テスト期間ラストスパート
テスト期間開始から数日が経過した。
「ふぅ、疲れたな………」
俺は自室でテスト勉強をしていた。今回のテスト範囲はそれなりに広い。俺は今回のテストで1位を狙うのでその全ての範囲を完璧にしておかないといけない。
前回1位を取っているので今回も取るのだろうと期待、それがプレッシャーにもなっている。
それに春香の事も考えないといけない。
春香にやってもらった確認テスト……採点をしてみたけど5教科すべての点数は散々なものだった。単純な問題や、暗記系。その全てが春香には足りていなかった。だから最近は範囲を1から教え直しているところだ。
春香は物覚えが悪く、暗記系が特に苦手だ。だけど運は良く、選択問題だったら3分の2は当てるという強運を持っていた。いや……もしかして野生の勘と言うやつか!?
だけどこのままではまずいのは一向に変わろうとはしない。ものすごくまずい。どう考えても時間が足りていない。春香に時間を取りすぎると俺の勉強が疎かになる。だけど春香を見捨てることは俺にはできない。さて、どうするか………
俺は勉強で頭を動かしながら考えた。
自分のテストのこと、春香のことを同時に考えるのでついつい時間を忘れて没頭してしまう。
さすがにキツイな。体力面の疲れもあるし精神面の疲れもある。最近没頭しすぎてしまい睡眠時間が極端に少なくないな……いつか倒れそう……
このまま俺が春香に付きっきりになると俺の勉強が疎かになってしまうな。ならば考えられる手段は1つしかないな………皆に助けてもらおう……
俺はスマホを手にし、勉強ができる3人に連絡をとった。
☆☆☆
「よし、じゃあ今日もやるよ。」
放課後、俺達は今日も図書室にいる。俺は静かな声でテスト勉強をスタートさせた。
「わかった♪って言いたいんだけど………今日はどうして3人がいるのかな♪」
「そうだった春香に連絡しておくの忘れてたね。今日からは3人にも手伝って貰う事にしたんだよ。」
今日呼んだのは、クラス順位でクラスの上位にランクインしている雫、由香子、夜依の3人だ。この3人は頭がいいと知っているので呼んだ。
雫、由香子はすぐにOKを出してくれた。夜依は渋々だったけど交渉を重ねてようやく来てくれた。でも今日の夜依はなんだかおかしい気がする。少しだけやつれているっていうか………やる気がないっていうか……どうしたんだろう?いつも見ている女の子の微妙な変化を俺は見逃さない。その女の子の中にもちろん夜依も含まれている。そのため気がついた。
まぁ、でも夜依も勉強のやり過ぎなんだろう……夜依は前回のテストで学年2位なのだから。今回は俺と同じ1位を狙ってくるだろうしね。
「各自、得意教科を一教科だけ春香に教えてくれないかな?」
「……それだったら2教科余るけど、どうするの?」
「余った教科は俺が教えるよ。」
「……大丈夫なの?優馬、最近あんまり寝てないんじゃないの?」
「問題無いよ。むしろ、3教科も減って大分楽になるから大丈夫だよ。」
ということで、雫は英語を、由香子は国語を、夜依は数学を教えることになった。
ということは俺が社会と理科を教えればいいのか。
雫達が教えている時に俺も自分の勉強が出来るのでそれだけですごくありがたい。
よし、やるか!
☆☆☆
テスト期間も既に後半戦だ。
俺、雫、由香子、夜依がほぼほぼ毎日全力で春香に勉強を教えた。
春香は勉強のやり過ぎでものすごーくやつれてるけど、俺のご褒美欲しさにすごく頑張っているようだ。
そのかいもあってか春香は基礎はほぼほぼ理解できるようにはなってきた。確認テストをしてみても全て赤点を回避している。この調子なら大丈夫だろう。
やっぱり3人に頼んで正解だった。俺では教えきれないところまで内容を濃くして教えてくれているので春香にはすごくいいだろう。それに頭のいい同士で勉強を教え合うことも出来るというメリットがあった。
俺は雫や由香子から教えてもらったり、教えてあげたりした。
そんな中、夜依は……
パキッ───パキッ───
「はぁ…」
シャーペンの芯を折りながらため息をしていた。
どうしても夜依の集中が続いていない。どうかしたんだろうか?数日夜依の事を見てきたんだけど、ずっとその調子だ。だけど学校の下校時間ギリギリまで残って勉強をしている。家だと集中出来ないのかな?
