其の二、かくれんぼ
全編、台詞でやってみました。
「僕があの娘に恋したのは、幼稚園年中のとき、みんながいる前でおもらしをして、真っ赤な顔で恥ずかしそうに泣いていたあの瞬間だった。僕がお嫁さんにする・・・絶対に、あれから20年が経つ。僕は・・・僕は決めた彼女に告白する。あの娘を僕のものにする」
「護身用に、念のためにナイフをもっていくか、もしかしたら、僕の彼女が恥ずかしがって、嫌がるかもしれない、そんな時にこれを見せれば役に立つだろう」
「僕は10年ぶりに外にでる。足がすくむけど彼女に会うんだ、告白するんだ」
「愛しています。僕と結婚してください」
「嫌です・・・私には愛する人がいます。誰ですか、あなた?」
「へっ、何?聞こえないよ、ちょっと何、言っているか分からないよ」
「あなた、頭おかしいの?」
「おかしい?・・・おかしいのは君の方だよ・・・だって、だって、僕と君は絶対結婚するんだから」
「何、言ってるの・・・この人」
「だから、結婚しよう」
「嫌っ!」
「また~恥ずかしがっちゃって、これ見て、見て」
「えっ・・・私を殺す気・・・」
「違うよ~恥ずかしがっている君が、これを見たら「はい」と返事してくれると思って」
「する訳ないでしょう!」
「じゃあ、しょうがないな~」
「やめて、やめてっ!誰か、誰かっ、助けて~!」
「あれ、どこに行くの、ちょっと待ってよ」
「ああ、そうか、鬼ごっこだね。幼稚園の時よくやっていたよね。君が鬼の時、僕を嬉しそうに捕まえたよね。でも今日は僕が鬼だね」
「はあ、はあ、はあ、誰か、助けて~!」
「邪魔するやつらは容赦しないよ。今日は僕とあの娘の大事な記念日なんだ」
「いや、いやっ、いやああああっ!」
「あははは、懐かしいね、待て、待て~!ちょっ、邪魔すんなっ!」
「はあ、はあ、助けて、助けてください!」
「あれれれ?見失ったぞ・・・ここは公園?そうか、今度はかくれんぼだね。昔、よく僕を見つけて嬉しそうに笑っていたよね」
(お願い・・・どっか行って・・・どこか)
「おーい、どこにいるの?」
(お願い・・・お願い・・・)
「どこかなーでておいでよー」
(絶対に助かる・・・あなた!)
「そうそう、君はよく・・・滑り台の下に隠れてたよね」
(お願いします!お願いします!)
「ほらっ、見いつけたー」
「きゃああああっ!」
「これで僕らは、ついに結ばれる・・・さぁ、一緒に逝こう」
「犯人の部屋から発見されたのは、結婚式の招待状でした。かねてから思いを寄せていた被害者に強い恋慕の情を抱いて犯行に及んだと思われます・・・ただ、被害者との接点は・・・実はありません。男が被害者を知った経緯は不明・・・しかしながら一方的な恋愛感情を持ったストーカー犯罪なのは疑う余地もありません」
「違うよ・・・僕らは本当の愛を貫いたんだ」
ストーカーより、ストリートキングでありたい(どっちも犯罪、笑)。






