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7.ヌードモデルはお好きですか?

 いつもはしばらくスマホをいじったり本を読んだりしてから美術部の部室に来るようにしているのだが、今日は珍しく部室に直行した。


 理由は単純明快、涼風改め俺のエロ奴隷との待ち合わせがあるからである。


 あいつのことだから、どうせ長い間待たせても「うふぅぅぅ/// 放置プレイっ……!」とか気持ち悪いセリフを言いながら許してくるるのかも知れんが。……涼風の気持ちがわかってしまう自分に悲しくなってきた。

 とはいえ、さっさとエロ同人を描き始めないとコミケの締め切りに間に合わなくなるので、どちらにせよ早く部室へ向かうべき事には変わりない。


 急ぎ足で部室の前まで辿り着いた俺は、いつも通り教室と同じタイプの扉を開ける。部室自体も教室と同じ構成だ。

 ちなみに、美術室と美術部部室は違う部屋である。


 中に入ると、窓際で黄昏たそがれていた一人の少女が、こちらの方へ振り返った。柔らかそうなボブヘアがふわっと揺れる。

 涼風の方が先に到着していたようだ。


「お待ちしてましたっ、ご主人様!」


「おう、センキューな」


 元気の良い歓迎の意に、打って変わって元気のない適当なお礼で返した。

 涼風は駆け足で俺の元へ歩み寄ってくる。


 それから、普段から座っている自分の椅子へ向かう俺に、涼風は少し後ろをとてとてと着いて来た。なんか小動物みたいでちょっと愛らしいな。……黙ってたら、だけどな。

 ちょうど腰掛けたとき、涼風が目をキラキラ輝かせながら、期待と色欲に満ちた声色で聞いてくる。


「それでそれでっ! 最初のご命令はなーに? ご主人様!」


「あぁ、それなんだが……」


「うんうんっ!なになに!?」


「早速脱げ」


 単刀直入に、無機質に、無表情で、そう命令した。

 このご時世、相手が涼風じゃなかったら大問題に発展したことだろう。セクハラで訴えられた説も微レ存。


「えっ、それっていきなりエ〇チしゅるの!? やった♪」


「んなわけあるかアホ」


 ついには慣れだしてきてしまった涼風特有のボケをあしらってから、俺は涼風に対する要求を一通り説明した。要は『涼風にヌードモデルになってもらいたい』という話である。


「オッケー! セッ〇スじゃなくてちょっと残念だけど、ご主人様の命令は絶対だもんね。仕方ない仕方ない」


 一人不満を述べ一人勝手に納得し、うんうんと頷いている。一人漫才かよ。オーバーリアクションだな。


「分かってくれたんならちゃっちゃと脱いでくれ」


「下着はどーする?」


「あー…… とりま付けといて」


 まだ同人誌の序盤すら描き終わっていないので、登場人物達は服すら脱いでいないのだ。裸体はまだ早い。


 既にボタン全開していたブレザーを豪快に脱ぎ捨て、シャツに手をかける涼風。

 一つ一つボタンが外れていくたびに、白い肌が露になっていく。まだ夏ではないが微妙に日焼けしているのか、ほんのりと制服の跡が出来ていた。小麦色とのコントラストが中々エロい。

 ついにボタンを外し終えた彼女は、ゆっくりとシャツを上から脱いで、真下に落とす。薄桃色の紐ブラが印象的だ。


 そしてついに、涼風はスカートのフックを外した。するすると下ろしていくと、白い紐パンと形の良い太股が現れる。

 足元まで落としきると、両足を順番にあげて、スカートを脱ぎきった。


 最後に靴を脱ぐと、ついに下着姿の完成である。


 綺麗な括れに、丸くて柔らかそうなお尻、CかDカップくらいの形の良い乳房。そして、きめ細やかで艶のある肌。少々あどけなさの残るところも、むしろ三次元にしては好印象だ。

