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異世界小説の歴史  作者: Ryuon
第一章
2/6

異世界小説の原点 「異世界転移」

【異世界小説で一番最初に流行したのは異世界転移】

まず、事実だけを最初にお伝えすると、異世界小説のなかで一番最初になろうのランキングに載るようになったのは異世界転移です。


時期としては2000年代後半になり、小説家になろうの代表作としては「ウォルテニア戦記」などが挙げられ、2009年に連載が開始されこの記事の執筆時点でいまだに総合累計ランキング172位となっています。


また、この時代の異世界転移の特徴として重要な点は、一人で転移しているということが挙げられます。


これらについては以下の過去ランキングのデータから各作品いついて追ってみるとわかり、実際異世界転生は2010年代前半になるまでほとんどありません。


https://w.atwiki.jp/narou_matome/pages/25.html




【異世界テンプレを形成する上で重要な観点となる創作コストパフォーマンス】

異世界転生、悪役令嬢、追放ものなど、これらの異世界小説のテンプレには必ず共通して当てはまることがあります。

それは、いずれも創作コストパフォーマンスが高いということであり、以下の側面があります。


- 専門的な知識を必要とせず、世界観の説明が簡単にできる(コスト)

- 深く工夫を凝らさなくてもそれなりに面白い(パフォーマンス)


要するに、作りやすくて面白いということです。


まず、前提としてWeb小説を投稿する作者のほとんどは素人です。

ミクロな視点で個々の作品を見れば、転生という発想は昔からあったとしても、マクロな視点で見ればなんの助走もなしにその発想ができる作者は少数であり、その少数の作者がランキングの上位に食い込み、読者や作者の間で少しずつ常識となることでテンプレが形成されると僕は考えています。


先ほど 異世界転移 -> 異世界転生 という流れについて紹介しましたが、それぞれは言い換えると以下のようになります。


1. 異世界転移 (異世界にオリジナルの主人公が迷い込む)

2. 異世界転生 (異世界にオリジナルの主人公の魂が迷い込む)


まず最初に主人公が現実世界の状態のまま異世界へと移動する異世界転移が流行り、その次に主人公の魂だけが移動し赤ちゃんや人外として生まれ変わる異世界転生が流行った。


さて、皆さんはこれを見てどう思うでしょうか?

ひょっとしたらこう言えるのではないでしょうか?


「単純なアイディアから、より複雑なアイディアへと変化してきた」


仮にこの仮説が正しいとしましょう。

であれば、異世界転移よりもさらに前により単純な発想によって作られた作品群があるのではないか?

僕はこれを最初に見た時にそう思わずにはいられませんでした。




【異世界転移の起源はゼロの使い魔の二次創作?】

では、異世界小説の起源はいったいなんなのでしょうか?

その答えはネットで検索すると簡単に様々な情報がヒットします。その中でも、異世界小説はゼロの使い魔の二次創作が大元であるといわれることが多いです。


https://togetter.com/li/798571

https://natalie.mu/comic/pp/versus02

https://ncode.syosetu.com/n5028db/


確かに、ゼロの使い魔の冒頭部分の異世界召喚については現在の異世界転移の作風ととてもよく似通っており、アニメが放送されたのが2006年なのでタイミング的にも異世界小説の先駆けという表現もあってはいそうです。

しかしながら、僕自身がWeb小説の世界に足を踏み入れたのは2015年ごろであり、二次創作の作品にはあまり興味がないため、当時の様子についてまったくもって知りません。

そのため、ゼロの使い魔が異世界小説に対して大きな影響を与えたと当時を知っている人に言われたとしても、それを意見として理解はできるけど主張として納得することはできずにいました。


