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ヤンデレ彼女も異世界へ!  作者: 黄田 望
第二章 【 魔王と神 】
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第53話 坊ちゃん

第二章、ここに開幕ッ!


どうぞお付き合いください!


 長期間続いた雨が止み、雨雲の隙間から太陽の日差しが地面に射し込む。


 「・・・止んだ、な」


 そんな雨があがったばかりの空を見上げる少年が1人、建物の最上階で立っていた。

 まだ年齢層に適さない大きなマントを羽織っているせいで地面に出来た水溜まりにマントが染み込んでしまっている。

 だが、少年はそんな事など気にする様子もなくただジッと空を眺めていた。


 「坊ちゃんッ!」


 そんな時に最上階の出入り口から両耳が長く知的な眼鏡をかけた声高い女性が鋭い目つきで少年を睨みながら近づいてくる。

 

 「シルフ・・」

 「まったく。 こんな所にいらしたのですね。 外に出る時は必ず私か別の者達に一言声をかけてくださいと何度も言っているではないですか!」


 シルフと呼ばれた女性は少年に近づくと水溜まりが出来た地面に気にする事なく膝をつき少年と目を合わせる。

 キツイ口調と鋭い目つきで誤解されがちの彼女だが、本来いるはずの場所に少年がいなかった事で心配して探し回ってくれていたらしい。

 少し乱れた呼吸で少年はすぐにそのことに気が付き少し肩を落として「ごめん」と小さい声で謝罪する。


 「・・・いえ、決して坊ちゃんが悪いわけではございません。 ただ、坊ちゃんに何かあったらと思い私も少し動揺していました。 どうかお許しを」


 シルフは落ち込む様子の少年に深く頭を下げて謝罪した。


 「それで、ここにはどのような用件で?」


 シルフの疑問に少年は再び空を見上げる。


 「虹を・・見に来たんだ」

 「にじ、ですか?」


 シルフの疑問な質問に少年は視線を空へ向けたまま頭を縦に頷ける。


 「空から降る雨が上がって太陽の日光が大気に反射して出現する七色の橋が空に発する現象だよ」

 「はぁ・・それは存じ上げていますが・・」


 聞きたい事はそういう事ではないという怪訝な表情をしながらシルフは今も空を見上げる少年の顔を見る。

 まだ10歳になったばかりである少年の顔はどことなくすでに大人びた表情を浮かべている。

 しかし空を見上げるその瞳はまだ幼げが残っており、まだ出現しない虹に対してまだかまだかと待ちわびたような視線を向けていた。


 「何故に、虹を?」

 「・・姉さまも、見ているかもしれないから」

 「・・・」


 少年の口からこぼれ出るように発せられた【 姉さま 】という言葉にシルフはそれ以上追及する事を止めた。


 「虹を見るにはこの天気じゃち~と無理だとオイラは思うぜ? 坊!」


 また最上階の出入り口から今度は男性の声が聞こえ少年は表情を変えずに振り向き、シルフはあからさまに嫌な顔を浮かべながら振り向きもせずに舌打ちをする。


 「おいおいシル。 同僚に対してその態度はどうかと思うぜ?」

 「フンッ。 貴様こそ我らが主の前でその態度はなんだ。 早々に(こうべ)を垂れ跪け」

 「え~? 嫌だけど?」

 「なッ!! 貴様ッ!!」


 シルフの言葉に真っ向から拒否した男性に対して胸倉を掴みかかろうとしたが、男性は簡単に避けて少年に背後に近づく。

 そして、水溜まりの中に浸かった少年のマントを持ち上げた。


 「頭を下に向けちゃ坊のマントを持つことができねぇだろ? なぁ坊!」

 「ありがとう。 サラマンダー」

 「なぁ~に! 気にすんな!」


 二カッ! と歯を見せて笑うサラマンダーと言う男性に、少年も釣られるように思わず微笑み返す。

 まるで仲の良い兄弟のようにも見える2人の姿にシルフは面白くないとでも言いたげな表情でサラマンダーを睨みつける。

