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ヤンデレ彼女も異世界へ!  作者: 黄田 望
第一章 【 不死身と神 】
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第23話 女神の用件


 元の世界で命を落とした正樹は女神様との契約により、異世界の魔王を討伐する事によって元いた世界に生き返らせてもらう事になっていた。

 しかし、正樹が召喚された異世界では現役の魔王を討伐した所で、再び新たな魔王が誕生する事を元魔王であるアンナから聞かされた正樹は女神様との再会を最優先にすることにしていた。

 そして今日、正樹は思いがけない場面で女神様との再会を果たした。


 『元気そうで何よりです。 安生正樹さん』


 目の前で微笑む女性はマリーと呼ばれる人間だ。

 まだ初めて会ったばかりで素性も知らないが、先ほどまでのマリーとは声と雰囲気が一変しており、何よりも後光のような物で身体全身が輝いているように見える。


 正樹は倒れた由紀へ駆け寄り座りながら抱きかかえる。

 どうやら本当に気を失っているだけのようで由紀は安定した呼吸で寝息を立てており、胸を下ろして安心した。


 「女神様、あの――」


 ゆっくりと歩きながらついてきた女神様と視線を合わせる。

 女神様には色々と聞きたい事があり、どれから聞けばいいのかと迷っていた。

 しかし女神様は質問をしようとする正樹を止める。


 『ごめんなさい安生正樹さん。 私がこの()の身体を借りていられるのも時間が限られています。 申し訳ないのですがこちらの用件を一方的に話させて頂きます』


 女神様はそう言うと一呼吸置いて正樹に質問した。


 『貴方は、()()()()()()()()()()()?』

 「・・・どこまで?」


 一瞬、女神様が何を言っているのか理解できなかった。


 『貴方は自分の生まれた故郷を、両親の顔を、友人の名前を、そして何より彼女を事をどこまで覚えていますか?』


 そんなもの、全部覚えている。

 ・・・普通なら。

 

 しかし正樹は女神様の質問に何1つ答える事ができなかった。

 自分の生まれた故郷が何処なのか。

 両親の顔はどんなだったのか。

 仲が良かった友人の名前が何だったのか。

 そして何より思い出そうとすると記憶の映像に靄のような物がかかって見えないのは【彼女】との記憶だった。


 腕の中で静かに寝息を立てている由紀を見る。

 目の前にいる彼女が正樹の恋人である。

 それは間違いない。

 彼女がどんな性格で、どれだけ自分に好意を持っているのか知っている。

 だけど・・・


 「僕は・・どうやって君と恋人になったっけ・・・」


 正樹の様子を見て、女神様は何かを察したように目を瞑る。


 『さて、すいません安生正樹さん。 どうやら時間のようです』

 

 女神様の背後から見える後光が少しずつ薄くなっていくのが分かる。

 正樹はハッと混乱した意識を一気に戻して1番聞きたい事を早口で聞いた。


 「女神様ッ! この異世界での魔王は討伐してもまた新しい魔王が誕生すると聞きました! なら今の魔王を倒しただけでも条件は成立するんでしょうか?!」

 『―――いいえ』


 後光と共に小さくなった声はハッキリと正樹の質問を否定した。


 『私が貴方を元の世界で生き返らせる条件は魔王の討伐です。 魔王が存在する限り貴方との交渉は成立しません』

 「な、ならどうやって?!」


 滅茶苦茶な事を言っていると言い返そうとしたが、後光はすでにほとんどなくなり今にも消えそうになるくらい小さくなっていた。

 しかし、女神様は後光がすべて消える前の一瞬で小さくではあるが正樹の質問に答えた。


 『魔王は・・ひと、り・・―――』


 セリフはまだ途中であったが、後光はそこですべて消え、マリーは気を失うように正樹に倒れ込む形で意識を失った。

 咄嗟に受け止めようとした時にマリーの胸部が正樹の顔にぶつかる形で受け止め、焦りながらマリーを由紀とは逆の腕で支える。

 マリーも由紀同様に小さい寝息を立てて他に異常はないようだ。


 「魔王は・・1人?」


 女神様が最後に言った言葉を思い出す。

 確かに現役の魔王は1人だという事は分かる。

 しかし今、魔王の座に立つ魔族を倒しても、また再び新たな魔王が登場する。

 これによりどれだけ魔王を倒したとしても正樹が女神様との契約は成立されず無限ループを繰り返すだけだ。


 「・・・はぁ。 一体どうすればいいって事なんですか」


 気が付けば太陽が傾き夕暮れとなっている。

 朱く染まる空を眺め、色々と起こった今日1日に正樹は早く家に帰って休みたい気持ちで一杯だった。


 「アアアアアアアアアアあああぁぁぁぁぁッ?!」


 急に聞こえた女性の叫び声にビクッと体を震わせる。

 一難去ってまた一難が来たのかと身構えながら悲鳴が聞こえた背後を振り返ると、そこには口元を手で押さえ震えながら正樹達を見るアンナの姿があった。


 「あ、アンナ?」

 

 一体何があったのかと疑問に思っていると、アンナは恐怖に怯える様子で震えながら近づいてくる。


 「ま、まままま正樹様ッ! い、いいいい一体全体何があったんですかッ?!」

 

 確かに周りの森の地形がかなり変形している為、只事な様子じゃないのは分かるが、アンナは周囲の景色よりも正樹を見て震えているようだ。

 一体何がアンナをそこまで震わせているのかと考えていると、自分の今の状況を思い出す。


 右腕には恋人関係にある由紀を抱きかかえ、左腕にはアンナには見知らぬ女性を抱きかかえている。

 その光景は第三者から見れば完全に女たらしの男同然の光景だった。


 「ま、まずいですよ正樹様ッ。 奥様が今起きたら絶対に大変な事になりますよッ! 包丁持って刺してきますよッ! ・・・ハッ!! ま、まさかさっきまでの戦闘は正樹様の不倫が発覚した事による奥様の暴走ッ?! あぁダメです! そんな修羅場は世界を滅ぼす事になりうると本で読んだ事があります! 三角関係っていうやつですよねッ?!」


 何やら興奮した様子で想像を膨らませいるアンナに正樹は頭を抱える。


 「勘弁してよ・・・」


 これ以上ややこしい話を持ってこないでくれ。

 正樹は心の中で悲鳴を上げた。

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