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ヤンデレ彼女も異世界へ!  作者: 黄田 望
第一章 【 不死身と神 】
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第47話 目的

昨日は投稿できずにすみません!


内容が少し長くなってしまっていますがどうかお付き合いください。


 老婆の命令に従うように動いていた女神像が暴れたせいで天井が崩壊して雨が建物の中にまで入ってきていた。

 

 「それで、結局この人はマリーさんじゃないの?」

 

 灰と化して散った老婆との決着を終えた正樹達はマリーそっくりの姿をして花が詰まったケースで眠る女性の場所まで来ていた。


 「はい。 同姓同名でお姿も瓜二つではございますが、今まで貴方達と一緒にいたマリー様とは全くの別人です」


 カガミは自分の鏡の顔に手を添えて「鏡よ鏡――」と詠唱を唱える。

 すると鏡の中で心地よさそうに眠っているマリーの姿が映った。

 

 「貴方達と一緒に行動していたマリー様は私の鏡の中で一時的に眠っていてもらっています。 この御方だけはどうしても危険な目に合わす訳には行かなかったもので」

 「それならこのケースの中で眠っている淫乱そっくりな女性は誰?」


 ここに来るまで正樹の腕にくっつき離れる様子を見せない由紀がケースの中で眠るマリーを見る。

 

 「・・この人は、マリー様の御先祖様です」

 「御先祖様って・・じゃあこの人も不死身?!」

 「いいえ。 もう、この人は息もしていませんよ」


 カガミはケースに手を添えて眠るマリーに自分の鏡を照り合わせる。


 「最初の1年は確かに眠っているだけの状態でした。 しかし、時間が経つに連れて身体が弱体していき2年も経たない間に息を引き取ったのです」


 しかし、マリーがケースの中で息を引き取った後もマリーの女神の加護は消える事がなかったという。


 「困惑しましたよ。 このケースはまさに彼女を守る女神の加護なのです。 しかしその加護は彼女が死んだ後もまるで永遠に身体だけを守るように続いた」

 「身体を乗っ取られないようにする為に・・ですね」


 カガミの話に入ってきたのはここに来るまで静かだったアンナだ。

 あの暴れる女神像を止めてから何か悩んでいる様子を見せていた。

 

 「やはり、そうなのですね」

 

 アンナの話に何処か納得するカガミだが、話が見えない正樹は2人に説明を要求するとアンナはケースに近づき眠るマリーの顔を除き見る。


 「先ほどのお婆さんは禁忌目録の魂の自由という魔術書で自身の魂を自由に操り他人の身体へと乗っ取っていました」


 本来であればその禁忌目録一冊で他人の身体を乗っ取り永遠に生きていける魔術だと言う。


 「しかし、お婆さんは最大のミスをしたのでしょう。 この人の身体を乗っ取ろうとしたばかりにこの区域から外に出られなくなったのです」

 「出られなくなった?」

 「はい。 つまり、この人の女神の加護はケースだけでなくこの区域一帯が加護の対象なんです」


 元よりここは小さな村が存在しており、マリーはこの区域を守る為、加護の能力を村一帯に発動させて害ある者を近づかせないようにしていた。

 

 「ですが、女王・・いえ、あの御老人はどうやってか女神の加護を自力で突破して村に侵入しました」


 カガミは拳を強く握り絞めながらアンナに続いて話を続けた。


 「加護を突破した老婆は当時世界一の美貌だと占いに出た彼女の身体を狙ってマリーさんに近づき、彼女に乗っ取ろうとしました」


 魂の自由の発動条件は自身が死んだ状態である事が条件だという。

 その為、老婆は普段からいつでも美貌を持つ女性の身体を乗っ取れるよう毒リンゴを準備していた。

 しかしここからが老婆の誤算だった。


 「御老人が毒リンゴで自ら命を落として魂だけとなった途端、恐らく彼女は自分の身体を加護を付与したケースへと入っていたのだと思います。 自身の身体を御老人から護る為に」


 強力な女神の加護によりマリーの身体を乗っ取れなかった老婆は焦った。

 前の自分の身体は毒リンゴに汚染され死に、次に用意する新しい身体は何処にもなかったからだ。

 すぐに外に出てしばらくの間でも魂を実態ある身体に入ろうとしたが、村にはすでに人の姿はなく、村の区域から外に出ようとしても加護の力が強力になっており出る事も叶わなかったらしい。


 「当時の私は魂だけの存在となった御老人を消滅させる方法を持ち得ていませんでした。 あの御方をこのままにして私の寿命が尽きれば、彼女の身体はケースの中で永久に眠り続け、御老人に身体を狙われ続ける。 だから私は、これに頼りました」


 カガミは自分の鏡の顔から一冊の黒い本を取り出した。


 「それは・・禁忌目録?」

 「はい。 この禁忌目録はこの教会の地下に眠っていた魔術書です。 12冊の禁忌目録の内の1つ。 【不老不死】の内容が記されています」


 不老不死になる方法。

 それは命無き無機物との同調だった。


 「人は寿命があるから歳をとり、いつか必ず命を落とします。 しかし鏡や像といった道具は手入れをしっかりとしていれば十年・百年・千年と長い年月に続いて存在が消滅する事はありません」

 「じゃあ、カガミのその顔は・・」

 「はい。 私は当時、占いで使用していた鏡と同調する事により不老不死になりました」

 

 カガミは正樹に殴られヒビが入った自分の鏡の顔に触れる。


 「え? え? じゃ、じゃあまさか鏡が割れたら死んじゃうとないよね? 僕結構思いっきり殴っちゃったんだけどッ!!」

 「・・・さぁ、それはどうでしょうか?」

 「待って! ごめんなさい! そんなつもりは全くなかったんです!!」

 

