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公爵令嬢の取り巻きA  作者: 孤子
第一章 幼少期
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王子お披露目 昼食2

 子供が昼食をとるための部屋は、先程の部屋よりも少し小さめの部屋だった。


 とはいうものの、子供とその側近の人数を考えれば十分に広い部屋と言えた。この部屋が急ごしらえでもなく、子供と侮って粗雑な準備をしたわけでもないことは、部屋に飾られた調度品やキッチリと整えられたテーブルを見れば一目瞭然である。


 テーブルには既に新鮮な野菜を使ったサラダが席ごとに置かれており、折を見て次の料理を持ってこさせるための使用人が部屋の隅にある扉の前に静かに立っていた。


 子供だけの昼食会は、基本的に上座から家格に準じて席が決められており、机の短辺に設けられた最奥の席に王子が、そこから両長辺の上座から公爵家、侯爵家、伯爵家と順に座ることになる。


 ただし、隣り合う者によっては席の順番に多少の変更がなされることもある。家同士が対立関係にあったり、個人的に関係がよろしくない場合である。普段のお茶会などでもそうだが、その場合は予め主催者側に報告するため、この場での席順がそのまま関係性として表れるのである。


 (やっぱりメルネア様の隣にはアイナ様が座るのか。)


 エルーナは事前に勉強していた貴族同士の関係を頭に浮かべながら自分に用意された席に向かい、子供たちがそれぞれの席に向かうのを眺める。


 この国には貴族の最高位である公爵家が4つある。一つはエルーナも関係の深い、王族とのつながりが最も強いダスクウェル家。ダスクウェル家ほど影響力はなくとも、過去に何度か王族に嫁を輩出したロングナーテ家。王族との血縁関係はないが、代々国の政治に強い影響力を与えているウォルテナント家。元は伯爵家であったが3代前の国王の時代に起こった大戦で多大な貢献と忠誠を示したために公爵に引き上げられ、以来軍関係で国王の剣と盾として在るルングノート家の4つである。


 この4つの公爵家のうち、ダスクウェル家とロングナーテ家は古くから対立関係にあり、社交でもほとんど席を一緒にすることが無いと言われるほどである。


 ウォルテナント家はどちらとも付かず離れずの関係を保っているが、ルングノート家とは要職が集まる会議の中で度々言い争っており、そこまで良好な関係には見えない。


 ルングノート家は基本的には貴族の派閥関係に興味はなく、ともに国王を支えていこうとする者には寄り添うという立場をとっており、今代の国王や王子と良好な関係を築いているダスクウェル家との仲は決して悪くはない。


 この関係性から、ダスクウェル家のメルネアの隣にはルングノート家の次女アイナ=ルングノートが座り、メルネアの対面にはロングナーテ家の長男であるドルト=ロングナーテが、その隣にはウォルテナント家の長男であるグランツ=ウォルテナントが座っている。


 そんな関係性を考慮された席順がエルーナの座る下座まで続いているのである。この年頃の子供たちの間には対して交流が無いために、今の席の位置がそのまま今の貴族の関係性と合致する。皆一目でどこの子供と仲良くした方がいいか、警戒すべきかがわかるのである。


 一般の社交界ではこのように主だった貴族全員が会することなどほとんどなく、繋がりのある貴族ばかりと会うことになるので、家同士の関係性がよくわかるこの昼食会は正に今後のための良い練習となるだろう。


 30ある貴族の中でこの場にいる子供は23人。子供を連れてきていない家もあるが、主だった家の子供はほとんどいることになる。エルーナも周りをよく見ながら予め教えられていた関係性と比較して復習する。


 子供全員が席に着いたことで王子が食前の言葉を唱え始める。それに復唱する形で全員が食前の言葉を言い終えれば、静かに昼食会が始まった。


 エルーナは横目でメルネアの様子を窺いながらカトラリーを手に取り、そろそろとサラダを口にする。


 (メルネア様からあまり離れないようにとは言われたけれど、昼食の間はどうしても距離が開くよね。)


 ベッセル家は子爵であり、ダスクウェル家は公爵である。エルーナとメルネアの間にはかなりの距離があり、咄嗟に何かあっても声をかけることすら難しい。いくら個人的にメルネアと友好を結んでいても、位の差はそう簡単に埋められるものではない。


 何が起こるのか、何も起こらずに杞憂に終わるのか。それすらもわからずに緊張しながらとる食事の味など大してわかるはずもなく、ただ出されるままにそれを口に運ぶエルーナ。


 メルネア以外の顔を見ても特に何か特別な感情を抱いている者はおらず、席が近い者と談笑している者もいるくらいである。今のところ緊張感を持って食事しているのはエルーナ一人だけであった。


 「エル・・ルーナ・・・エルーナ様?」


 後ろに侍っていたテレサに肩を触れられてピクリと体を震わせたエルーナは、ようやく隣に座る女の子に自分の名前が呼ばれていることに気が付いた。どうやらメルネアの周囲を警戒するあまり自分に関する事象を無意識にシャットアウトしていたようである。


 エルーナは取り繕ったように右隣に座る女の子に笑顔を見せる。


 「申し訳ありません。少々考え事をしていました。何かありましたか。」


 「いくら呼び掛けても反応がなかったので心配しました。」


 そう言ってふわりと微笑んだのは同じ子爵家で親交のあるレノア=ルトラーゼである。


 レノアは先ほどまで体面と隣の子供たちと話していたのだが、その話題にエルーナの話が上ったため、エルーナの反応を窺ったのだが、まるで話を聞いておらず、ずっと上の空で黙々と食事をとっていたエルーナを心配して声をかけたのだという。


 「先ほどエルーナ様がご病気で倒れられていたという話をしていましたので、もしやまだお体の具合が良くないのではと心配しました。」


 「それは失礼しました。本当に考え事をしていただけですので心配には及びませんよ。レノア様。」


 何ともないという事を笑顔を浮かべて示して、エルーナも子供たちの会話に混ざる。


 (いけない、いけない。不安要素があるからと言って社交をおざなりにしていたら本末転倒だよね。注意は必要だけど、ちゃんと会話にも混ざらなきゃ。)


 そうして注意しつつも何もないまま昼食は終わり、子供だけの会はお茶会へと移行するのであった。


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