第68話 依頼書 ①
時は少し遡り小さな街にあるギルド支部の一室――。
「・・・ん? ねぇ、この依頼書はなんて書いてあるの?」
ギルドの事務所では最新のクエストから古いクエストまで多くの依頼書の山が机の上に制圧しており、少しバランスを崩しただけで雪崩のように崩れ落ちてきそうなほど高く積み上げられている。
そんな中、山積みとなった依頼書をランク別に整理していた由紀が気になる依頼書を見つけた。
この世界の文字はまだ全く理解できていないが、これだけの依頼書の中で同じような依頼内容とランクを見ていれば大まかな文字は分かるようになっていた。
「あ~? どれ?」
しかしすべての文字を読める訳ではない為、由紀は依頼書の山に埋まっていたギルドの管理職をしているギルド職員のグレンがやつれたような顔で床にまで散らばっている依頼書を大雑把に端へよけながら由紀の持つ依頼書を手に取る。
「これまた懐かしい依頼書が出て来たな~」
「なんだ。 最近の依頼書じゃないのね」
「あぁ、これは俺がまだ冒険者やってた時に発注された依頼書だな。 確かにこれも子供の捜索が依頼されて結構大がかりな事件にもなったから覚えてるよ」
「事件?」
「そう。 この依頼で捜索されていたのはまだ齢10歳ほどの幼い少女だったんだ。 だがその子が見つかる事はなかった」
「それは、確かに大変な事件ね・・」
まだ10歳の少女となるとピースと同じ歳の子供が親から離れてしまったという事だ。
そんな幼い年齢の少女がどれだけ探し回っても見つかる事がなかったとなれば、確かに大がかりにもなるだろうと由紀が考えているとグレンは由紀の考えている事を察したようにゆっくりと顔を横に振った。
「大きな問題になったのは少女が見つかった事だけじゃねぇ。 それ以上に大変な事があったから大がかりになったんだ」
「子供が行方不明になった事以上に大きな問題って一体なにがあったの?」
それはちょっとした興味本位の質問だった。
グレンが冒険者時代だと言えばすでに10年ほど前の事件の事だろうと考えた由紀はすでに昔の事件だと認識しながら軽い口調での質問だった。
しかし、その質問をした直後に見せたグレンの表情に由紀は少し反省した。
グレンは今にも泣きだしそうなほど苦痛な表情を浮かべていたのだ。
「この事件の大きな問題となったのは2つ。 1つはこの依頼書に書かれてある10歳の少女が行方不明となった事。 魔術師や多くの騎士達が捜索を試みたが結果的に1年も続けて見つける事がなかった」
説明をしながら床に落ちた依頼書を踏まないように避けながらグレンが向かった先は普段事務作業で使用しているデスクの引き出しだ。
デスクの上とは違い引き出しの中身はしっかりと整理されているようで、グレンは探す素振りも見せずに1枚の手帳を取り出す。
「そしてもう2つ目の問題となったのがこれだ」
グレンは引き出しから取り出した手帳から、挟んであった1枚の文字が書かれたある紙を手渡してきた。
文書の作りから恐らく新聞のような物だろう。
「渡されても私文字が読めないんだけど。 なんて書いてあるの?」
「【非人道的創造事件】 その記事にはとある魔術師が黒魔術を使用してある実験を繰り返して行われていた。 その実験というのが簡単に言えば神を創造するというものだった」




