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自覚する変態

「さっちゃんが冷たいよう。いいじゃないか体操着の一枚二枚。僕なんかの使い道はたかが知れてるじゃないか」

じゃあ聞くけど、と悟は前置きをして雑誌を閉じる。

「なんに使ったの」

「洗濯しないでジップロックに入れたよ?偶に開けて匂いを嗅ぐんだ。それくらいしかしてないよ?本当だよ!僕は馬鹿だけど、嘘はつかない馬鹿だから」

自慢げに胸を張る珠緒に呆れ返る悟。

「偶に持ち物検査しような、珠緒」

「僕のさっちゃんコレクションが見たいの?」

見たくはない。だけど、見ないわけにはいかないだろう。

「他に何があるの?」

「使ったストローとか、ティッシュとか、さっちゃんが来るべき本番の為に練習の時に使ったんじゃないかなと思うゴムとかかな?」

にこにことコレクションを自慢していると段々悟の顔が青ざめていく。

「ゴミじゃないか。それも思いっきりプライベート丸出しの。信じらんない。キモイ、変態」

ああ、これこれ、と珠緒は嬉しくなるのだった。

もう早く自室に戻れと悟の部屋を追い出された珠緒。

仕方なく自分の部屋に戻ると同室の者に軽く挨拶をしてからPCを立ち上げ、ヘッドホンを装着する。

悟は人数の関係か一人部屋だが、大体は同じ学年の者と二人部屋だ。

カチッとマウスを弄っていると、珠緒の同室者の山田が覗き込みながら、エロ動画?エロ動画?と聞いてくる。無視していると、立ち上げた画面いっぱいに先程まで居た悟の室内が映し出される。

「おまっ!流石にこれはやべーんじゃないの?!」

焦る山田を尻目に珠緒はマウスを操作する。

「山田……お前が可愛くて巨乳だって言ってた三年の先輩な。サイズGカップみたいだぞ」

画面には悟の部屋とは別の部屋が映る。ベッドの上に脱ぎ散らかされた下着をクローズアップすると、タグにそう表記されていた。

「僕が使ってない時間は使っていいからね」

にっこり珠緒が微笑むと山田は悶絶しながら頷いた。つまり買収の成功である。ガッチリ握手を交わす変態が二人いた。

珠緒は山田と握手した手をハンカチで拭きながら、悟の監視に戻るのだった。







珠緒は昼休みに悟の教室へ顔を出した。悟が居ない。ついでに亮治も居ない。珠緒は焦らずポケットからスマホを取り出すとGPSで悟の居場所を特定する。どうやら二人で中庭付近にいるらしかった。珠緒はすぐに現場へ向かった。

「やばいんじゃないの?あの幼馴染くん、絶対怒って探してるだろ、悟のこと」

ニヤニヤしながら亮治は悟に言う。

「探してるだろうな、絶対。でも俺は亮治といるほうがマシだわ」

マシってアナタ、と亮治は笑っている。心底可笑しそうに。

珠緒は沸々と込み上げる怒りにこめかみに浮かぶ青筋をピクピクとさせている。

「なんであんなに執着されてるの?まさか男同士だし、ナニってことは無いだろ?」

「分からない。気付いたら付き纏われてたし。なんとなく、発動する切っ掛けは分かるけど。珠緒に説明を求めても無駄なんだ」

あいつネジ飛んじゃってるし、と悟は言う。

「あー、なんかそんな感じするなあ。方向音痴に道を聞いても無駄みたいな?」

後ろで本人が聞いているにも関わらず酷い言いようである。

でも、確かに、とは思う。何故こうも盲目的に悟に惹きつけられるのか。近所に住まうお兄さんをいくら親しくしているからと言って盗撮までしてしまうのは異常なんじゃないのか。珠緒もその事実がうっすら頭を過ぎったが、なんだか自分に都合が悪い気がして無視していた。

「そろそろ昼休み終わるな。戻ろうぜ」

亮治に促されながら二人は教室へ帰って行った。珠緒はその場で悟に対する気持ちを表す言葉を自問自答するのだった。

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