

異世界転生とは異なり、異世界転移については異世界迷い込み、異世界トリップ、異世界召喚などの表記揺れが多数ありましたが、これにより一つの呼び方に纏まりました。




【転生/転移の隔離は異世界小説に対してどのような影響をもたらしたのか?】

さて、ここからが本題です。

そもそもなぜ転生/転移がジャンル別ランキングから除外されることになったのでしょうか。

それは、各ジャンルのランキング上位を転生/転移の小説が独占し、小説家になろうはもはや異世界小説専門サイトになってしまっていたからです。

ジャンルの再編成が行われる前のジャンルは以下のように分けられていました。


「文学」「恋愛」「歴史」「推理」「ファンタジー」「SF」「ホラー」「コメディー」「冒険」「学園」「戦記」「童話」「詩」「エッセイ」「その他」


当時の転生/転移の流行っぷりについて、例えば、戦国武将などの歴史上の人物が異世界転移する作品には「歴史」が設定されていたり、今でいう「陰の実力者になりたくて!」みたいな勘違い系の主人公が異世界転生する話であれば「コメディー」が設定されていたり、子供向けの作品の童話にすら異世界というキーワードをランキングで見かけるくらいでした。


この施策には、異世界テンプレ小説をランキングから追い出し、他のジャンルの作品が表に露出する機会を増やすことで、作品の多様性を生み出したかったという運営の意図が伺えます。


さて、実際のところ、この施策に効果はあったのでしょうか?


結果的にいうと、このランキングの仕様変更により、解決できた問題とできなかった問題があります。


まず、異世界転生/異世界転移 の作品ばかりがランキングに乗ってしまっていたという問題、これについては見事に解決されました。

異世界へと行く描写が含まれている作品は専用のランキングが作られるようになり、UI的に一箇所にまとめられるようになったわけですから、該当しない作品が読者ユーザーの目に留まりやすくなりました。

これにより、転生/転移を行わなくてもポイントを獲得しやすくなり、運営の狙い通り現地の主人公の作品の数が増えることになります。


しかしながら、その一方で解決できなかった問題もありました。

それは、結局人気を集める作品はメジャーなジャンルのテンプレストーリーであり、マイナーなジャンルやストーリー展開はランキングに乗れず、ユーザーが発見することのできる作品の多様性が少ないままになってしまっていたということです。


ランキングの仕様は変更されました。しかし、読者たちに何か変化があったわけではありません。

果たして、そもそもそれまで読者たちがWeb小説に本当に求めていたものは、異世界転生/異世界転移だったのでしょうか?


その答えは先ほど紹介した、転生と集団転移という2大テンプレストーリーについてその後を追ってみるとわかります。

では、それぞれ詳しくみていきましょう。




【現地転生】

まず、異世界転生モノについてです。


改めて異世界転生モノのテンプレ要素を思い出してみましょう。

細かい部分についてはそれぞれで異なりますが、ほぼ全ての異世界転生の作品には以下のような特徴があります。


- 現実世界の主人公が自分がいた世界よりも文明レベルの低い異世界に転生する

- 転生ボーナスや前世の知識を活かして無双する


ランキングの仕様変更により、このストーリー展開ではポイントを獲得することが難しくなってしまいました。

ですが、依然として人気があったわけです。

そんな中、読者の需要を掴みつつ、ジャンル別ランキングに載るようにしたい、そう考えた作家たちによってとある手法が生み出されました。


それは、異世界の現地主人公が同じ世界の中で未来に転生するという手法です。

要するに、現実世界から異世界への移動がなくなりさえすれば良いのです。


この手法により、先ほど紹介した異世界転生の特徴は以下のように形を変えました。


- 異世界の現地主人公が自分がいた時代よりも文明レベルの低い未来に転生する

- 前世の力を発揮して無双する


前世の世界と比べると転生後の世界のレベルが低いのでこれまで異世界転生主人公がやっていたように初級魔法を披露しただけで「また俺何かやっちゃいました?」という描写を入れることが可能になる、というわけですね。


この現地転生の代表作は「失格紋の最強賢者」 「魔王学院の不適合者」などであり、それぞれ連載開始時期が2016年の12月と2017年で、なろうのランキングシステムが変わった後の時期と合致します。


挿絵(By みてみん)


挿絵(By みてみん)



【追放】

続いて、集団転移についても見てみましょう。

集団転移のよくあるストーリー展開は以下でした。


集団で転移する -> 追い出される -> チート能力を得る or 実は強かった -> 追い出した人たちを見返す


異世界転生同様にこの集団転移についても、読者には人気がある、でもこのままではジャンル別ランキングに載ることができない、この問題を解決するための手法が編み出されました。

といっても、現地転生の解説を読んだ皆さんなら、それがどのような手法なのか簡単に想像がつくでしょう。

そうです、とにかく現実世界から異世界への移動がなくなりさえすれば良いのです。

よって、上記のストーリー展開は以下のように書き換えられます。


勇者パーティーから追い出される -> チート能力を得る or 実は強かった -> 追い出した人たちを見返す


よくある追放モノのテンプレですね。

ここまでの流れを理解できると、追放モノが流行ったのは単なる偶然などではなく、必然であったことがわかります。


代表作としては「真の仲間じゃないと勇者のパーティーを追い出されたので、辺境でスローライフすることにしました」、「勇者パーティーを追放されたビーストテイマー、最強種の猫耳少女と出会う」が挙げられ、それぞれ2017年と2018年に連載が開始された作品です。


挿絵(By みてみん)




【まとめ + おまけ】

異世界転生/異世界転移 をランキングから除外したことにより、確かに現実世界から異世界に主人公が移動するという描写は減りました。

しかしながら、いわゆる異世界テンプレはその姿形を変えつつも、現地主人公たちの活躍によってバッチリとランキング上位に残り続けました。


そして、ちょうどこの時期から「なろう系」という言葉が一般に定着し始めます。


挿絵(By みてみん)


それ以前では小説家になろうの作品といえば 異世界転生/異世界転移 であり「影の実力者になりたくて!」や、「ヘルモード」など、依然として人気のジャンルではありましたが、そこに現地主人公も混ざることにより、転生転移関係なくとにかく舞台が異世界で主人公がテンプレを踏襲していればなろう系呼ばれるようになりました。


ちなみに、追放が流行り始めたこの2018年には「おっさん」というワードも一時的にですが流行します。

Webという技術が世に広まってからだいぶ月日が経ち、ユーザーの年齢が全体的に上がってきている、ということがこういったデータから読み取ることができます。


挿絵(By みてみん)

ストーリーエディタ NoveLand の方もよろしくお願いします!


https://novel-land.com/


執筆以外の作業時間をなくし、創作に充てる時間を最大化できるようなエディタを目指して作っています

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