夜依自身はそれを勘づかせないようにしているのだろうけどそれでも隠しきれていない感じた。
ちょっとだけ話を聞いてみようかな………
俺は心配だったので聞いてみることにした。
「夜依ちょっといい?話があるんだけど?外で話をしない?」
「え………?なんでですか、ここじゃダメなんですか?」
夜依は勉強の手を止めて答えた。
「……どうしたの優馬?」
雫も不自然に思ったようだ。
「別に大した事じゃないよ、ただ図書館だと春香の勉強の邪魔になるかなって思っただけだよ。」
「そうですか……なら行きましょうか。まだ勉強の途中なのですぐに終わらせてくださいね。」
夜依は立ち上がった。
「分かってる分かってる。」
俺と夜依は図書館から出た。
☆☆☆
俺と夜依は図書館から出て人気がない場所まで移動した。既に放課後なので生徒はまばらだ。人気のない場所はすぐに見つかった。
「話ってなんなんですか?」
夜依は腕組みをしながら聞いてきた。
「最近、夜依大丈夫?」
俺の言葉を聞いて夜依は少しだけ動揺したように見えた。すぐに元の顔に戻ったけど何か隠していることでもあるのだろうか?
「なんでそう思ったんですか?」
「いやだって、勉強に身が入っていないし、やけにため息が多いなと思って……」
「そうですか………私は…大丈夫です。あなたに心配は無用です。」
「そっか、それならいいんだよ。話はこれで終わりだよ。ごめんね時間を取らせて。」
「別に構いません。ですが……私にも言っておきたいことがあります。」
ん?どうしたんだろう。
「それってなにかな?」
「今回のテスト、1位を取るのはこの私です。前回は不覚にも遅れを取りましたが今回は必ず私が勝利をおさめて見せます。」
「いやいや、1位を取るのはこの俺だよ。今回だけはものすごく勉強してるから絶対に負けない。それに集中していない夜依には絶対に負けないから。」
「いいえ、勝つのは私です。」
「違うよ、勝つのは俺だよ!」
「いいえ、私です!」
「いいや、俺だよ!」
2人は熱くなって口論を続ける。気付かぬうちに2人の距離はどんどん縮まる。
気づくと顔は近く、あと少しだけ口を前にするとキスができる所まで来ていた。
「…………っっ!?うぅ…」
「っと……」
2人は顔を真っ赤にしながら離れた。
ついつい熱くなっていた。夜依は男嫌いなのでここまで近付かれたのは精神的にキツかっただろう。
だけど夜依は何事も無かったかのように話しかけてきた。
「な、なら………賭けをしませんか?」
「か、賭けか………いいよ。で、勝ったら?」
まさか、夜依から賭けという言葉を聞くとは思わなかった。いつもの夜依なら不効率とかなんとか言って絶対やらなそうなのに………本当にどうしちゃったんだろう?
「敗者は勝者の言うことをなんでも聞くなんてどうでしょうか?」
「いいよ。夜依の案で決定。もう変更無しね。」
「分かりました。問題ありません。」
「絶対に勝つからね。」
今日の夜依はいつもとは全く違い、やけに俺を煽ってくる。勝負に乗っちゃったけどもしかして何か裏でもあるのかな?それか夜依が勝つ事を確信してるからの余裕からかな?それかストレス?
まぁ、珍しく夜依が好戦的なので俺は乗る事にした。
さて、何を命令しようか……まぁ、初めは一緒にお出かけ……とかかな……なーんて、まだ勝負すらしていないのに気が早いな俺は……
「鼻の下が伸びていますよ……最低です。」
夜依から軽蔑された。
「い、いや違うからね。別にいやらしいことは考えていないから。」
俺は必死に抗議したが夜依は何も答えてくれなかった。だけどいつもの夜依に戻った気がする。少しだけ笑顔を覗かせていた。
「さて、そろそろ戻りましょう。雫さん達が待っていると思いますし、勉強がしたくなったので……」
「そっか、じゃあ戻ろうか。」
「はい…」
俺は夜依の後をついて行った。夜依の背中を見ると何か吹っ切れたようだ。
図書館に戻った夜依はさっきとは段違いに集中し取り組んでいた。よかったよかった。
よし、俺も負けていられないな。ライバルに塩を送ってしまったことになるけどまぁいいだろう。
俺はペンを取り、勉強を始めた。
テストまでもう時間は無い。ラストスパートだ。
ついに僕の県にもコロナが出てしまいました。本当に怖いですね。皆さんも気を付けてくださいね。
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