【冬童話2017】本当の私
童話初めて書きます。
ところどころわからないところがあると思いますが、指摘していただけると今後の励みになります。
読んでくださりありがとうございます。
私の名前は立沢梨々香。
冬の季節を司る女王。
私が塔にいることで冬がやって来る。
ただいることで私の悩みは解けない。
私はごく普通の高校生だった。それがどうしてこの世界にやってきたのだろう。気がつくとこの塔で横たわっていた。目を開けるとそこには見たこともないものがたくさんあった。綺麗と思う反面、ここはどこ?という疑問が浮かんできた。
そしたら髭を生やしたおじさんがやってきて、
「冬の女王様どうされたのですか?」
と聞かれた。今何と言った。冬の女王?どゆこと?
「どういうことですか?ここはどこですか」
そう答えると
「何をおっしゃっているのですか、ここはシーズン、あなたは冬を司る女王様ではないですか。
毎年この国に冬をもたらしてくれる」
ここで私は悟った。ここは日本じゃなくて違う世界だと。でもおかしい。私はさっきまで家にいたはずなのにいきなりこんなことを言われてもわからない。
「まだなったばかりなのでわからないんですね。どうぞこちらの部屋へ。説明いたしますね」
そう言われるとある部屋についた。扉は綺麗に装飾されておりところどころに雪の飾りが装飾されていてとても煌びやかな扉だ。
「ここがあなたが冬の間お過ごしになる部屋ですよ」
暖炉で暖かい。天蓋のベッド、ドレッサー、壁画などがありまるで中世ヨーロッパのお城のようだ。掃除が行き届いており清潔にされているようだった。壁一面に広がる壁画には4人の女性が描かれていた。どの人も美しく気高く見えた。
「ここに描かれている女性は初代の季節の女王様達です。一番左にいるのが春の女王様、その隣が夏の女王様、その隣が秋の女王様、そして右端にいるのがあなたの祖母にあたる冬の女王様です」
そしてひげを生やしたおじさんの説明は続いた。どうやら季節の女王は血縁関係があるものがなるらしい。じゃあ私はここにいる冬の女王と血がつながっているということか。
考えただけでもゾッとする。誰か知らない人の子になるのは少し気持ち的にあれだ。私もこの人たちのように毎年この国に冬をもたらさなくてはならないのか。それだと帰れなくなる。それだけは絶対に嫌だ。帰りたい。
「あの、冬の女王様が変わる時っていつなんでしょうか」
「それは女王様がお亡くなりになった時ですよ。亡くなったら次の女王様に変わります」
何ということだ。これは聞いただけでも泣きそうだ。
すると扉をノックする音が聞こえた。
「入ってもよろしいでしょうか」
女性の声だった。声を聞いただけでもわかる。この人も女王だ。
入って来ると礼をし、私の目の前に来た。
「少しの間冬の女王様と二人きりにしてもらえるかしら。少し話したいことがあるから」
ごゆるりと、と言い部屋を出て行った。扉が閉まったと同時に女王が話しかけてきた。
「あなたが冬の女王様か。私の名前は神城萌っていうの。萌って呼んでね。よろしく」
ちょっと待て。今何と言った?
