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ヤンデレ彼女も異世界へ!  作者: 黄田 望
序章 【 異世界転移 】
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第9話 愛の鎖


 「今日も、良い天気だ」


 窓から見える晴れ晴れとした天気を眺めながら僕は誰もいない部屋で呟いた。

 ここは山奥にある一件の小さな家。

 この異世界へ召喚されて最初に出会った少女アンナが暮らしており、何故か一緒に異世界へと来てしまった恋人の由紀と一緒に居候という形で住まわせてもらっている訳なのだが。

 僕はこんな所でジッとしている訳には行かないのである。

 

 元の世界で命を落としてしまった僕は、女神様との契約により、この異世界で悪さをしている魔王を討伐すれば元の世界へ生き返らせてくれるという条件でこの世界にやってきた。

 恋人の由紀が共に来てしまったとはいえ、一刻も早くこの世界の現魔王を討伐して元の世界へ帰らなければならないのだが、それも今は出来ない状態である。

 ――え?

 何故出来ないのかって?

 フフッ。 よくぞ聞いてくれました!

 なぜなら僕はッ!


 「その恋人の由紀に彼此(かれこれ)1週間も軟禁されているからです」


 誰もいない家で、僕は涙を流しながら呟いた。


 ◇ ◆ ◇ ◆


 さて、状況を整理しよう。

 このような事態になったのは忘れもしない一週間前。

 街にある冒険者ギルドで冒険者証明書なる物を発行したのがすべての原因だ。

 冒険者証明書には名前だけでなくその人のレベルと所有しているスキルまで記載されており、そのレベルとスキルによってギルド側が発注できるクエストを見定めるという制度となっていた。

 しかし、それが僕にとっては最悪の結末が待ち受けていた。

 僕のスキルは『ハーレム』。

 彼女がいる身としてはこの上ない厄介なスキルだと分かる。

 普通これはあれでしょ。

 恋人がまだいないモテる主人公キャラが付与されるスキルだろ?!

 

 「何故(なにゆえ)に恋人がいる僕にそのスキルを付与させたんですか女神様!!」


 今はここにいない天界にいるであろう女神に僕は心の底から憎んだ。

 ただ、本来であれば恋人がいるとは言えここまで女神様に憎む気持ちなど早々湧かない物だという事も自負している。

 これは個人の意見だが、恋人がいるとは言えモテるという事は男にとって嬉しい事に変わりはないはずだ。

 例え恋人一筋で紳士な男であっても、嬉しものは嬉しい。


 だが、し・か・し!?


 このスキルは僕にとって最悪なジョーカーだと言えるだろう。

 その理由が・・・彼女という存在である!!


 「ただいま~!」


 ガチャッと両手に袋一杯に食材を手に持って帰ってきたのが僕の恋人の最上由紀。


 「いや~買った買った。 すごく買いましたね奥様!」

 

 そして由紀に続いて入ってきたのは、これも同じく両手に多くの荷物を持った家の主であるアンナ。


 「ごめんねアンちゃん。 ついてきてもらって。」

 「いえいえ大丈夫ですよ奥様~! 私も同じ歳くらいの女の子と買い物なんて初めてだったからすごく新鮮でした!」

 「フフっ! アンちゃんってば広場で売ってたアイスを見ると私の手を引っ張るからビックリしちゃった!」

 「あ~ッ! 奥様それは言わない約束じゃないですか~!!」

 「あははっ! ごめんごめんッ!」


 家に帰ってくるなり美少女2人が楽しそうに会話をしている光景はとても仲睦まじいものだ。

 しかも元の世界では人当りだけはよかった由紀だったが、こうして笑顔で誰かと会話をしている所はあまり見ない。

 こうして楽しそうにアンナと会話をするのも珍しく同性のアンナに心を許している証拠だ。

 その事に関しては僕はとても嬉しい気持ちで一杯だ。


 「ただいま正樹君!」

 「あぁ、お帰り由紀ちゃん。 それにアンナも。」

 「ハイッ! ただいま戻りました!」


 荷物をテーブルに置くと由紀は窓際に立っていた僕に抱き着き胸に顔をうずめてくる。

 これはもう元の世界から彼女からの挨拶だ。

 何処でも僕を見つけるとすぐ抱き着いてくるのだ。


 「あのね正樹君! 今日はねとても良いお肉が売ってたから買ってきたの! 今日は鍋にしようね!」

 「鍋か。 それは今から楽しみだ」

 「フフフッ! 首を長くして待っててね!」

 「うん・・・それよりも由紀ちゃん」

 「なぁ~に正樹君?」

 

 満面の笑顔で僕の顔をジッと見る由紀に正樹はドキッと胸を高鳴らせながら精一杯の笑顔でこういった。


 「この首の鎖、とってくれない?」

 「やだ」


 さっきまでの可愛い笑顔は消え、無表情で即答された。


 「それじゃあ夕飯作ってくるね! 行こ、アンちゃん!」

 「は、はいッス!」

 

 軽やかな足取りで夕飯を作りに向かった由紀に、あとから由紀の跡についていったアンナは申し訳なさそうな表情で小さくお辞儀をして行った。


 「待って! お願い由紀ちゃん! この鎖取って! 由紀ちゃぁぁぁぁんッ!!?」


 無常にも窓際に置いて行かれた僕は鎖でつながれた首輪を外そうともがく。

 由紀のスキルである『神の権限』は由紀が思った事がそのまま実行されるチートスキル。

 そして僕はそのチートスキルで由紀の許可なく家どころか窓際から離れる事が許されず更に保険で首に鎖を繋がれたのである。

 その理由が僕のスキルが関係しているからだ。

 僕のスキル、ハーレムは道行くすべての女性から意識されるというスキルらしく、街に出たらあらゆる女性に口説かれた。

 その光景を見た由紀はすぐさま僕はアンナの家に幽閉。

 更には首輪もつけて軟禁状態へと発展した。

 そして彼女は首輪をつけた僕を見て、こう言った。


 ―――これで正樹君は一生私だけのものッ!


 「誰かぁぁぁぁああああ!! 助けてくださぁぁぁあああああいッ!!」

※トイレは鎖が伸びるギリギリの所にあるそうです。

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