第3章
第3章 愛の呼ぶ声に
“好き“
ただそれだけの言葉に
いくつの人生
いくつの愛の形があるんだろう
結月
俺たち 気づいたら
愛し合っていたんだよな
結月
俺は君のことが……
12月に雪が降るなんて、
京都では珍しいことらしい。
俺と結月は、いつものように、
いつもの並木道を歩いていく。
「結月?手、冷たくない?」
結月はこくん、と頷いた。
「はんぶんこ、しよっか」俺は自分の左の手袋を、結月に渡した。
結月がそれを左手にはめたら、今度は右手を握ったまま、俺のコートのポケットに入れた。
「ねぇ はると」
「どうしたの?結月」
「おにいちゃんとも、よくこうしてた」
結月が兄のことを口にしたのは、初めてだ。
俺は驚いた。
「そっか」
「おにいちゃん、おかあさんがこわいからしんじゃったのかな」
「どうして?」
「ぴあのひけないと、おかあさんおにいちゃんのことおこるの。ゆづきはさいしょからひけないから、おかあさんもあきらめたの」
結月は言った。
「んー。どうだろうね。でも、ゆづきには、はるとがいっしょだよ?」
「うん」結月は霜で顔を赤らめていた。早くバスに乗せてあげたい。
「はると、あのね」結月は言った。
「どうしたの?」
「はると、ゆづきね……
はるとがすきだよ。けっこんして?」
俺は自分の気持ちがわからぬまま、足を進めた。
「結月、ごめんな……それでも俺は、結月と一緒にいたいよ……」
俺は泣く結月の頭をずっと撫でていた。
結月の母から、結月が泣き止まないと電話が来たのは、その数時間後だった。
「陽翔くん、今日、結月と何かあったの?」
「実は結月に告白されて……自分も結月が好きになってしまって、それで……」
「陽翔くん、結月とはもう会わん方がいい。今まで送り迎えかんにんな。これまでの御礼は申し訳ないけど、口座振り込みでええやろか?」
「そんなの……いいです………………」
俺は電話口で涙を堪えていた。