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「働いている間に、子どもの面倒を見る……」
不思議そうな顔をするロイさんに、里緒菜は大きく頷く。
「朝ご両親がお仕事に出かける前に子どもをここに連れて来てもらって、お仕事が終わったら子どもを引き取りに来てもらうの。その間はこの家の中で読み書きを教えたり、一緒に歌を歌ったり、一緒に絵を書いたり、お昼には私の作ったご飯を食べてもらって、その後一時間ほどお昼寝させて、ご両親がお迎えに来るまで一緒に遊んで待っているの。あ、途中におやつの時間もあるのよ?」
ピアノはないけど、携帯で子ども用の音楽を流すことができるから、歌を教えてあげることもできるしね。
絵本があったら良かったんだけど、残念ながら持っていない。
だから、ネットで無料で見られる良さそうな絵本をパクって、自分で絵本というか、紙芝居的なものを作ろうと思っている。
お昼ご飯とおやつに関しては、自分の得意分野だ。
一人で食べる味気ないご飯じゃなく、子どもたちとワイワイ楽しく食べるご飯。
なんて素晴らしいのっ!
しかもモフり放題!!(←これ大事!)
「確かに親の立場からしてみたら、働いている間にそれだけの面倒を見てもらえるのならば、安心して働くことができるな」
ロイさんの肯定的な答えに嬉しくなって、鏡を見なくてもかなり頬が緩んでしまっているのが分かる。
きっとしまりのない笑顔をしているんだろうな~、なんて思いながらも、嬉しいんだからしょうがないと開き直る。
「そうなの。ご両親には安心して働いてもらえて、子どもたちは寂しくお留守番することもなくなるの!」
ここまでご機嫌に息継ぎなしで話していた里緒菜だったが、何かを思い出したようで、一呼吸してから困ったように眉をハの字に下げる。
「ただね、お隣さんにも相談したんだけど、問題は幼稚園にかかる費用だって。働いた金額よりも多い金額を支払わなきゃいけないのだと、働く意味がないって。確かにそうなんだよね。……ロイさんに聞きたいんだけど、いくらまでなら子どもを預けようって思う?」