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ヤンデレ彼女も異世界へ!  作者: 黄田 望
第■■■章 物語の始まり そして終幕
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第 ■ ■ ■ 話 終幕の前兆


 「禁忌目録? 原初の魔術書? なにそれ?」


 勇者の説明に出てきた単語を切り出して質問するロドピスは首を傾ける。


 「そのまんまの意味だよ。 まだ神と呼ばれる存在もない遥か昔、神と成るソレが人間の為に残した書物さ」

 「でも禁忌なんでしょ? そんな物をなんで神様が人間の為に残したの?」

 「それが人間の為だと考えたからだと言われているからで・・・っていうかさ~」


 ロドピスの質問に淡々と答える勇者は途中で言葉を止めた。


 「ん? どうかした?」

 「いや、どうかしたとかじゃなくて・・なんで俺が君を背負って魔王城に向かってるわけッ?!」


 そうなのだ。

 ロドピスを動けない状態に勝利した勇者は、ロドピスに「このままじゃ世界が神に滅ぼされる」と伝えてから急いで魔王へ報告に行かなくてはいけないと慌てだして勇者に自分を背負うように要求した。

 実際、勇者の魔術で身体を自由に動けない状態にあるロドピスは誰かに運んでもらわなくてはいけない状態ではあるのだが・・。


 「そろそろ俺の拘束した魔術も解けた頃合いだよねッ!! もう自分で歩いてもいいと思うのですがッ!?」

 「いや。 このまま運んで」

 「ハイィッ? なにゆえ?!」

 「だって・・・」


 ロドピスは不貞腐れた様子でそっぽを向いて頬を膨らませる。


 「私、負けてないもん」

 「・・・なんだって??」


 急な発言に勇者は足を止める。


 「だから、私負けてないもん」

 「いやいやいや、完全に俺の術にかかってたじゃん! 動けなくなったから俺が背負う羽目になってるんでしょうがッ!」

 「違うもん。 私が勝ったからキミを脚に使ってるんだもん」

 「~~~~~~~ッ!!?」


 もう置いて行こうかなと考えたが、どうしてもロドピスを連れて魔王の元へ行かないといけない理由がある為、どうしても置いて行く事が出来ない。

 しかし、ここまで負けを認めず更には自分が勝利したような言い回しをされてしまうと気分の良いものではない。

 どうしたものかと息を切らしながら再度足を一歩進める。


 「・・・そういえばさ」

 「なに? 私の勝ちは譲らないけど?」 

 「いや、それは絶対に譲ってもらうけど?」

 「はい?」

 「ほえ??」


 それからしばらく「はい」と「ほえ」を交互に言いまわす時間が過ぎたが、途中で根負けした勇者が話題を元に戻す。


 「さっきの戦いで一瞬だったけど、なんか綺麗なドレスに服装が変化してなかった?」

 「・・・」


 勇者に追い詰められた時にロドピスが発現させた神の権限、贈呈(ギフト)

 そのチート能力はあらゆる世界や時代に持つ能力(スキル)を自分自身や他人に付与させる事が出来るものだ。

 だけど、あの瞬間に見たドレスは服装そのものが変化して更には動植物まで出現した。

 それは明らかに能力の範疇を超えた魔法のように見えた。


 「・・私が転移者だって言った事は覚えてる?」

 「ん? あぁ、確か言ってたな。 それも聞きたかったんだ。 転移者ってなんだ? 転生者とは別なのか?」

 「まったく別。 そもそも私のような転移者は()()()()()()()()()()()()()()だもの」

 「? どういう意味だ?」


 転移とは物や人がその場から別の場所へ瞬時に移動する事を言う。

 それは日本で言う神隠しと似た現象で、転移する対象が気付かぬうちに別の場所へ移動している事だとロドピスは言う。


 「それはテレポート(瞬間移動)と一緒じゃないの?」

 「近からず遠からずと言った所かしら。 テレポートは対象者が認識している場所を意識的に移動する現象だから。 だけど転移は違う。 転移する対象者は有無を言わない内に別の場所へ移動する事なの。 それが例え異世界だとしても」

 「ふ~ん? それじゃあ概念そのものがあやふやっていうのは? アンタが転移者だっていうなら知らない内にこの世界に来たって事だろ?」

 「・・・」


 ロドピスは少し間を空けて勇者の肩を持つ手に力を入れる。


 「私のような転移者は本当に存在したか分からない世界からこの異世界へ移って来たの。 だからあやふやな存在って言ったの」

 「・・よく分からないな。 つまり簡潔に言うと?」

 「簡潔に言うと、私は―――ッ!!」


 何かを言おうとしたその時だった。

 ロドピスは空を見上げて身体を動かなくなった。

 言葉の続きを待っていた勇者もロドピスに顔だけ振り向き、ロドピスが見上げる視線の先へ眼を向ける。

 

 「・・なんだ・・あれ」


 そこには空間に裂け目が出来ており、その裂け目からおびただしい数の黒い靄が生き物のように蠢いていた。

 

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