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【電子書籍化】異世界もふもふ幼稚園(無認可)  作者: 翡翠
第一章 玄関が異世界に繋がっていました
6/53

6

「ナギくんとリリちゃんのお家は近いの?」

「お姉ちゃんの家の隣だよ」


 意外にもお隣さんでした。

 扉を正面に見て左隣がリンデルさんの家で、右隣がナギくんとリリちゃんのお家だったみたい。


「そうなの? じゃあ、お隣さんだね。よろしくね」

「「うん」」


 ああ、何とも癒されるこの兄妹。

 眼福、眼福。


「ナギくんとリリちゃんのお父さんとお母さんは、お仕事?」

「うん」

「じゃあ、それまで二人でお留守番してる……」


 そこでナギくんのお腹からグギュウウゥゥゥ……という大きな音が。

 ナギくんは恥ずかしそうに俯いてしまった。


「き、今日は寝坊して朝ごはん食べられなかったから……」


 ボソボソと言い訳しているそんな姿も可愛いとしか言えない。


「リリちゃんは朝ごはん食べた?」


 と聞けば、こちらも食べ損ねたようで、フルフルと首を横に小さく振っている。


「あのね、お姉ちゃんさっき朝ごはん食べたんだけど、ちょっと多く作り過ぎちゃって、余っちゃったの。もうお腹いっぱいで食べられないから、食べてもらえないかなぁ?」


 ナギくんとリリちゃんは二人で顔を見合って、どうしたものかと考えているようである。

 まぁ、いきなり一度見たことしかない相手に言われても、多分親から『知らない人についていくな』とか色々言われてるだろうしね。

 実際は余ってないんだけど、これから作るなんて言ったら、絶対に遠慮して要らないって言われるだけだもんね。


「良かったら、片手で持って食べられるようなものだから、ここに持ってくるよ?」


 その言葉にホッとしたように、頷くナギくん。

 知らない人に注意するように言われてはいるんだろうけど、やっぱりお腹も空いて我慢出来なかったんだろうな。

 私はニッコリ微笑んで「じゃあ、持ってくるから待っててね」と、一度家の中に戻った。

 手拭き用のおしぼりを用意し、○ジッコのおかか昆布のおにぎりと、子供が大好きなツナマヨのおにぎりをちゃちゃっと小さめに握り、三つのコップに麦茶を注いでお盆に乗せ、お腹を空かせた可愛い兄妹の元に急ぐ。

 二人は玄関の少し横の壁に背を預けて座り込んでいた。


「お待たせ」


 二人にまずおしぼりを渡す。


「先ずはこれで手を拭いてきれいにしてから、ね?」


 二人はおしぼりを見て、不思議そうな顔をしている。

 ……どうやらこの世界には、うがい・手洗いなどの習慣はないらしい。

 きっとバイ菌への耐性が強いんだろうな……と思う。


「手をきれいにしてからの方が、美味しく食べられるのよ」


 と言うと、大人しく手を拭き始めた。


「喉は渇いてる?」


 大人しく頷く二人に麦茶の入ったコップを渡すと、


「「冷たい!」」


 と、とても驚かれた。

 そういえば、この世界には冷蔵庫がないんだった。


「これは麦茶っていって、さっぱりしたお茶なのよ」


 二人は私の話を聞いてるのか聞いてないのか分からない様子で、不思議そうにコップを持ち上げて眺めたり、匂いを嗅いだりしている。

 毒味ではないけれど、まず最初に私が飲んでみる。

 うん、やっぱり○藤園の麦茶が一番好きなのよね。


「さっぱりしていて、冷たくておいしいよ」


 私が飲んで見せたことに安心したのか、ナギくんが一口飲む。


「本当だ。冷たくて、美味しい」


 と呟くと、リリちゃんもコクッと飲んで「冷たい」と小さな声で呟く。


「こっちのはね、おにぎりっていう食べ物なの。こっちのはおかか昆布っていう具が入ってて、こっちのはツナマヨって具が入ってるの。どっちも美味しいよ」

「おにぎり……聞いたことないや。おかかナンとかっていうのも、ツナナンとかっていうのも、初めて聞いた」


 ナギくんは麦茶で警戒心が解けたのか、興味津々な感じでおにぎりに手を伸ばす。

 鼻に近付けて匂いを嗅いで、ペロッと舐め、


「しょっぱい!」


 首を竦める様子が余りにも可愛い過ぎて、思わず笑ってしまった。


「あらあら、ちゃんと説明しなくてごめんね? それは塩を振ってあるから、舐めたらしょっぱいだけになっちゃうの。パクって食べると美味しいのよ」


 私の言葉に意を決した様にパクっとかぶりつく。無言でモグモグ。

 その姿を私とリリちゃんでジイッと見ている。

 ナギくんの大きな目が更に見開かれる。


「美味しい!」


 そう言って、夢中でおにぎりを頬張る。

 その姿を見たリリちゃんも、おにぎりを手にとって食べ始める。


「美味し~い」


 よく聞いてなければ聞き逃してしまうほどに小さな声だったけれど、確かにリリちゃんがそう言ったのだ。

 自分の作ったもので(作ったというほどのものではないけど)美味しいって言ってもらえるのって、嬉しいよね。

 私はこの可愛らしい兄妹が食べ終わるのを、ニコニコしながら見続けていた。

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