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ヤンデレ彼女も異世界へ!  作者: 黄田 望
第一章 【 不死身と神 】
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第25話 訪問者


 「彼は(わたくし)の運命の人。 マサキに恋人がいようがいまいが関係ないんですよ~。」

 「関係ないわけがないでしょうがッ! 正樹さんは私と将来を誓い合った仲。 今更アンタみたいな淫乱女が邪魔してきたって正樹さんは絶対に渡さないわ!」

 「あら~? 貴女みたいな重い女性が相手だとマサキも疲れるでしょう? 近いうちに(わたくし)に振り向いてくれますよ。 きっと!」


 床に正座をしている正樹を横目でチラッと見るマリーと目を合わすと、テーブルの下で長いスカートを上げ真っ白な肌の脚をあらわにする。


 「・・正樹さん?」


 一瞬、マリーの仕草にある色気に当てられそうになった所を由紀は見逃さず真っ黒な瞳で正樹を睨みつける。


 ・・・なにも見てないよ?

 ホントだよ?

 え?

 後で話があるって?

 ・・・ハイ


 マリーは一瞬でも自分の肌を見て男性的反応を見せた正樹を見て楽しそうに笑みを浮かべ、その様子を見た由紀は今すぐにでも包丁をマリーに向けて刺すのではないかと想像する殺気をあらわにする。

 しかし、いつもの由紀ならすでに包丁を取り出しているであろう状況であるが未だに殺気を溢れ出させる所で留まっている。

 

 「(わたくし)には貴女の攻撃は効きませんよ~?」

 「分かってるわよ」


 余裕の笑みを浮かべながら睨みつけてくる由紀み微笑かける。

 そうなのだ。

 昨日に2人が争った時に分かった事がある。

 それは由紀のチートスキル【神の権限】がマリーには一切効かないという事だ。


 「貴女がそのスキルをどのような形で習得したのか存じませんが、(わたくし)()()()()()()を持っている為なのか、貴女のスキルは(わたくし)には一切通用致しません~」


 マリーの保有しているスキル。

 それは人類が保有できる域を超えたチート、【女神の加護】というスキルのせいだと言う。


 「(わたくし)のスキル【女神の加護】はあらゆるすべての悪から護り浄化させる能力を持っています。 つまり、貴女と同等に我らが(あるじ)に近しいスキルの為、貴女と(わたくし)のスキルは相殺される形になるのでしょう」

 

 他にも相手の運を奪い不幸を呼び寄せる事も出来る。

 本来なら由紀同様に思い描けば自然と発生するスキルなのだが、相手に向けて指をさす仕草は正確に狙い定める為のものだとか。


 「アンタと同じようなスキルを持っているせいで物理的攻撃も全部塞がれてしまう。 だから私がどれだけアンタに不意打ちで殺そうとしてもすべて届かないってわけ」

 「そうなりますね~!」


 今回の由紀は冷静に物事を判断している。

 真っ暗な瞳で他人に興味を持たないその表情はまるで元の世界で()()()()()()()の由紀を見ているようだ。


 (・・・僕と、出会う前・・?)


 自分で感じた事だと言うのに、正樹はその感覚に疑問を持つ。

 自分と出会う前の由紀は、一体どんな人物だったのだろうかと。


 ザザッーーとまた記憶に靄のような物が混みあがり、思い出そうとすればするほど思い出せそうになった記憶が靄で見えなくなっていく。


 「ま、正樹様~ッ!!」


 いつの間にか正樹の背後で体を縮めて近づいていたアンナにハッと意識が戻る。


 「ど、どうしたアンナ・・って、メッチャ怯えてない? 雷怖い?」


 アンナは飼い猫が雷に怯えるような仕草で震えながら涙目になり、正樹の服袖を軽く握っていた。


 「そうじゃありません! 早くあのお2人を止めてくださいよ~! 朝から家の雰囲気がギスギスしてます~!」

 「いや~、僕も早く何とかしたいんだけど・・」


 いつの間にか由紀とマリーとの口論は過激を増しており、怒りに任せて冷静に暴言を吐く由紀に対して、すべての暴言を聞き流し余裕の笑みで反撃するマリーの姿はまるで悪魔と天使である。


 「因みに正樹様。 どちらが悪魔でどちらが天使ですか?」

 「・・・ご想像にお任せします」


 そんなアンナとのやり取りが聞こえていたのか由紀とマリーは一斉に「「私!!・(わたくし)ですよ~」」と声を張って正樹達を見る。

 同時に同じ事を言ったのが気に食わなかったのか由紀とマリーは再び火花を散らし何故か椅子から立ち上がって正樹に近づく。


 「ねぇ正樹さん。 さっきの答えは私を選んでくれたんですよね? だってこんな淫乱女が天使な訳ないもの」

 「あらあら~。 貴女みたいに自分の気持ちだけを押し付ける女性に天使はないのでは~? それに比べ(わたくし)は一応聖女という役職を持っています~。 つまり、マサキは運命の力で(わたくし)の感性を見抜いたのです~。 ねぇ~~、マサキ?」


 床に手をつき、四つん這いになりながらジリジリと距離を縮めてくる2人に、正樹は困惑していた。

 今までの人生に置いてまさか2人の美女に言い寄らる日が来るなど思いもしなかったからだ。

 由紀のような高嶺の花と恋人関係である事自体、来世の運を使い果たしていると思っているのに、ここに来て色気が漂う女性にまで言い寄られるとは。

 人生、何が起こるか分かった物ではない。


 「正樹さん!」

 「マサキ~?」


 いつまでも返答しない正樹に苛立ちを覚える2人は更に距離を縮めてくる。

 事例という形で言葉にしたのが悪かった。

 こうなってしまったら、どちら片方を天使だと選んでも正樹自身の身が危険だからだ。


 マリーを選んだ場合

 

 『へ~~~~・・・。 正樹さんは私よりもこの淫乱を選ぶのね・・そう。 じゃあ、殺すわ』


 由紀を選んだ場合


 『あらあら~? (わたくし)よりもこんな重い女性を選ぶのですね~。 それじゃあ、死刑♪』


 だっめだぁぁぁぁぁッ!

 どっちを選んでもバッドエンドの未来しか見えないッ!

 アンナッ!

 助けてッ!!


 背後に今も猫のように震えているであろうアンナに助けを求めるように振り返ると、そこにアンナの姿はなく、タイミングが良いのか悪いのか訪問者がきたらしい。

 そのタイミングでアンナは逃げるようにドアへと向かっていた。


 (アンナぁぁぁぁぁぁああああああッ!!)


 心の中で今も扉を叩かれる前までたどり着いたアンナは心の底から正樹への謝罪と幸運を祈った。


 「はぁ~い! 今でま~・・・」


 ずっと叩かれ続ける扉を開けて訪問者を迎えたアンナだったが、何故か扉を開けた瞬間に身体を硬直させる。


 「アンちゃん? どうかした?」


 その様子に気が付いた由紀が正樹の腕を握りつぶす勢いで握ったままアンナを気にする。

 

 痛い痛い痛い痛いッ!!

 マジで痛いんですけどッ!!


 すると、今度はマリーが小さい声で「あっ」と溢した。



 

 「ようやく見つけましたよ。 姫様」



 ドアの向こうから聞こえたのは男性の声だったが、アンナが立ち尽くしている横から顔出してマリーを見る。

 そこで正樹と由紀はアンナ同様に体を硬直させた。

 ドアの向こうで立っていたのは1人の男性・・ではなく

 首から下は普通の人間の姿ではあるが、頭の表面が 鏡 の姿をした奇妙な人間だった。

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