其の六、未確認生物おにごっこ
ワレワレハ・・・。
狭い三角公園で、子どもたちが散った。
「10っ!もういいかーい!」
智哉は大きくて低い声で、みんなに言った。
今日のかくれんぼは、今は絶滅しつつある子ども会の親睦を広げる大人たち主導の遊びで、智哉は最年長の小6、周りの子たちはみんな年下だった。
しかも全員合わせても5人。
(楽勝だな)
「まあだだよ」
「ちょっとまってー」
慌てる低学年の子たち。
「早く、上手に隠れろよ~」
お兄ちゃん風をふかして、彼は余裕をみせた。
「もういいよ」
「よーし、行くぞ」
智哉は一気に駆けだすと、次々にみんなを見つけ出す。
一人・・・二人・・・三人・・・四人・・・。
「みつかっちゃった」
「ちぇっ」
「おにいちゃんやるなー」
「もういっかい」
小さな子どもの羨望の眼差しに、お兄ちゃん智哉は得意満面だ。
「まてまて、もう一人いるだろ・・・そこっ!」
彼は草の茂みをかきわけた。
「ナゼ、ワカッタ」
それは銀色をした一般的にグレイ型と呼ばれる宇宙人がしゃがんでいた。
智哉は知っている。
以前、図書館で借りた「謎のみかくにん生物」という本で読んだからだ。
まさにそれは図解してあったそのものだった。
「あ、あの・・・」
「ナゼ、ミツケタ」
「・・・えっと」
智哉は後ろに手を回し、シッシッと手を払い、みんなに逃げるように伝える。
「どうしたの~」
呑気な子どもの声。
「ココナラ、バレナイト、オモッタノニ」
すくっと宇宙人が立ちあがった。
「うわっ」
「オマエノキオクヲケサネバイケナイ」
時が止まり、世界が暗転すると、上空に金色のUFOが現れた。
「オマエ、ツカマエル」
「いっ、いやだっ!」
智哉は目を逸らし振り返る。
みんなの動きが止まっている。
(ほんとう・・・本当なんだ)
全力で駆ける、駆ける。
「マテマテ~」
グレイの宇宙人は、地を滑るように彼を追いかける。
「いやだあ!」
「マテマテ~」
「うううう」
「ト・モ・ヤ」
智哉と宇宙人の壮絶な鬼ごっこが今はじまった。
かくれんぼからのおにごっこ。