もう少し誰の目で見てもはっきりとわかるような証拠はないのだろうか、そう思った僕はさらに調査をすすめました。

そして、当時の様子について調べていく過程で、とある単語を見つけることになります。


それは「オリ主」という単語です。


オリ主とは、オリジナル主人公の略で おりしゅ とか おりぬし と読み、二次創作作品に主人公として登場する、書き手のオリジナルキャラクターのことを指します。

(基本的には一次創作で使われることはないのですが、小説家になろうでは基本的に二次創作が禁止されていることもあり、誤用でオリ主というキーワードが一次創作で使われている作品が散見されます)


さて、このオリ主という単語ですが、なぜ僕がこの単語に注目したのかと言うと、先ほど僕が提唱した「単純なアイディアから、より複雑なアイディアへと変化してきた」という仮説にドンピシャで当てはまるからです。


というのも、すでにある程度設定が作られており、読者に世界観を説明する必要もないため創作コストが低く、その設定は商業的に成功している程度には面白さが担保されているため、とても単純な発想で高い創作コストパフォーマンスを発揮できます。


先ほど紹介した転移と転生の流れにオリ主加え、創作コストが低い順に並べると以下のようになります。


1. 二次創作のオリジナル主人公 (既存の作品の世界にオリジナルの主人公が迷い込む)

2. 異世界転移 (オリジナルの異世界にオリジナルの主人公が迷い込む, 2000年代後半)

3. 異世界転生 (オリジナルの異世界にオリジナルの主人公の魂が迷い込む, 2010年代前半)


ここで、もしも仮にゼロの使い魔のアニメが放送された時期の2006年と近い時期にオリ主という二次創作のジャンルが流行していたということが証明できれば、オリ主がゼロの使い魔の世界に召喚されるという二次創作の描写は一次創作にも大きく影響し、先ほど紹介したウォルテニア戦記のような異世界召喚という異世界転移の作品が大きく生み出されるようになった要因ということがいえることになりそうです。


ではオリ主という単語がいつ頃流行っていたのか、グラフを見てみましょう。

これには Google Trends というサービスを使います。

Google Trends はあるワードがいつ頃にどれくらい検索されたのかを調べることができ、複数のワードを追加することでそれぞれのワードの人気度合いを比較することが可能です。

この Google Trends に「オリ主」「ゼロの使い魔 ss」「異世界 小説」と入力してみた結果が以下になります。(ssは二次創作という意味を持ちます)


挿絵(By みてみん)


これをみると「ゼロの使い魔 ss」「オリ主」「異世界 小説」という順序になっていることがわかります。

「ゼロの使い魔 ss」というワードはアニメが放送された2006年7月に一気に伸びていますが、一方で「オリ主」というワードは概念なので登場してから言葉が定着するまではある程度のラグがあったことが予想されます。


つまり、オリ主という概念がジャンル化するほどに活発に作品が作られていた時期とゼロの使い魔の二次創作が流行していた時期はほぼ同時期であったということ、しかもその時期は異世界転移が流行する直前の時期であったということが言えそうです。


これにより、ゼロの使い魔が異世界小説の起源である、という当時を知る先人たちの主張についても納得ができそうです。



【補足】

ここまで、小説家になろうを中心に語りましたが、実は2000年代にWeb小説投稿サイトとして覇権を握っていたのは小説家になろうではなくArcadiaという掲示板サイトでした。


挿絵(By みてみん)


また、現在のなろうの原型ができたのは大幅なリニューアルが行われた2009年9月末のことであり、この時点ではまだランキングはありません。


挿絵(By みてみん)


2010年末に、総合評価の高い順検索結果から、現在のような日間/週間/月間/四半期ランキングの形式となり、人気の作品によりアクセスがしやすくなりました。


https://blog.syosetu.com/index.php?itemid=496


つまり、この頃の異世界小説は小説家になろうの外側で醸成されていき、徐々に小説家になろうへと浸透していったのだと言えそうですね。

ストーリーエディタ NoveLand の方もよろしくお願いします!


https://novel-land.com/


執筆以外の作業時間をなくし、創作に充てる時間を最大化できるようなエディタを目指して作っています

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