其の八、南の島のかくれんぼ
忘れた思いで。
透き通る青い空、キラキラと光る波間、塩気を含んだ浜風がやけに肌にベタつく。
海野真理と妹の凜は、両親のお盆休みの帰省で沖縄の津堅島へやって来ている。
五歳と三歳の姉妹は浜辺で貝殻を集めて遊んでいる。
おじいとおばあが、ニコニコしながら愛孫を見ている。
「ほれ、もう日が暮れたさー、帰ろうか。お父さんとお母さんが心配するさー」
おばあが、夢中で遊ぶ2人の視線に合わせてしゃがむ。
「いや、まだあそぶ」
「りんも」
2人は言う事を聞かない。
「困ったさー」
おじいは苦笑いをして、空を見あげた。
「!、そうさー、夜、花火するさー」
「はなびー」
真理はその言葉に目を輝かせる。
「は・な・び」
凜ははじめて聞くその名前に首を傾げる。
「りんちゃん、はなびって、とても、きれいなんだよ」
「りんもするー」
「よしよし、じゃ、まず家に帰って、夕ご飯を食べて、みんなで花火するさー」
「するー」
「するー」
おじいの言葉に真理と凛は両手をあげて喜んだ。
20日宵闇は月がでない闇の日。
浜辺で真理と凛は、両親、おじい、おばあが見守る中、花火を楽しんだ。
「きれいだね~」
「ね~」
2人はニコニコ、夢中で花火を楽しむ。
はじめは花火に驚いて、泣いていた凜も、目を輝かせ自ら花火を手にしている。
真理が気づくといつの間にか、隣に女の子がしゃがんで花火を見ていた。
「わー」
「これ、ワコ」
「おばあ、花火みたい~」
「安里のばあ様とワコちゃんかあ、いいさ~いいさ~、ささっ、一緒に花火するさ~」
おじいはワコに花火をすすめる。
花火に照らされ真理の笑顔を浮かぶ。
「いっしょにしよ」
「うん!」
みんなは夢中で楽しんだ。
真理はちらっと視線を浜辺に置いていてあるボートへ向けた。
「あかいかみのおとこのが・・・」
ワコは花火から目をそらさずに言った。
「それはね。キジムナー」
「きじむなあ?」
「うん」
それから真理とワコは仲良くなり、毎日一緒に遊ぶようになった。
おままごとにかくれんぼ、おにごっこ、日が暮れるまで二人は遊んだ。
そんなある日のこと。
真理とワコは小さな身体で冒険をした。
干潮の海を渡り、小さな島を小さな子どもが冒険をしたのだ
「真理がいない!」
夕刻を過ぎても帰って来ない母親が心配して、真理を探しに行くがどこにもいない、血相を変えて、家に戻ると、おばあに凜を預け旦那とおじいで探しに島を探し回った。
2人が小さな島で夢中で遊んで帰ろうとすると、陸地が消えて海になっていた。
離れた場所に島が見える。
「どうしよ。ワコちゃん」
「うーん、なんとかなるさー」
「ならないよ」
真理は砂浜にしゃがみ込み、しくしくと泣き出した。
「ごめん」
ワコが隣に寄り添いしゃがむ。
「ううん」
首を振る真理に、ワコは砂浜の砂をじっと見つめ集める。
「はい」
「これは?」
「ほしのすな」
「わあ、ちいさなほしのすな」
真理は目を輝かせて、小さな星砂を見つめる。
日が暮れはじめると、2人は不安になる。
「しおのみちひきで、いまはうみができているけど、またつながるよ」
「それっていつ?」
「うーん」
真理の問いかけに、ワコは首を傾げる。
「明日の朝っ!」
やけに高い男の子の声がする。
「あなたは」
真理は舟の影に隠れてみていた赤髪の男の子を思いだす。
「きむじい」
「まりちゃん、キジムナーよ」
「そうだった」
「俺と遊ぼう。夜明けまで」
「・・・うーん」
「楽しいぜ」
「うん」
「いいよ」
2人と1人は時も経つのも忘れて遊んだ。
遊び疲れた頃、海の彼方から陽がのぼりはじめる。
「あ~楽しかった」
キジムナーは満足気に言う。
「うん」
「おもしろかったよ」
2人は笑顔で返した。
「・・・そうか?嬉しいなあ」
キジムナーは身体をくねくねさせ喜んでいる。
「ほら」
キジムナーが指さすと、潮が引き、道が出来ていた。
「またな」
振り返ると赤髪の男の子はいない。
真理とワコは手を繋いで、海の道を歩き島に戻った。
探し回っていた親に発見されると、2人は親にこっぴどく叱られた。
2人は夏をまだまだ島を遊ぶ。
数日するとキジムナーと遊んだことも忘れてしまった。
真理たちの幼き頃。




