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【電子書籍化】異世界もふもふ幼稚園(無認可)  作者: 翡翠
第二章 もふもふ騎士さま
16/53

9

「え~っと、おはようございます?」


 翌朝、玄関を開けた目の前にはもふもふ騎士のロイさんが、なぜか私服で立っておられます。


「あの、今日は私服でどうされたんですか?」


 何でもないような、シンプルな黒いシャツにトラウザーズ姿なのに、とっても素敵。好みど真ん中な上にもふもふな尻尾と耳までついているなんて。

 朝から眼福、イケメン最高! ありがとうございます!!

 なんて心の中で小躍りしていることなどはおくびにも出さず、にこやかに対応している私。

 表に出したら、速攻で引かれるのは分かっているからね。


「無理はしてないか?」


 ん? 私の質問はスルーなんですね。まあ、いいけどさ……。


「えっと、無理した記憶はないですけど」

「そうか。ならば邪魔するぞ」

「ええ、邪魔を……え? ええ?」


 そして気が付けば対面でソファーに腰掛け、麦茶を飲む私たち。

 ……え~っと? これは一体、どういうことかな?

 (疑問) が顔に出ていたのか、ようやくロイさんが先ほどの私の質問に答えてくれた。


「今日は非番だからな。君が無理をしないようにと思ってな」


 無理をしないようにと思って、何?

 その続きが気になるのに、そこを略したらダメでしょ?

 今日一日見張っているとか……なんてことはないよね? まさか、ね。

 なんて乾いた笑いを思わず浮かべていれば。


「最低でも今日一日は大人しくじっとしていてもらうからな」


 ジト目でそのように言われてしまいました。

 

「いや、あの、一応大人しくしているつもりではいます、よ?」

「君の『つもり』が信用出来ないことは、昨日で十分理解している。今日は俺がきみのかわりに動くから、大人しくしとくように」

「ええぇぇぇええ?」


 ……まさかのまさかでした。

 そんな時、洗面所からピーッピーッピーッと洗濯が終了した音が。


「何の音だ?」

 

 ロイさんが少し警戒したように呟く。


「洗濯が終わった合図の音ですよ」

「合図? 他に誰かいるのか?」

「いえ、誰もいませんけど。全自動なので洗濯機が洗濯から脱水までやって、終わったら先ほどの音で知らせてくれるんです」

「ぜんじどう? せんたくき?」

「ええ。衣類やシーツなどと洗剤を入れておけば、あとは機械が全部やってくれるんです」


 何だか『機械』ってワードを耳にしたロイさんの目がキラキラしてる気がするのは、気のせい……じゃないか。

 男の子って、車とか機械とか、好きだよね。

 って、ロイさんはもういい大人だけどさ。

 立ち上がって洗面所へ向かおうとすれば、ロイさんが素早い動きでお姫様だっこをしてくる。

 憧れのお姫様だっこだったけど、あまりにもされ過ぎるとありがたみが薄れるというか、何というか……。

 下ろすようにお願いしても聞き入れてもらえないのは昨日で分かっているので、諦めて大人しく洗面所の場所を教えて連れて行ってもらう。

 その間、ロイさんに気付かれないように小さなため息を一つついた。

 外見はめちゃくちゃ好みど真ん中なロイさんだけど、中身が何ていうか、オカン?

 寡黙で強くて甘々溺愛系ヒーローが大好物だった私。

 中身も外見も好みど真ん中なんて、そうそう居るものじゃないよね、なんて。

 失礼なこと考えててごめんなさい、と心の中でロイさんに謝罪した。

 逆に、ロイさんは私には全く興味なんてないだろうけどね。

 きっと彼の中での私は『手の掛かる異世界人』くらいの位置付けだろう。

 


「これが洗濯機です。ちょっと中のものを先に干しちゃいますね」


 蓋を開けて中の洗濯物に手を伸ばせば、パシッと手首を掴まれた。


「俺がやる。どこに干せばいいんだ?」

「え? いやいや、そんなわけにはいかな……」

「どこに干せばいいんだ?」

「……」


 これは干す場所を言うまで聞かれるパターンですね。

 この人本気で私に何もやらせない気だわ。

 ……下着洗ってなくて良かった。


浴室(ここ)に干します」


 私は仕方なく浴室の扉を開けた。

 玄関の扉が異世界(ここ)と繋がってから、窓という窓がはめ殺しのように開かなくなってしまったので、ベランダに干すことが出来ないのだ。

 浴室乾燥機がついていて良かったって、本当に心から感謝した。

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