 自分のせいでカガミが死んでしまうのではないかと狼狽える正樹に、腕を抱きしめ放さない由紀が更に力を込めて正樹を抱き寄せる。


 「安心して正樹さんッ! 私は正樹さんが前科持ちでもぜっんぜん気にしないから!」

 「それ全然フォローになってないからね?!」


 真顔で恐ろしい事を言いきる由紀に正樹は目を見開いてツッコミを入れる。

 そのやり取りで少し場が和んだのか先ほどまで険しい顔をしていたアンナも少し笑顔を取り戻し、なんとなくだがカガミの雰囲気も少しだけ和らいだように感じた。


 「恐らく大丈夫ですよ。 道具というのは壊れたから死ぬというわけではないと思うんです。 たかがヒビが入ったり粉砕したりでは簡単には死にません」

 「そ、そう? ホント? 信じるよ??」

 「はい。 どうか安心してください」


 本気で怯える様子で心配する正樹にカガミは苦笑する様子で肩を上下に震わせる。


 「・・待って。 確かあのお婆さんも不老不死って言ってたような・・?」

 「はい。 あの老婆も私の持つ禁忌目録で魂の状態で不老不死となりました」


 カガミの返答に正樹は思わず崩壊した地面から見える地下を見る。


 「あの御老人はアンナ様が止めて頂いた女神像と同調して不老不死となりました。 しかし神の力さえも無効にしてまうアンナ様の賢者の石で不老不死の能力も同時に消滅させて灰となって消えてしまいましたのでどうか安心してください」

 「そ、そっか。 じゃあ安心・・かな・・ってイタタタッ! 由紀ちゃん痛い! 何?!」


 急に腕を掴む力を捻じ切れる勢いで強めた由紀を見ると、何故か暗黒面の由紀の瞳になっており思わずビクッと怯える。


 「大丈夫よ正樹さん。 君の貞操は私が必ず守るわ」

 「うん・・うん? 貞操?」


 一瞬、誰から貞操を守るのかと聞こうとした正樹だったが、由紀の視線が地下を見ていてなんとなく察した。

 だから敢えて言わない。

 というより言いたくない。


 「さて、執事様。 そろそろいいでしょうか」


 空気が少し和み始めた所で、先ほどからケースに添えるように手で触れていたアンナがカガミに声をかける。

 

 「アンナ。 何か始めるの?」

 「はい。 今から賢者の石の能力でこの加護を消滅させます。 恐らくそれが、執事様の目的だったのでしょう」


 アンナの話を聞いてカガミを見る。

 表情は鏡の為見分ける事は難しいが、案外カガミは雰囲気で態度が分かる為、その時の気持ちがなんとなく理解できる。


 「いいのか?」

 「えぇ・・良いんです。 元々は占いで出ていた結果でもあるので」


 カガミは今もケースの中で眠るマリーの顔を見る。


 「本当は、彼女がケースの中から目を覚めると占いで出ていたのです。 私の占いは魔術を通して行っている為、当たる確率はおよそ90%あるんですよ」

 「90%も!」

 「はい。 だから未来予知というスキルといってもあながち間違っていないんです」


 正樹に攻撃を仕掛けてきた時の未来の幻影も占いで見えた映像を影として出現させたものだと言う。


 「じゃあ、あの時言ってた神の権限っていうのは・・」

 「その話に関しては、また後日詳しくお話させえて頂きます」


 「・・・」


 チラッと正樹の腕に抱きついた状態の由紀と視線が合うカガミ。

 由紀は何か言いたげな顔をしていたが、カガミはそれよりもまずは優先したい事があった為スルーする事にした。


 「私が不老不死になった理由は2つ。 彼女ともう1度会える可能性があると占いで出たのが1つ。 そしてもう1つはあの御老人から彼女の身体を守る為、貴方達との出会いを待っていた事です」

 

 千年前、不老不死となる為に鏡と同調したあの日に最初に占った時に出た結果は意外にも2つあった。

 1つがマリーとの再会。

 そしてもう1つはマリーを救う為に必要な人材、正樹達の出会いが必要だった。

 しかし、彼女ともう1度出会えるという占いは外れた。


 鏡とは真実を写す道具だ。


 存在しない遠い未来まで写す事は不可能に近い。

 結局は運任せの占いで映し出された幻なのだ。


 「彼女はとっくに命を落とした死者。 女神の加護により身体が綺麗なまま残っていますが、ご老人が消滅した今なら、供養してあげたいのです」

 「わかりました。 それでは・・始めます」


 カガミの意志を確認したアンナはケースに触れていた手に力を籠める。

 するとアンナの手から赤いオーラのような物が浮かびあがり少しずつケースの端から粒子となり消滅していく。

 

 その様子はまるで魂が天へと昇っていくような一本の柱が出来ているようだ。


 ケースは徐々に薄れていき、遂にケースで眠っていたマリーの姿が現れた。

 手を伸ばせばいつでも触れられる距離に一瞬カガミが手を伸ばそうとしたが、何かを思い直したように手を引っ込めた。


 正樹はカガミに声をかけようとした。

 別れを告げる為に、手だけでも握ってやればいいのではないかと。

 その時だった。

 正樹は崩壊した地面からヒヤリと背中に悪寒を感じた。

 何か悪い物が呻き声を上げながら登ってくるかのような感覚が地下から感じるのだ。

 あまりの恐ろしさに声も出ずただ視線だけを地下へ向ける。

 

 「なんだ・・これは・・」






 カシュッとまるでリンゴをかじったような音が聞こえた。

最後まで読んで頂きありがとうございます!

さて、本日は2本投稿の予定なのでどうかよろしくお願い致します!

 

予定は9時か12時の予定です!!

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