第3話 早すぎる再開。
「危ないッ!!」
光の柱から抜け出した場所は森の中だった為に少しブラブラとしていると、1人の女性の悲鳴が聞こえた。
僕は急いで悲鳴が聞こえた方向へ走って向かうと恐らくゴブリンらしき3匹の魔物が人間の少女を囲って襲っていた。
1匹のゴブリンが少女を棒のような物で殴りつけようとした所を何も考えずに背後から殴りつけて少女を庇うようにゴブリン達の中へと入ってしまった。
ゴブリン達はそれぞれ剣やら弓などの武器を持っているが、異世界へ来たばかりの僕は何も持っていない。
元の世界と同じ感覚で殴りこんできてしまった。
ゴブリンも武器を持っていない僕を見て余裕そうな顔でじりじりと近づいてくる。
一体どうすればと考えていたその時、ゴブリン達が青初めた様子で空を見た。
それにつられて僕も空を見ると、空中に誰かが浮いてこちらを見下ろしている。
「・・・あれはッ!? まさかッ!!」
ありえない光景に目を疑った。
しかし、その姿を見てそれ以外にあり得ない。
空に浮いているのは、元の世界で付き合っていた僕の恋人だッ!!
「~~~~~ッ!! 正樹さ~~~~~~~~んッ!!」
彼女は上空100メートル以上の高さからトンビのような勢いで僕の元まで急降下してきた。
「ゆ、由紀ちゃん?!」
ここで自己紹介だが、僕の名前は安生正樹。
元の世界で命を落として異世界に来た普通の男子高校生だ。
そして今、半泣きになりながら僕に抱き着いてきているのが元の世界で僕の恋人である美少女。
最上由紀である。
「良かった・・本当に良かった! もう君に会えないかと思って私・・私ッ!!」
「由紀ちゃん?! 色々と聞きたい事は沢山あるけどちょっと待って!! ゴブリン! 目の前に敵がいるからッ!!」
背骨をへし折る勢いで抱き着いてくる由紀をなだめながら、青ざめながらも油断している隙に攻撃を仕掛けようとするゴブリン達に警戒する。
「・・・敵?」
「そうッ! ゴブリンッ! こいつらが僕達を襲うとしているからなんとかしないと!」
決死の覚悟で3匹のゴブリンが同時に飛び掛かってきた。
正樹は由紀を守ろうと抱きしめる。
「邪魔。」
しかし由紀がゴブリンを睨んで小さく呟くと、正樹達の目の前で一瞬で灰となって消えてしまった。
「ハイッ! これで邪魔者はいなくなったよ! 正樹さん!」
「そう・・みたいですね~。」
もう何が起こっているのか訳が分からない。
そもそもなんで由紀まで異世界へ来ているのかも分からない。
ただ・・正樹は今自分がすべき事だけを最優先に行動をしていた。
「さてと・・あとはこの敵を倒せば一件落着ですね。」
「待って! その子人間! 敵じゃないよ!!」
「私と正樹さんの感動的な再開を邪魔する女はすべて敵です。」
「お願い待って! 話をしよう! 落ち着いて話をしようッ!!」
なんか人差し指の先から当たってはならない黒い球を先ほどまでゴブリンに襲われていた少女に目掛けて撃とうしている恋人をなだめる事。
それが正樹が今、異世界へやってきて最初に行った人助けのような気がした。