 そのことに気が付いているサラマンダーは少し面倒くさそうに笑いを溢した。


 「あれあれ~~?? 皆~何してるの~~??」


 またまた出入り口から別の人物が顔を出して3人が集まる所に駆け寄ってくる。

 その様子にシルフは眼鏡がずり落ちそうになり、サラマンダーは近づいてくる人物を見ようとした少年に対して両目を手で覆い苦笑いを浮かべる。


 「ニンフッ! 貴女ッ! なんて恰好してるのッ!!」

 「ほぇ~~?? 何かおかしいですかぁ~~??」

 「そんなほとんど裸同然の姿で逆になんで疑問に思わないわけッ!!」


 落ちそうになる眼鏡を元の位置に直しながら指をさして指摘するシルフを不思議そうに眺めてニンフと呼ばれる女性は徐々に自分の恰好に視線を向ける。


 「・・・わぁ~~! 裸だぁ~~!」


 豊満な胸部をさらけ出して少し体を動かす度に揺れ動くそれはまだ子供には影響が強すぎる。

 ・・というか教育上よろしくない恰好だ。


 「ここには坊ちゃんもいらっしゃるのです! 早々に何か上着を着てきなさい!」

 「えぇ~~・・あっ。 サラマンダー様~~。 上着貸してくださぁ~~い」

 「悪いなニンフ。 今絶賛両手が塞がってて無理だ」

 「えぇ~~、じゃあもう面倒くさいから~~。 このままご挨拶を~~」

 「ダメに決まってるでしょッ!!」


 顔を真っ赤にして怒鳴るシルフに「えぇ~ん!」と幼児のような鳴き声を上げるニンフ。


 「だいたい貴女はどうしてそういつもいつも服が勝手に脱げるのですかッ! もう少し慎みという物を覚えなさい!!」

 「そう言われても~~。 私、普段は水の中で生活しているので~~。 服を着てしまうと濡れて重いといいますか~~。 気持ち悪いといいますか~~」

 「それならせめて水着だけでも来て来なさいッ! 貴女! 昨日は着用してたじゃないッ!」

 「そうなんですけど~~。 そこにいるサラマンダー様が~~」



 『何? 水着? そんな物必要ねぇよ! いいか? 水の中にいるのに何でわざわざ布なんて着るんだ? ()だよ()。 布なんて必要ねぇよ!』



 「―――と言ってましたから~~」


 思い出すように語るニンフの話に背後で未だに少年の両目を手で覆うサラマンダーは冷や汗をかきながら口角を上げて苦笑いをしている。

 その理由は長髪が逆立つほどの殺気を絶たせながら獲物を見るような鋭い目つきで睨みつけてくるシルフと目が合ったからだ。


 「ま、まてシルフ。 これには理由が―――ッ!!」

 「貴様の性癖に坊ちゃんの純情を穢すなァァァアアアアアアアッ!!」

 「ぎゃあああああああああッ!!」


 ドンッ! と大きな爆音が響き渡ると同時に少年の視界を塞いでいた手はいなくなり、何処か遠くの空へと飛んで行ってしまった。

 急な出来事に少年は飛んで行ったサラマンダーを目で追っている為まだニンフの姿は目視していない。

 

 「とりあえず私の上着を貸しますから。 今後は水着か何か服を身に着けて坊ちゃんに会いにきなさい」

 「もしも約束を破ったら~~??」


 シルフはニコッと笑みを浮かべて指を空に向ける。

 その指先へと視線を向けるとクルクルと回転しながら落ちてくるサラマンダーが地面にめり込む形で落下した。

 かなり深くめり込んだのか、落下してきたサラマンダーが動く様子はなく、傍で少年がツンツンと動かないサラマンダーを突く。


 「ああなりたい?」

 「・・・いえ~~。 大丈夫です~~」


 いそいそと借りた上着に身に着けニンフは心の底から約束を守る事を誓った。


 「なんだなんだ? いやに賑わってるな」


 そんな中、再び出入り口から誰かの声が聞こえ少年は地面にめり込んだサラマンダーから振り向く。


 「ノーム!」

 「只今戻りました。 坊ちゃん」


 そこには真っ黒なスーツを着て顔が見えないように深く帽子を被った男が立っていた。

 

