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掃除機をかけ終えたロイさんにソファーで休んでもらい、交代にお昼御飯を作るために立ち上がってキッチンへと移動しようとしたのだけれど。
ロイさんてば、なぜか私の後ろをついて来る。
「えっと、簡単なモノを作るだけなので、座って待っていてもらえます?」
お手伝いしてもらうほどのメニューじゃないし、ソファーに座ってもらっていた方が私としては助かるのだ。
そんな意味で言ったのだけれど。残念ながら全くロイさんには伝わらなかった模様。
「遠慮はいらない。俺は何をすればいい?」
え~と……手伝う気満々てやつですね、これ。
遠慮じゃないって言っても、通用しないんだろうなぁ。
ハァ、面倒くさ……コホン。
ええと、気を取り直してとりあえず、冷蔵庫から必要な食材たちを出してみる。
冷凍ご飯に豚ひき肉に白菜キムチにニラ。
卵と玉ねぎと創味○ャンタン。
鶏ガラスープの素にゴマ油に醤油と胡椒とミリン。
まずは冷凍ご飯をレンジで解凍する。
まな板の上に薄皮を剥いた玉ねぎを乗せ半分に切り、半分はラップして冷蔵庫に戻す。
そしてまな板の上に残った半分を指して
「これを薄く切ってもらえます?」
お願いすれば、ロイさんは頷いて玉ねぎを薄切りにしていく。その間にニラを水洗いし、鍋に水を入れて火にかける。
「次は何をすればいいんだ?」
「じゃあ、これを一センチくらいの大きさに切って下さい」
薄切りにした玉ねぎを先ほど火にかけた鍋に入れ、まな板の上に水洗いしたニラを置く。
ロイさんは頷いてニラを包丁で切っていく。
終わったら切ったニラをお皿に移し、今度はキムチをまな板の上に乗せる。
「これも先ほどのニラと同じくらいの大きさに切って下さい」
白菜キムチを大雑把なみじん切りくらいの大きさにしてくれている間にフライパンを火にかけ、ゴマ油で豚ひき肉を炒める。
色が変わってきたら、細かくした白菜キムチを投入。
豚ひき肉に完全に火が通ったら、ニラと醤油と鶏ガラスープの素と味醂と胡椒を入れ混ぜる。
解凍したご飯を入れて、よく混ぜたらキムチ炒飯の出来上がり。
そして水と薄切りにした玉ねぎを入れて火にかけておいた鍋に、創味シ○ンタンを適量溶かし、お椀に卵を割り入れササッとかき混ぜたものを鍋に回し入れる。
卵が浮いてきたら火を止めて、卵スープの出来上がりだ。
……簡単過ぎるほどに簡単なので、本当に手伝いとか必要なかったんだよねぇ。
何か逆に申し訳ない。もう少し手伝い甲斐のあるものを作れば良かったかなぁ?
器によそって、ダイニングテーブルまで運んでもらう。
って言っても、対面式のキッチンのすぐ前にダイニングテーブルがあるので、運ぶっていうほどのものじゃないんだけどね。
冷蔵庫で冷やされていた麦茶をコップに注いで、ロイさんに渡す。
「「いただきます」」
椅子に座り昨日に引き続いて、両手を合わせてロイさんも一緒にいただきますする。
料理を振る舞う時って、相手の反応がとっても気になるところで。
炒飯をスプーンにすくって、口にゆっくりと運びながら、チラリとロイさんの反応を見る。
私よりも幾分か大きな口の中に、スプーンに乗った炒飯が吸い込まれていく。
何度か咀嚼した後、炒飯をジッと見つめながら「ウマイ」とポツリと呟くと、それはもう凄い勢いで食べだした。
炒飯がどんどんロイさんの口の中に吸い込まれていく。
勢いは凄いけど、食べ方はとても綺麗だ。
ついついロイさんの食べっぷりを凝視している間に、私の倍以上の量がよそってあった器から、もう半分以上なくなっている。
こういう反応って、めちゃくちゃ嬉しいよね。
私は自然と口角が上がっていくのに気付かない振りをして、黙々と炒飯を食べ出した。