表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヤンデレ彼女も異世界へ!  作者: 黄田 望
序章 【 異世界転移 】
6/142

第6話 奥様認定


 「そこを退いて正樹さん」

 

 鋭い視線で見下ろす由紀に、正樹は真剣な眼差しで相対する。


 「なんで退いてくれないの? なんで私の言う事を聞いてくれないの?」

 「・・・ここを退けば、君は彼女を殺すつもりだろ」

 「君の彼女は私でしょッ!!」

 「・・・うん。 ごめん、そうじゃない。 僕の彼女は君だけだ。」

 「そう。 正樹さんの彼女は私だけ。 だから、退いて?」

 「それは断る」


 僕の彼女は所謂ヤンデレだ。

 愛が重く自分以外の女性と会話しているだけでも浮気と疑い携帯の履歴も逐一確認する重症なヤンデレである。

 しかし、だからと言って毎回彼女の思い通りに正樹が言いなりになっているわけではない。

 ダメな事はダメだとハッキリ言えるのが由紀が正樹に惚れた要素の1つである。

 

 だからこうして、由紀に睨みつけられ猫のように震えて正樹の背中に隠れるアンナを守っている。


 「なんで? なんで退いてくれないの? なんでその女を庇うの? やっぱり正樹さんは私じゃなくてその泥棒猫の事が好きなのね。 そうなのね・・じゃあ、じゃあ・・・ッッ!!」


 由紀は床に膝から崩れ落ち、幼児のように大泣きし始めた。


 「うわぁぁッ! 正樹さんが浮気するぅぅうう!!」

 「いや・・浮気とかじゃなくて・・・」

 「じゃあ浮気じゃない証拠を見せて! 証明してよぉぉおおおお!!」


 正樹はとりあえず大泣きする由紀を優しく抱きしめる。


 「これで・・どうかな?」

 「まだダメぇえええ! もっと他に証明してぇええええ!!」

 「それじゃあ・・・」


 今度は抱きしめたまま由紀の頭を撫でる。


 「これで機嫌治った?」

 「・・・まだです。 もっと何か誠意を見せてください」

 「誠意・・・」


 そして正樹は一度抱きしめた由紀を放して視線を合わせる。

 しばらく見つめ合った2人は徐々に顔を近づけていく。


 「はぁ・・・わぁ・・・・へぁ・・・ッ!!」


 近づいていく・・のだが、さっきまで正樹の後ろで猫のように震えて怯えていたアンナが顔を真っ赤にして両手を顔で覆ってはいるが、指の隙間からバッチリと2人の様子を観察していた。

 それがどうも居心地が悪く正樹は途中でこれから行おうとした行為をストップさせた。

 何故かアンナは残念そうに肩を落とし、由紀は未だにいつまでも来ない唇を待つ。


 「由紀ちゃん。 その、ここでは・・ちょっと」


 ガーンッ!! っとあからさまにショックを受けた由紀はアンナ以上に肩を落とした。


 「それよりも、アンナさん。 君が魔王であるという話をもう少し詳しく教えてくれないかな?」

 「『元』魔王ですよ正樹様。 先ほども言った通り私は神との闘いに敗れ魔王としての力をほとんど失ってしまったのです。」


 アンナは去年まで魔王としてこの世界に君臨していたが、神が直接下界に降りて争いになったのだとか。

 その時の戦いで魔王としての能力を使い果たし隠居という形で人も近寄らない深い森の中で暮らすようになったという。


 「やっぱり正樹さん。 この女はここで殺してしまいましょう。 そして私と一緒に元の世界に帰りましょう。 そしてそしてッ! 先ほどの続きをッ!!」


 何処から取り出したのか由紀は包丁を手に持ち今にでもアンナに飛び掛かる勢いでいたが、包丁はその場ですぐに没収して動けないように肩を寄せる形で抱きしめた。

 それが嬉しかったのか由紀は頬を赤らめて正樹に体重をかける。

 

 「アンナさん。 僕はこの世界に魔王を倒し為にやってきました。 でも君が今の魔王ではないと言うのであれば、今の魔王は存在するのかな?」

 「一応私の優秀な弟が王座を継ぎましたが、それでも弟を倒しても大きな影響が起きる事はまずないですよ。」


 魔王を受け継いだアンナの弟は優秀と言えどまだ幼いらしく、弟を倒した所ですぐに別の魔王継承者が現れるだけだという。

 それなら一体どうすればいいのか。

 魔王を倒せば元の世界に生き返らせてくれるという話だが、魔王を倒しても別の魔王が誕生するのなら無限ループが発生するのでは?


 「正樹様が何故魔王という存在を倒そうとしているのか分かりませんが、そちらの()()がいれば何かしらの問題も解決するのでは?」

 「おく・・」

 「・・・様ッ!!」

 

 アンナの奥様という言葉に強く反応したのは由紀だった。

 

 「ちょっと泥棒猫。 今貴女なんて言ったの?」

 「だからその泥棒猫っていうのやめてください奥様! 私は泥棒猫じゃないです~!」


 可愛らしい仕草で舌を少し出すアンナであったが、急に近づいてきては両手を握ってきた由紀に怯え「ごめんなさい調子にのりましたぁあああ!」とまた涙目になる。


 「アンナちゃん。 貴女・・良い娘ね。」

 「あああああぁぁ・・えっ?」

 「ごめんなさい。 私、アンナさんの事、誤解していたわ。 貴女は人を見る目が誰よりもあると私は思う!」


 自分を正樹の恋人ではなくお嫁さん認定で見られた事が余程嬉しかったのか、由紀は先ほどまでとの態度と真逆に優しい笑顔でアンナを見る。

 それが逆にアンナにとって恐ろしいのか、ものすごい悪寒と鳥肌で固まってしまった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