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ヤンデレ彼女も異世界へ!  作者: 黄田 望
第二章 【 魔王と神 】
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第65話 部屋の中


 「「 おぉ~! 」」


 人気の少ない場所で営業されていた宿泊施設で一泊する事になった正樹とアンナ、そしてすでに静かに寝息を立てているピースは一室の部屋に入って圧巻としていた。


 「すごいですね! 入り口からではあまり分かりませんでしたが部屋の中はとても設備が揃っています!」

 「あぁ、冷蔵庫?の中にも食料や飲料水も揃ってるし、風呂も足が広々と伸ばせるほど広い!」

 「はい! そしてこの大きなベッド! もふもふ柔らかです!」

 「・・・あぁ・・・ベッド・・ね」


 部屋の中にあったベッドはシングルベッドではあるが丁度大人が2人並んで寝られるくらいの広さがある。

 そしてベッドの周辺だけ漂う色気ある雰囲気を見て風呂場を覗いていた正樹は徐々に心臓の音が大きくなっていくのを感じる。


 (まずいまずいまずいまずいまずいッ! これは本当にまずい! さっきは部屋の内装が想像以上に豪華だったから一瞬忘れてたけど、やっぱりここ―――ラブホだよ!!)


 一旦落ち着こうと冷蔵庫らしき箱から水を取ろうとすると、水に隠れて奥には精力剤らしき握りこぶしが描かれた飲み物が用意されていた。


 (だだ、大丈夫だ! 幸いアンナはここがただ寝泊まりする場所だと思ってくれていることだしここで僕が変な事さえ言わなければ一晩くらい何事もないはず!!)


 プルプルと緊張から出る震えを何とか抑えようとしながらコップに水を注ぎ飲み干す。

 

 (ふぅ、これで少しはおちつ―――)

 

 「正樹様正樹様! 見てくださいこれッ!」

 

 煩悩を追い払おうと1人で必死に戦っている最中、ピースをベッドに寝かし終えたアンナが子供のようにはしゃいだ声を出しながら正樹に駆け寄ってくるのが背中から感じ取れる。


 「ん~? どうかし・・ってぇええ!!」

 「わわ、正樹様! 少し声量を押さえてください! ピースちゃんが起きてしまいます!」


 少し慌てた様子で静かにするように人差し指を口に当てて声量を落とすように指示するアンナに対して、正樹の脳内ではすでにそんな事は右耳から左耳へと過ぎ通って行ってしまっていた。


 「ア・アァァあああアンナッ?! 何その恰好ッ!」

 「はい? 何か変ですか?」


 正樹の動揺した様子に心配そうに自分の恰好を確認するアンナはその場でクルッと回って見せた。


 「いやッ! へ、変と言うかむしろ似合ってると言いますかなんといいますかッ!」

 「そ、そうですか? あはは、改めて似合ってると言われると少し照れてしまいますね」


 照れくさそうに少し頬を赤らめながら笑うアンナに正樹は思わず首を90度にまわして視界に映らないようにした。


 「どどど、どうしたのそのメイド服!!」


 このホテルに入るまでのアンナの服装はロングのスカートに動きやすそうなノースリープの上着だけの状態だった。

 しかし正樹が自分の煩悩と戦っていたものの数分の間に何故かメイド服となっていた。

 少し動く度にフワッと持ち上がらうスカートに女性の体躯が分かりやすいデザインである為か凹凸がしっかり見て分かるようなメイド服となっていた。


 「それがですね。 私にも何故この恰好しているのか分からなくて」

 「はい?! なんで??」

 「それがピースちゃんをベッドに寝かしたその後に気がついたらこの服装になっていて・・」

 「それにしては結構楽しそうにしていましたが?!」

 「へ? あぁその、実は一度このような服を着て見たかったと言いますか興味があったといいますか・・あはは」

 

 テンションが少しずつ落ち着き冷静さが戻ってきたのか、今度はアンナが顔を真っ赤にしながらメイド服のスカートを両手で握りしめる。


 一方、正樹は照れくさいや恥ずかしいを通りこして逆にまじまじとアンナのメイド服姿を凝視していた。

 ここ最近、第一に由紀の機嫌を損なわないようにする為どれだけ他の女性達が正樹に言い寄ってきても何も感じる事がなかったが、その原因でもある由紀は今この場にはいない。

 それが今までの緊張感が取れたのか目の前にいるアンナがいつもの数倍可愛く見えてしまっていた。


 (よくよく考えたらアンナも凄い可愛いんだよな。 歳もあまり変わらないし家事も出来て料理も出来る。 さらには元魔王という地位まで持っているという事は、かなりのハイスペック女子ではないのだろうか?)


 先ほどまでは視線も合わせなかった正樹がこの度は凝視してくる事で冷静さが完全に戻ったアンナは半分脳内でパニックを起こしていた。


 (わー! わー! わー! 正樹様すっごい見てくる! どこか変な所があるかな? それともやっぱり似合っていない?? ・・・う~~~ッ! 恥ずかしいッ!!)


 スカートを握りしめていた手が今度は両頬に当ててブンブンと顔を横に振り少しでも羞恥心を無くそうと必死に余計な事を考えないようにする。

 しかし、

 その必死な行動が逆に正樹の思春期の心境をかき混ぜる結果となる。


 (・・・これもしもナース服とかだったらすごく似合ってるかも・・・)

 

 そう思った瞬間だった。


 「・・・え?」

 「・・・へぁ?」

 

 ナース服は足元から一瞬で正樹が想い描いていて真っ白なミニスカナース服へと変化してしまったのだ。


 「な、なな、ななななな何これぇえええええッ!!」


 急にさらけ出される太ももに対してアンナは咄嗟にその場にしゃがみ込み身体を小さくする。

 故にアンナの全身ナース服が見れたのは1秒にも満たない短い時間ではあった。

 だがそこはやはり思春期の脳の力なのか、正樹の脳内ではアンナのナース服姿がバッチリと保存され何度も再生されていた。

 

 そして正樹は刺激が強かったのか顔を真っ赤にさせながら体を硬直させて鼻血を出していた。

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