「あの、もしかして日本人ですか?」
「そう、あなたと同じ日本人」
まじか。さっきから驚いてばかりだ。
「どうしてわかったの」
「だって日本人でしょ、なんかわかっちゃった。もう疲れちゃうよね、いきなり『あなたは秋の女王様です』なんて言われてもわけわかんないよね。あんときはあせったわ。え、私が女王?って思ったしね。でもやっていくと楽しいもんよ。だって塔にいる間何もしなくていいのよ。ただ喋ったり、食べたり何でもok。まじいいよ」
結構この人は喋るみたいだ。
「でも私は帰りたいんです、日本に。そうじゃないと嫌なんです」
自分でも言っていることは子供だと思う。でも帰りたいのだ。
萌は考えるそぶりを見せるとなくはないかなとつぶやき
「でもこの冬の間だけはお願い。私が頼むもんじゃないと思うんだけどさ。言えないでしょ。他の人に。
自分がこの国の人じゃないっていうの。多分言ったら捕まえられると思うよ。それに帰れる方法あるよ」
冬の間だけ、か。そう思うと心が楽になる。しかし帰れる方法とは何のことだろうか。
「転移魔法を使えばいいの。そしたら簡単に帰れる。あなたも私もwinwinよ。どう悪くないでしょ。
あなたが行った後の女王はあなたの妹になる手筈だから。大丈夫。そこは魔法でね」
よし。やるか。案外楽しそうである。そこから女王としての生活が始まった。
朝起きると朝食を食べに食堂に行く。昨日萌に教えてもらったのだ。萌は明るく、喋っているうちに仲良くなった。共通の趣味や好きな芸能人などについて話した。もう敬語は使っていない。自分でもびっくりした。昨日の今日でこんなにも打ち解けられるなんて初めてだ。
それは同じ境遇だったからだと思うが違う気もする。
何日か過ごした後も萌とは、話したりしている。この世界について色々知っといたほうがいい。そう思い色々と萌に尋ねてみた。
まずこの世界は「シーズンフェアリー」といい魔法、スキルなどを使って魔物を倒し生活している。いま春の女王は旅に出ていてこの国にはいないそうだ。
私はそんな物騒なことはできないから一日中塔の中で過ごしている。塔の外に出ちゃいけないんだけど。
そんな中仲良くなった人が萌以外にもできた。それが「アップル」だ。アップルはとても明るくこの塔で働いている侍女だ。皆彼女とは気さくに喋っている。カリスマ性というやつなんだろうか。羨ましい。
女王になったから何かするというわけでもなく塔の中でダラダラと過ごす。
喋って過ごすと1日が過ぎる。そんな日々が楽しかったのか時間を忘れ楽しんでいた。庭に出て花を見つけ飾りを作ったり、木の実を拾いジャムを作ったりととても楽しかった。
いつの間にか日本に帰りたい。そう思うことはなくなっていった。
なったばかりの頃は早く冬が過ぎて帰りたい、そう思っていたのにいつの間にか冬が終わってほしくない。そう思うようになっていた。
だから例年より冬の間が長くなっていることに気がつかなかった。
気がついたのは王様がとあるおふれを出した時だった。
『冬の女王を春の女王と交替させた者には好きな褒美を取らせよう。
ただし、冬の女王が次に廻って来られなくなる方法は認めない。
季節を廻らせることを妨げてはならない。』
この国は辺り一面雪に覆われ秋に収穫していた食料も無くなってきている。このままだとこの国は終わる。
そう告げられた。
この時気がついた。私は何をやっているんだと。私はもともとこの世界の住人ではないのに。
何を身勝手なことを…
しかしいざ帰るとなってもどうしても帰れなかった。日本に帰りたいと思うのとだけ同じくらいこの国を、この塔の人々を好きになってしまったのだ。決してそう思ってはいけないのに。
どうすればいいかわからず萌に聞いてもあなたの思うようにすればいいと言われた。
そんな時扉をノックする音ともにとある人が部屋に入ってきた。それは私の親友のアップルだった。
「女王様、私女王様に隠していたことがあります」
え、アップルが私に隠し事を。何を一体隠しているんだと不思議に思った。
しかし告げられたことはあまりにも驚きに満ちた言葉だった。
「私、実は女王様がこの世界の国の人ではないことを少し前から存じ上げていたんです。ずっと隠していて本当に申し訳ございませんでした。このことは塔にいる者、全員が存じ上げています」
まさか全部知っていたのか。どこでそれを知ったのか。
「このことは秋の女王様からお聞きしました。今、冬の女王様が悩んでいるから話を聞いてほしいと」
萌、全部わかっていたのか。だからあの言葉を。
「私、もといた世界に帰りたいの。家族に会いたいの。本当に。でも同じくらいこの国のことが好きなの。アップルだって。この塔の人々が好きなの」
初めて弱音を吐いた。自分のことを知って欲しかった。でも怖かった。自分が本当はこの世界の人じゃないと知られるのが。冷たい目で見られてしまうのではないか、殺されてしまうのではないか。本気でそう思った。
アップルは優しげな目でこちらを見た。
大丈夫、大丈夫そういい背中をさすってくれた。
涙が落ち着いた時にはもう日が暮れていた。するとアップルがポケットからあるものを取り出した。
それは可愛らしい刺繍の施されたマフラーだった。
「このマフラーは、私たち塔のもので編んだものです。それとこちらは町の人々が編んだものです。
みんな塔の中から出てこないって心配しているんですよ。冬が過ぎても出てこないからって」
そうだったのか。私は何を心配していたんだろう。
「大丈夫です。安心してお戻りになってください」
もう怖くなかった。何も心配することはない。
この日を境に冬の季節は終わりまた新たな季節がやってきた。
新たな命が芽吹き、陽気に満ちていた。
読んでくださり有難うございます。
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