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【電子書籍化】異世界もふもふ幼稚園(無認可)  作者: 翡翠
第一章 玄関が異世界に繋がっていました
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5

 異世界三日目。


「……やっぱり使ったはずの食材がある」


 朝起きて一番最初にしたことは、冷蔵庫の中身チェック。

 もしかしたらと思っていたけど、やっぱりだった。

 砂糖や調味料は目で見ても差が分からないので、昨日寝る前にキッチン量りで重さを量っておいたのだが、こちらも量ったものより増えていたので、使用前の状態に戻っている。

 使っても使っても減らないなんて、なんて都合の良い……。

 一生引きこもりしようと思えば出来ちゃうけど、それはちょっとなぁ。

 だって、この世界は獣人が中心の世界なんだよ?

 昨日の子どもたち、めっちゃ可愛かったぁぁぁああ!

 目の前にあんっなに可愛いもふもふたちがいるのに、見て見ぬふりなんて出来るわけないよね!?

 もふもふしたい!

 もふもふさせてくれるお友達が欲しい!!

 それにまだ十九歳(もうすぐ二十歳(ハタチ))の私にとって、恋バナはビタミン、必需品。

 女子トークしたい!!

 お洒落なカフェとかで、甘いもの食べながら恋バナに花を咲かせたい!

 ……甘いデザートがあるか分からないけど。

 そして、実質文無しな私だけど。


 昨日リンデルさんに、私ぐらいの年齢の女の子はどんな仕事をしているのか聞いてみたんだけど。

 食堂の接客とか、色々なお店の雑用とかが多いそう。

 水商売もあるみたいだけど、その辺はあまり教えてくれなかった。

 別に水商売で働くわけではないけど、情報として色々知りたかったんだけどなぁ。

 他にも伝手のある子はお貴族様の使用人とか冒険者ギルドの受付とか、厚待遇な仕事につくことが出来るらしいけど、極々一部なんだって。

 学のある子は商会などで雇ってもらえることもあるらしい?

 リンデルさんの話だと、私は多分学がある子の中に入るんだろうな。

 そしてちょっと気になったのが、昨日集まった子どもたちのこと。

 多分下は三歳くらいから上は六歳くらいまでの子どもたちだったと思う。

 本来なら、保育園や幼稚園に行ってる時間帯のはず。

 そう思ってリンデルさんに聞いてみれば。

 この世界にはそういったものはないらしく、親が働きに出ている間、子どもたちは留守番なのだそうで。

 心配は心配だけれど、そうするしかない状況らしい。

 預ける所などないし、働かないとお金がない。

 小学校はあるけれどお金が掛かるので、ある程度裕福な子たちでないと通えないとのことだった。

 通えない子どもたちはどうしているかと聞けば、雑用の更に下の仕事をするらしい。

 多いのは、トイレの壺のようなものを運び、中身を捨てに行く仕事だそうだ。

 思うことは色々あるけれど、それがこの世界の現状だ。 

 ハァというため息と同時に私のお腹の虫が盛大に鳴き出した。


「とりあえず、作るか」


 炊飯器を昨夜のうちに、朝六時にセットしておいた私。

 朝はいつも時間がないからパンにしてるんだけど、こっちに来て時間が有り余ってるから、たまには炊きたてのご飯でおにぎりでも作ろうかと思って。

 冷蔵庫からめんつゆとしらすと胡麻と小葱と、○ジッコのおかか昆布を取り出す。

 まずは普通のおにぎりを握る。

 具はもちろん○ジッコのおかか昆布。

 初めて口にした時には、なんて美味しいんだろうと感動したものだ。

 次にボウルにご飯としらすと胡麻と小口切りにした小葱を入れ、めんつゆを軽くまわし掛けてよく混ぜたものを握っていく。

 めんつゆとご飯って、よく合うんだよね。

 しらすと胡麻の代わりに天かすと小葱を入れて、たぬき風とかもたまに作ったりする。

 味噌汁も欲しくなって、小さくカットしてジップロックに入れて冷凍してあった油揚げを少量と、溶き卵で味噌汁を作る。


「はあ、落ち着く」

 

 やっぱり日本人は和食だよね、なんて。

 食べ終えてお腹は膨れて落ち着いたけど、今日は何をしよう?

 迷子にはなりたくないので、近場のお散歩でもしてみようかな。

 せめて自分の家の周りのことくらいは知っておきたいしね。

 軽くメイクして、地味なワンピースに着替え、いざ。

 ……扉の先はもふもふ天国でした。


「あ、お姉ちゃんだ!」


 昨日家から甘い匂いがすると言った、可愛い男の子がいた。

 男の子の隣には小さな女の子が、彼の服の裾を掴んで私を大きな瞳でじっと見ている。

 多分三歳くらいかな? 男の子は五歳くらい。

 何この子たち。めっちゃ可愛いんですけどっ!!

 二人の前にしゃがんで、なるべく(女の子を)怖がらせないように笑顔で挨拶をする。


「おはよう」


 男の子は元気に「おはよう」と返してくれるが、女の子の方は口を開いては閉じを繰り返してモジモジしている。

 この子たちの耳と尻尾は猫かな?

 急かさずニッコリと笑顔で待っていれば、小さな可愛らしい声で「おはよう」と言ってくれた。

 いやぁぁぁん、めっちゃ可愛いんですけどっ!!

 お兄ちゃんなのかな? 男の子はちゃんと挨拶出来た女の子の頭を優しく撫でている。

 女の子は嬉しそうにはにかんだ笑顔でそれを受け入れていた。

 私も撫でた~い!

 でも、今は我慢我慢。


「私はリオナっていうの。あなたたちの名前を聞いてもいい?」

「僕はナギ。この子は妹のリリだよ」


 男の子は撫で撫でを止めて教えてくれた。

 リリちゃんはナギくんの手が止まったことに残念そうな顔をしていて、それがまたツボる。


「ナギくんは良いお兄ちゃんだね。リリちゃん、素敵なお兄ちゃんがいて良かったね」


 と言えば、ナギくんは恥ずかしそうに照れたように下を向き、リリちゃんは嬉しそうに「うん」と答えてくれた。

 ……お持ち帰りしてもいいですか?

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