表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

小説家になろう 冬の童話祭 参加作品集

ぬいぐるみたちとクリスマスのよぞら

作者: 水渕成分

「小説家になろう 冬の公式企画 童話2023」参加作品です。

 今日はクリスマスイブです。


 ピンクのウサギのぬいぐるみのウサはうれしいようなさびしいような気持ちでした。


 ウサは今日のクリスマスイブに4さいの女の子、まいちゃんにプレゼントされることになっています。


 まいちゃんは、なきむしで、かけっこはいつもさいごになっちゃうけど、とってもやさしい女の子。


 ウサは、まいちゃんに会えることをとてもたのしみにしています。


 だけど、そのときにはウサはいまサンタの国で、いっしょにいるたくさんのぬいぐるみたちとおわかれしなければなりません。


 ウサはそれがさびしいのでした。




 そんなとき、白いネコのぬいぐるみシロが話してきてくれたのです。

「ウサちゃん。ウサちゃん」


「なあに、シロちゃん」


「ウサちゃんは4さいのまいちゃんのところにいくんだよね」


「そうだけど」


「シロはおなじ4さいのくみちゃんの家にいくの。くみちゃんとまいちゃんはおとなりどうしの家でお友だちなんだって。だから、にんげんの国でもまた会えるよ。きっと」


 ウサの顔はぱあっと明るくなりました。にんげんの国でもシロちゃんに会えるならさびしくないでしょう。




 でも、12月24日の夜になってもサンタさんはぬいぐるみたちのへやにきません。


 そろそろいかなければいけないはずなのに。


 ぬいぐるみたちがそうおもっているとトナカイさんがやってきました。


「あ、トナカイさん」


 ぬいぐるみたちは、ほっとします。トナカイさんがきたということは、もうしゅっぱつなのでしょう。




 ところがトナカイさんは、うかないかお。

「みんなごめんね。今日はみんなをつれていけない」


「ええっ」

 ぬいぐるみたちは、おもわず声をあげます。

「どうしてなの?」


「サンタさんがみんなのことを作るときにはりきりすぎて、こしがいたくなっちゃったんだ。だから、そりにのれないんだよ」


 ぬいぐるみたちはおもいだします。サンタクロースのおじいさんは、それはそれはいっしょうけんめい、ていねいによい子たちにプレゼントするためのぬいぐるみたちを作っていたのです。


「だから、こしをいたくしちゃったのかあ」


「でも……」


 ウサはまいちゃんの顔をおもいうかべました。


 なきむしのまいちゃんのことです。クリスマスのプレゼントにウサがいけなくなったらたくさんないてしまうことでしょう。


 ウサは少しだけかんがえてからトナカイさんにいいました。

「トナカイさん。サンタさんはむりでもトナカイさんはそりを出せますか?」


 トナカイさんはちょっとびっくりしたようですが、答えてくれました。

「それは、ぼくだけなら出せるけど」


「では、そりを出してもらえませんか? わたしたちはお空からよい子たちのところにとびおりていけばいいんです」


「ええっ」

 トナカイさんもほかのぬいぐるみたちもびっくり。


 でも、シロがいってくれました。

「いこう。みんな。わたしもくみちゃんをなかせたくないんだ」


「うん。いこう」

「いこう」

 ぬいぐるみたちはみんなそういったのです。


 トナカイさんはかんしんしながらもいいました。

「うん。でも、そりはお空の高いところをとおるよ。だから、高いところからとびおりなければいけない。だいじょうぶ?」


「だいじょうぶです」

 ウサもほかのぬいぐるみたちもそういったのです。


 


 シャンシャンシャン シャンシャンシャン


 トナカイさんのひくそりは、星でいっぱいのクリスマスのよぞらをすずをならしながらはしっていきます。


「ついたよ。ここが君たちのいくにんげんの国だよ」


 そういってトナカイさんはそりを止めます。


 そりから下をみたウサはちょっとふるえます。おもったより高い。


 そんなウサの手をシロはとります。

「ウサちゃん。ああいったけど、わたしちょっとこわいんだ。いっしょにとびおりてくれるかな?」


「うん」

 ウサはおもいました。シロちゃんがいっしょならこわくない。


 そして、ふたりはてをにぎりあったまま、とびおりたのです。




(ほんとうにどうしちゃったんだろう)

 まいちゃんのママはおもいました。

(もうすぐ12月24日が終わっちゃうのにサンタさんはこない。きょねんはずっと前のじかんにきてくれたのに)。


 ママの前にはまちくたびれてねてしまったまいちゃんがいます。目のまわりには、ないてしまったなみだのあとがあります。


(これじゃあ、まいちゃんがかわいそう。ううん、それよりもサンタさんになにかじこでもあったんじゃないかしら)


 しんぱいするママの目の前でよぞらが大きくひかりました。


「え?」

 ママがおどろくまもなく、いっぽんのひかりがまいちゃんのへやにとびこんできて、まくらもとの大きなくつしたに入ったのです。


 おそるおそるくつしたの中をみるママ。そこにはかわいらしいピンクのウサギのぬいぐるみが入っていたのです。


(よかった。まいちゃん。メリークリスマス)。

 ママはほっとして、えがおになりました。




 つぎの日、ウサをだいじそうにだきかかえたまいちゃんは、くみちゃんに会いました。

「くみちゃん。メリークリスマス。この子はウサちゃんです。よろしくね」


 くみちゃんもいいました。

「まいちゃん。メリークリスマス。この子はシロちゃんです。よろしくね」


 ウサとシロはことばに出しませんでしたが、こころで話しました。

(よかったね。シロちゃん。メリークリスマス)。

(よかったね。ウサちゃん。メリークリスマス)。



 そのころサンタの国ではトナカイさんがサンタさんと話していました。

「サンタさん。ぬいぐるみたちがみんないい子で、たすかりましたよ」


「そりゃみんな、わしがたんせいこめて作った子たちじゃもの。いててて」


「ほらほらむりしないで。らいねんのクリスマスまでにはこしをなおしてくださいよ」


 トナカイさんはサンタさんのこしをさすりながらおもいました。

(ぬいぐるみたち、ありがとう。そして、にんげんの子どもたち、よかったね。メリークリスマス)。


読んでいただきありがとうございます。


挿絵(By みてみん)

「君の元へ」

イラストレーション ウバクロネ様 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] とても素敵な童話に心が洗われるようでした。 優しさしかない……! ウサちゃんの勇気、まいちゃんへの気持ち、そしてウサちゃんもひとりじゃないから頑張れるのですよね。 サンタさんの無事を心配する…
[良い点] サンタさんの言う通り、ぬいぐるみたちが本当にいい子で良かったです。 そっかー。子どもの頃、あるクリスマスから突然プレゼントがなくなったのはサンタさんの体の具合が悪くなったからなのですね!(…
[一言] ウサちゃん、すごい! 高所恐怖症の私は途中で心臓が止まってしまいそうです。でも、待っていてくれる大切な友達のために頑張ったんですよね。 そしてサンタさん(;つД`) 頑張りすぎです~。ずっ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