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「リオ姉、これ食べられるの?」
「もちろん食べられるわよ? これはね、ご飯やおかずを使って人や動物なんかのキャラクターを模したお弁当で、略してキャラ弁て言うの。今日はくまさんのキャラ弁にしてみました。どう? 可愛いでしょ?」
「「可愛い!」」
ナギくんとリリちゃんはとても喜んでくれているようで大はしゃぎし、ララさんは興味津々で聞いてくる。
「このキャラ弁とやらは、どうやって作られたんですか? 私にも作れるかしら?」
「このくまさんはご飯に麺つゆという調味料をまぜて丸くにぎって、耳の部分はウィンナー、目と口の黒い部分は海苔、口周りはスライスチーズをカットして使っています。全て食べられるもので作るのですが、工夫しだいでこちらの世界の食材でも作れると思いますよ。ちなみに、くまさん以外のおかずは大人用のプレートランチと同じものを詰めているんです」
ララさんは感心したようにキャラ弁とプレートランチを見比べている。
そのうちナギくんのお腹から可愛らしい『キュルキュルキュル』という音が聞こえてきたので、
「じゃあ『いただきます』しようね」
と言うとみんなに不思議そうな顔をされたので、リンデルさんとロイさんにしたのと同じように説明し、皆で手を合わせて『いただきます』をして食べ始めた。
「リオ姉、ムグムグ、これ美味しいよ、ムグムグ」
「うふふ、ありがとう。でもお口の中のものをちゃ~んと飲み込んでから話そうね」
苦笑しつつそう言うと、ナギくんはエヘへと笑う。
リリちゃんは嬉しそうにゆっくりと味わうようにくまさんのおにぎりを食べている。フェンさんは無言だけど、口と手が止まらずに動いているので、どうやら気に入ってもらえているようだ。
「本当に美味しい……。こんなに美味しい料理を頂くのは初めてです」
ララさんが頬に手を当てて感激したように言い、里緒菜は嬉しさを隠さずに笑顔で返した。
「そう言って頂けると、作った甲斐があるというものです。ありがとうございます」
その後も和気あいあいとランチを楽しむ。みんな残さずキレイに食べてくれて、嬉しい限りだ。
食器は洗い桶で酵素系食器用洗剤をまぜた水をはり、つけておく。少し時間をおくと酵素が汚れを分解して、スポンジで軽く擦って流すだけでキレイに落ちてくれる。
洗い物の量が少ない時は面倒なのでササッと洗ってしまうが、今回のように量が多い場合はつけおき洗いの方が楽チンなのだ。
和室へ向かい、押し入れから布団を出して敷いていく。
「ちょっとだけお昼寝したら、公園に遊びにいこうね」
ナギくんとリリちゃんがいっせいに走り寄ってきて、里緒菜にギュッとしがみつきながらキラキラとした目を向けた。
「だるまさんがころんだやりたい!」
「リリもだるまさんしたい」
上目遣いでそんな嬉しそうに言われたら、どんなことでも叶えたくなっちゃうよね。
「分かった分かった。お昼寝が済んだら公園に行って、だるまさんがころんだしよう。二人ともたくさん遊べるようにお昼寝して、パワーチャージしておこうね」
「「うん!」」
今日は体験入園ということで、フェンさんとララさんにナギくん達が眠るまで添い寝をしてもらった。入園後は、里緒菜が添い寝をするつもりだ。
今のうちに公園に行くための支度をしておく。
水筒に麦茶を入れて、紙コップとお手ふきと、もし何か怪我をしてしまった時のために消毒液やら絆創膏などもバッグに詰め込む。小一時間ほど公園で遊んだら、家に戻っておやつタイムにする予定だ。
支度が終わったので、つけおきしておいた食器を洗っていく。
洗い終わったところで、タイミングよくフェンさん達が和室から出てきた。
「お疲れ様です。あと三十分ほどしたらナギくん達を起こしますので、それまでゆっくりしてくださいね」
リラックス効果の高いラベンダーとローズヒップをブレンドしたハーブティーを淹れ「どうぞ」と差し出す。
「「ありがとうございます」」
「ローズヒップの酸味が気になる場合はこちらのハチミツを加えてくださいね」
里緒菜はあまり酸っぱいのは得意ではないので、これを飲む時は必ずハチミツを入れている。
フェンさんとララさんが口を付けるが、どうやら酸味は気にならないらしい。
「良い香りですね」
「これはラベンダーとローズヒップをブレンドしたハーブティーなんです。ラベンダーはリラックス効果があって、ローズヒップには美肌効果があるんですよ」
「じゃあ、たくさん飲んだら綺麗になれるかしら?」
「残念ながら、ローズヒップは飲みすぎるとお腹を壊してしまうので、一日一杯くらいにしておいた方がいいですね」
「あら、そうなの? 残念だわ」
残念だと言いながらも、あまり残念そうな顔はしていないララさん。言葉も大分砕けてきているので、リラックス効果は出ているのかも?
このハーブティー、実は親友の明美がよく泊まりに来る里緒菜の家に常備していたもので、ちょっと拝借した。
大人達だけでのんびりと他愛ない話をしていれば、あっという間にナギくん達を起こす時間になる。
「そろそろ子ども達を起こす時間ですね。お手洗いを済ませたら、公園に行きましょう」