 モノホンのモデルさんと言われても違和感はない。実際、エロ漫画のモデルとしてもかなり使える。これはありがたい。


「えへへ/// あたし、えっちいぃ?」


 くるっと一回転。今度は髪だけでなく、二房のおっ〇いもポヨンと揺れる。


「おう、上出来なんじゃねえの?」


「あへぇ/// やったぁぁ♪」


「まぁ二次元には敵わんがな」


「うひゅぅぅぅ~~/// しょ、しょーじんしますぅぅぅ~~~♥」


 誉めても貶しても喜悦に浸れる幸せ回路の涼風に、本格的なポーズの指令を開始する。


「よし、じゃあまずは前屈みになって上目遣いをしてくれ」


「こ、こう?」


 ぎこちない動きでそれらしきポーズを作った。意外と様になっている。


「あぁ、そんな感じ。で、あとこう、谷間を作る感じで……」


「うん、分かったっ!」


 威勢のいい返事をした涼風。しかし口だけだったようで、数十秒ほどの格闘の末、自力で谷間を作ることを諦めてしまった。


「ん~…… 難しいよぉぉ……」


 仕方ない、俺が手伝うか……


 俺は涼風の元へ近づくと、涼風のおっ〇いに触る──のは流石に気が引けるので、腕を掴んで乳房を押し付けた。涼風の体温が掌ごしに伝わる。これが、人の温もりっ……!

 幸いにも、そこそこ巨大な谷間が形成された。


「あ、ありがとっ、ゆうっち! あとご主人様の手を煩わせてごめんなさいぃぃ~~!!!!」


「こちらこそありがとな。んじゃ描き始めますか、と」


 俺は椅子の方へ戻り、一昨日長瀬に壊されかけたペンタブを手に取って、描画専用のアプリを立ち上げた。




 ♥♡♥♡♥♡♥♡♥♡♥♡♥♡♥




 それからも、俺はヒトコマヒトコマに合った様々なポーズを要求した。その度に俺が出向き、直接ポーズを弄る。

 途中胸に触れてしまうことがちょくちょくあったのはご愛敬。


 涼風もよく頑張ってくれて、扇情的なポーズを出来るだけ維持しようと、ピクピク震えながら力を振り絞って耐えていた。

 それはそれは思わず応援したくなる様相で。

 フレ・フレ・ス・ズ・カ・ゼ!!


「うっし、下着描写はこんくらいかな」


 涼風を心中で応援すると同時に、俺は下着シーンの下書きを描き終わった。本格的なペン入れはモデル無しで出来るので、家などで描く予定だ。


 俺の発言に、机の上に乗りながら股を開くポーズをとっている涼風は、恍惚とした表情を浮かべた。


「ふえっ/// じゃ、じゃあ、いよいよはだかになるの? 下着も脱いじゃうの!?」


「ああ、そういうことだな。あと、それだけじゃなくて……」


 台詞を一端中断してから、鞄の中から家にあったある物(・・・)を取り出す。


リード(・・・)も付けてもらおうか」


「~~~~~ッ/// リ、リードぉぉ♥ 鬼畜だねっ、ゆうっち……♪」


「や、鬼畜とかそんなんじゃなくて、SMもの描いてるから付けてもらうだけだ。他意はない」


「ぅん、分かった♥ でも、何でリードなんか持ってたの? あたしだったらいざ知らず」


 お前も持ってんのかよ。


「いや何、俺ん家じゃ犬を飼っていてな。そのリードだ。ちょっとちっちゃいかも知れんが、付けられないってことはないと思うぞ」


「い、犬のリード/// 卑しい雌犬のあたしにピッタリだねっ……!」


「はいはい。んじゃ、スマンが下着も脱いでくれ。……あっ、嫌だったらいつでも言ってくれて構わんぞ」


「ご主人様の命令に嫌なことなんてないもん♥ 全裸なんてむしろ望むところだよぉぉ///」


 言葉通り、意気揚々と下着の紐を外した。当然上も下も両方だ。

 下着は奈落の底(ゆか)へと落ちていき、乳房の先にある薄ピンク色の突起物と、女の子の大切なトコロが丸見えになる。


 アンチ三次元の俺ですら一瞬目を背けてしまうほど、背徳感がヤバい。ただでさえ女子の全裸というだけでエロチックなのに、その完璧すぎる体型と用紙が合間って、もはや神秘的とまで言える域になっている。

