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親愛なる変態さん3

悟は既に昨日までの生活が懐かしかった。

生来の素直では無い性格のせいで友人らしい友人は亮治しかいなかったが、それでもそこそこに充実した高校生活であった。襲撃の心配をしなくても良い生活がありがたかった。朝食や夕食の事を考えていればいい毎日は悟を解放させた。

追いかけてくるなど思いもしなかった。

「そろそろ来るか?間壁のストーカー」

亮治は、それは楽しそうに悟に声をかけてきた。

対する悟は項垂れ、可哀想な程に萎れている。

「間壁も逃げたら良いのに」

逃げた結果こうして追い詰められているのだ、とじっとりした目で亮治を睨む。

「怖いなぁ、もう。そう言えば、今年の新入生で凄いのが居たらしいじゃないの。学校始まって以来の高得点叩きだしたって噂。一回頭の中見せて欲しいよな。だってうちの学校、進学校だし、普通に入試も難しかったじゃない」

亮治は気を紛らせてくれようとしたのか、雑談を始めた。へーとかふーんとか適当に相槌を打っているとバタバタと廊下を走る音がする。

「さっちゃん、帰ろう」

珠緒が息を切らして駆け込んできた。悟は仕方なくカバンを持って立ち上がる。

「亮治、一緒に帰ろう」

せめてもの抵抗に亮治を誘う。

「えーっ、ヤダよう。なんか射殺されそう」

亮治は本当に嫌そうな顔をする。珠緒も嫌そうな顔をする。悟も嫌そうな顔をする。皆嫌そうだ。誰も得をしない。

「さっちゃん、二人じゃダメなの?」

「そうだよ、二人で帰んなよ。どうせ寮じゃ一緒じゃんか」

「一緒なんだったら今から一緒が良い」

悟は懸命に誘う。すると亮治がニヤリと笑う。

「あっあー!分かったよ。また出たなぁ、間壁の天邪鬼がっ」

パッと花が咲くかの如く、珠緒が嬉しそうな顔をする。

「さっちゃんは照れ屋だからね」

「俺は本心で言ってる!」

叫びも虚しく珠緒に悟は連行されていった。

「お疲れーっす」

亮治はヒラヒラと二人の後ろ姿に手を振って、さてと、と立ち上がる。教室の後ろあたりで様子を伺っていた女生徒をナンパしに行くのだった。

正直、亮治はこの状況を喜んでいた。悟がいるとどうしても顔面偏差値的にはトントンで整っている亮治でも、キャラクターの違いかどうしても悟の方がモテるからだ。悟は亮治から言わせると残念イケメンだ。年上からは可愛がられるだろうが、同年代の女子にはあの悟の性格を可愛く思う者は少ないだろう。それが分かっているからか、口下手だからか、悟は積極的に女生徒には話しかけない。それがウケるのかもしれないが。

あいつは絶対、童貞だ。と亮治は常々思っていたが、悟の場合は童貞かどうかよりももっと心配しなければいけない事があったから童貞だったのかも、と今日は認識を改めたのだった。

可哀想な間壁、健闘を祈ろう。

亮治の祈りは無駄だし、なんの役にも立たなかった。







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