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序章
すべて、灰になってしまえ。
ぼくはひとを殺してしまった。
そのひとは頭から赤い液体を流して倒れていた。自分がやったことだと、分かっているはずなのに、理解できなかった。それが、とても、恐ろしかった。
言い訳にしかならないけれど、だって、いつもぼくのことをいじめてくるじゃないか。殺意なんてなかったじゃないか。揉み合いになっただけじゃないか。だって、自分が、
ひとをころすような人間なんて、しんじたくないじゃないか。
―――――――どこかとおくに行きたい。警察も先生も親もこない、どこかへ。そこで、自殺しよう。もう逃げることもできないだろうし。
…街から遠ざかって森のほうへ歩いてきたけど今ここはどこだろう。どれくらい歩いただろう。
日が暮れてきた。まるでお伽話の魔女がでてきそうでなんだか怖くなってきた。ぼくにとっては、お伽話の魔女よりも、ひとを殺した自分のほうが怖いはずなのに。
ふと、だれかの鼻歌が聞こえた。こんな時間に?こんな場所で?
鼻歌がするほうに行くと開けた場所にでた。
そこには、とても、立派な桜の木と、灰色の髪に金色の目をした少女が立っていた。