 その為、詳しい裸体の描写は避けさせてもらおう。強いて言うなら、アソコにも脇にも毛は一本たりとも生えていなかった。剃っているのか生えてこないのかは知らない。


「よ、よし。それじゃあ、リードを付けるぞ」


 俺は内心緊張してしまいながら、リードを持って涼風の元へと近づく。どうしても裸の女の子には意識してしまい、先程よりも拳五つ分ほど距離を取って立ち止まった。


「うへへぇ、リードぉぉぉ/// 早く付けてぇぇぇ♥♥♥」


 涎を出しながら、トロンとした笑みをこちらに向けて急かしてくる。

 あれれぇっ? 急にちょびっとだけドキドキしてきたぞぉ? どういうことだぁ?


「分かった分かった」


 俺は出来るだけ動揺していない風を装いながら、涼風の丸出しおっ〇いに当たってしまわないよう細心の注意を払って、リードを首に取り付ける。おかげで、結構悪戦苦闘し、時間が掛かってしまった……


「ふぅー出来た……」


 ただリードを付けただけなのに、やり遂げた感が凄い。俺には似合わない爽やかな微笑を浮かべながら、額の汗を拭う。

 一方の涼風もかなり喜んでくれたようで。


「わあぁぁぁ~~~~/// ねぇねぇっ! あたし、犬みたい? 汚らわしい雌犬みたいっ!?」


 と、大興奮のご様子だった。リードの装着に頑張った俺としては、嬉しい限りである。


「犬みたいってのはアレだが…… ま、似合ってんじゃねぇの? ……いや、それもちょいとおかしいか」


「んふぅ~~~~ッ/// お褒め頂き光栄だよ、ご主人様っ♥」


「お、おう」


 俺は目の毒である涼風の裸体から目を離すべく、体を方向転換させる。そして、そのまま自分の椅子へ戻ろうと──したところで、何かに引っ掛かった。その直後、涼風の悲鳴が上がる。


「あぁんっ///」


「へ?」


 すると俺は足のバランスを崩し、転倒してしまった。恐らく、リードと俺の服が引っ掛かりでもしたのだろう。


「いっつー……」


 痛みを訴えながら、周囲の状況を探る。しかし、どこもかしこもほんのり暖かくて柔らかいモノしかない。

 っと、何だこれ? ぬめっとしてんな。ちょっと指を動かすと、グチュッという粘液的何かの音と共に「んんっっ、あぁぁぁぁんっっっ//////」というかなり大きな喘ぎ声がした。ってことは、今俺が触ってんのは涼風の体なのか?

 俺は反射的に瞑ってしまった目を開けると──


 ──視界には、あの卑猥な脂肪がいっぱいに広がっていた。つまるところ、俺は所謂パフパフ状態にあるということだ。流石に胸の大きさからいっておっぱいに顔が埋め込まれていたりするわけではないが。

 これ、結構大変な状況なんじゃね? 俺、全裸の涼風に乗っかってるってことだろ。床ドンの亜種とも言える。

 一体全体、俺は何回涼風に床ドンせにゃならんのだ…… そのうち一回は自分の意思でした行いなんだけどな。


 俺が早く立ち上がらないと、と焦っていると、涼風が爆弾発言を発した。


「お、押し倒すなんてぇぇ……/// は、初めてだから、優しくしてねっ♥」


「何言って──」


 その時だった。扉の開く音がした。

 ……どういうことだ?


 ──いや、そうだった。この時間になったら必ず部室にやってくる、そんな人間がいたじゃないか。

 忘却していた。忘失していた。失念していた。忘れてわならないことを、忘れてしまっていた。


 入室してきた存在。それは、あの誰よりも潔癖で健全な貞操観念を持つ処女ビッチ──


「なっ、何やってんのよ、あんた達っ!」


 ──長瀬美結だ。

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