 「やぁシルフ。 相変わらずこいつらに振り回されてるみたいだね」

 「そう思うならノームも叱って下さい。 彼と彼女はどうも少し自分達の立ち位置という物に対して責任感がないというかなんというか・・」


 頭に手を当てて溜息を吐くシルフにノームは同意するように小さく頷く。


 「ニンフ。 水着も嫌なら今度私の魔術で何か服を見繕ってこよう。 だからしばらくは水着の着用を頼むよ」

 「はぁ~~い。 わかりました~~」


 シルフに借りた上着をを口元まで引っ張り上げ叱られた子供のように落ち込むニンフにノームはポンッと軽く頭を撫でる。


 「君も何やってるんだサラマンダー。 君がそれくらいでくたばる奴じゃないのはよく知ってるんだから早く起きてきなさい」

 「・・・少しは心配してくれてもよくね?」


 すれ違い様にたまたま出会ったような口調で呼びかけるノームに対してサラマンダーは不服そうな表情を浮かべながらめり込んだ地面から這い上がってきた。


 「チッ。 生きてたか」

 「おいおい。 聞こえてからな? オイラが悪かったとは言えもう少し優しくしてくれてもよくね?」

 「貴様がまともな人種に転生したら考えてもいい」

 「つまり死ねと?」

 「察しがいいな」

 「坊ッ! 助けて! あいつマジだッ!!」


 害虫を見るような視線で睨みつけるシルフに対して涙目になって少年に助けをこうサラマンダーに、少年は少し困ったような表情を浮かべてノームを見る。


 「ほれほれお前達。 これ以上坊ちゃんを困らせるんじゃない」

 「なっ!? すみません坊ちゃん! 少々お騒がせしてしまい――」

 「ほぉ~れ見ろ。 怒られてやんの・・って痛たたたたッ!! やめ、やめろ! 無言で耳を引っ張るな! ごめん! すみません! 許してぇ~~~ッ!!」


 今しがた注意されたばかりだと言うのに早速騒ぎ始めたサラマンダーとシルフにノーマは更に深く帽子を被り「やれやれ」と小さく溜息を吐く。


 「それにしても~~、ノーマ様お久しぶりですね~~!」


 そんな騒がしい2人の後ろで何事もないように柔らかい口調でニンフが裸足の足をぺたぺたと足音を鳴らしながら少年に抱きつく。

 豊満な胸部か丁度少年の頭部に乗っかる形で収まり、少年は顔を固めてしまうがニンフはそんな事を気にする様子を見せない。


 「あぁ、ようやく見つける事が出来たからね」

 「 ! 見つけた?! まさかッ!?」


 ノーマの言葉に反応して声を上げたのはシルフだったが、他2人も同様に先ほどまでの雰囲気から一変してピリッとした空気が流れる。


 「あぁ。 私も本当に存在するとは思ってもみなかったが、見つけたよ」


 ノーマは自分の顔を見上げる少年と視線を合わせる為に膝をつく。


 「坊ちゃん。 どうします?」


 深く被った帽子から見える片目と目が合った少年は少し考えるように目を閉じると、すぐに開き空を見上げた。


 やはり空にはまだ、虹は見えない。


 「・・・わかった」

 

 少年がそう答えると、4人はすぐさまに横に並び膝をつき頭を下げた。

 そして、そんな4人に少年は告げる。


 「これより、()()()()()()

 最後まで読んで頂きありがとうございます!

 ここから第二章を始めていきたいとおもいます!


 出来れば毎日投稿というものを続けたい所もありますが、素人の僕にはどうしても難しくて・・・


 なるべく短い期間で投稿するよう努める所存ですのでどうかここからもお付き合いください!


 それでは、また次回!

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