決心
高校卒業して地元で就職した僕。
大学に進学して、地元を離れ一人暮らしをし始めた君。
あれからひと月。
僕らはお互いに時間が合わない為、会う事も儘ならず、電話とメールだけの日々。
4月22日金曜日。
僕は一大決心をする。
「目指すは君!」
そんな子供じみた事を口走りながら、跨ったバイクを会社とは逆の方向に走らせる。
国道139号線から、本栖湖・精進湖・西湖を通り過ぎ、途中、富士吉田から甲州街道をに反れ、相模湖を横目に高尾山を登って行く。
頂上から下り始めると八王子市内が見えはじめた。
さっきまで無心で走っていたが、この空の日差しとは裏腹に、急に僕の心に少しだけ雲をかける。
僕は彼女に会いたいっていう抑えきれない感情のまま行動し、ここまで来てしまっている。
勿論この行動、彼女は知らない。
僕のこの心の激しさは、傍から見ればただの子供じみた我儘かもしれない。
でも僕はどうしても君に会いたかったから。
そんな僕を見たら彼女はどう思うだろうか?
驚くだろうか?
呆れるだろうか?
いや、その前に間違いなく絶対に怒るんだろうな。
でもさ、毎日電話やメールをするよりも、短い時間でも直接君に会って君の顔を見て話をしたい。
誰に聞かせる訳でもないけど、自分にいい様な言い訳を並べる。
一瞬、ほんの一瞬だけ怒った顔の彼女が頭を過ぎったけど、決して引き返すことはしない。
しばらくすると彼女の通う大学が見えてきた。
怒られても構わない。
そんな事は百も承知だ。
嫌われちゃったら困るけど、僕の想いは止められないから。
僕は校門の隅にバイクを停めると、彼女が出てくるのをひたすら待った。
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追伸、
あの後彼女に頬を一つ打たれたけれど、4年経った今でも僕らは付き合っている。